モブ女子、あなたのためなら全力で祈りを捧げます!
ようやく、最後の攻略相手が出せました!
ゲームの中では一番先に出る彼ですが、他のキャラに押し負けて最後に。ここから逆転なるか!?
「どうしよう!?絶対に、団長に誤解されたよ〜〜〜〜〜ッ!!!」
団長に抱きしめられる!!
なんて、絶対にスチルゲットのスペシャル最高な夢イベント♡が、なぜかどんなバグが起こったのか、発動したのに私はどこで選択肢を間違えたッ!?
むしろ、なんで発動したのッ?!
今後の参考の為にぜひ知りたいです!!
「・・・・・いや、少し考えれば分かるか」
ーーーーーーー団長が私を抱きしめたのも、きっと他意はない。
目の前で誰かが倒れそうになれば、それが誰であろうとも同じように助けるはずだし。
抱きしめて離さなかったのは、私の他者自動回復機能があるから。
団長は人一倍疲労もあるだろうから、きっと回復が一気に行われてて、体が本能で私を必要としたからに違いない。
えぇ、言われなくとも分かってます。
ぜーーーーーーんぶ、分かってますよ!!!
だからそれ以上は言わないで!!
言ったら泣いちゃうからねッ!!
「でも・・・あんなことされたら、期待しちゃうよね」
アラサーといえども、まだまだ心は女子な女心だ。
「レオのことも、思いっきりなぐっちゃったしなぁ〜〜〜」
あとで、ちゃんと謝りにいこう。
いくらケガが治る機能がついてるとはいえ、それはそれだ。
「はぁぁぁ〜〜〜〜。グレイさんとのお茶タイムも、行きたかったなぁ」
今日は他国にあるスパイシーな香りと味のついた、ミルクをたっぷり入れて飲む、現代でいうチャイに似た茶葉を前々からお願いしていて、ようやく到着したと連絡がきたところだった。
「グレイさん、きっと用意してくれてたよね。あとでグレイさんにも謝りに行こう」
普段は言葉数は少ないが、実はとても優しいグレイさんのことだ。
きっと日を改めて別の日でお茶の日を設けてくれるに違いない!
その日には、クッキーか何かお茶菓子を持参して持って行こう!
グレイさんは私と好みが割と似てるから、
この間分けてもらった抹茶に似た粉末を使って、抹茶スイーツパーティーでもいいかもしれない!!
抹茶クッキーに抹茶マフィン♪
抹茶プリンに抹茶のチーズケーキ♪
抹茶のアイスクリームに、抹茶ラテ♪
おぉ!!
これは見事にテーブルが緑の世界になるね!!
何これ?!すごい楽しそう〜〜〜〜♪
「・・・・・・でもやっぱり、一番は団長に会いたいな」
最初は、彼がより長生き&幸せになる為に、陰ながらフラグを折れればいい!!と意気込んでいた。
でも、騎士院で直接会ってしまってから、少しずつ私の中の欲が目を覚ましてしまった。
それでも少し前までは、一目会えただけでも幸せで、毎日が鼻血を吹きそうなくらい天国みたいに感じてたのに。
団長が幸せでいてくれれば、それでいい!!
最初はそれも本心だったかもだけど、
今は表面的なフリはできても心の中は全然違う。
もっと会いたい!
もっと話したい!
もっと触れたい!
もっと仲良くなりたい!!
ローズじゃなくて、私が彼を幸せにしたい!!
ローズと2人でいるところなんか、本当は見たくもない!!
その協力を、私がするなんて死んでも嫌だっ!!!
「・・・・・・・」
団長に直接会えてから、私の心は欲張りになってブレーキがきかなくなってきてしまった。
他者自動回復機能なんて、とてもステキな能力があっても、心の中はドロドロの真っ黒だ。
心がどこまでも清く、広い。
誰にでも優しい本物の聖女候補である、守ってあげたい可愛いホワイト女子なローズが目の前になんて現れたら、モブの町民Aの私なんて絶対に敵わない。
「でも、まぁ。悩んでもしょうがないか!
それに、なんだかんだで、死の山のこともバレてないし!うん!結果オーライ!」
今はとにかく、後でレオにも一緒に行ってくれるようお願いして、死の山フラグを折ってこよう!!
ローズが登場するまで、まだ半年以上もある。だから、それまでは少なくとも団長のそばには居られる。
それまでに、この心のドロドロはなんとかしよう。ローズとの幸せを心から喜べる自分に少しでも近づいていかねば!
うん!
脳内会議してないけど、それに決定!
「・・・・・よしっ!!!頑張るぞっ!!」
気合をいれると、空に向かって思いっきり両手を伸ばして、体を大きく伸ばして空気を全身に吸い込む。
「気持ちいい〜〜〜〜・・・って、そういえば、ここって、どこっ!!!???」
悩みながら歩いていたら、知らぬ間にいつもと違う道に入り込んでいたらしい。
森に囲まれたその場所は、『クローディア』としても初めてくる場所だった。
キョロキョロ辺りを必死に見渡すと、目の端に何か大きな建物が映る。
「よかった〜〜!!何かの建物があれば、とりあえずはなんとかなるっ!!」
ほっと胸をなでおろして、建物に向かって急いで向かうと、クローディアの目の前には荘厳な作りをした、大きな白銀の建物が目の前に現れた。
まるで、前世における、イタリアやフランスの世界遺産にあるような、歴史を感じる神殿だ。
神殿の中には水が流れる小さな滝や泉も多くあり、太陽の光が森の木漏れ日から差し込んで、妖精か精霊が今に出てきそうな、神秘的な雰囲気に溢れている。
この光景を、
神殿の全体像を『私』は知ってる。
「ここは・・・・ッ!!!」
ここは、全ての始まりの地にして、アルカンダルを守護し愛し続けてくれている、豊かさの象徴である大地を司る女神、ナーサディアを祀る神殿。
本来は私のような一般人には立ち入り禁止で中々入ることもできず、遠くからしかその存在を見ることも叶わない。
迷子になってナーサディアの神殿にたどり着くなど、リベラトゥール冒頭のオープニングイベントとそっくりだ。
ゲームでは、アルカンダル創立1000年祭のお祝いで、王都から少し離れた村に住むローズが、村からのお使いも兼ねて王都へ来ていた。
そして、王都で見知らぬ人に絡まれて逃げてきたローズは、このナーサディア神殿に迷い込む。
ローズ自身は、ここがどんな場所かも知らないまま。
「あれ?・・・・入り口の門番がいない?」
いつもなら入り口に神殿を守るための門番が交代で立っていて、入り口が簡単に入れないように塞がれているのだが、今はその門番の姿がどれだけ辺りを見回しても見当たらない。
「ふふっ・・・・なんだか、ゲームのオープニングを実際に体験してるみたい♪」
ローズがここに来るのはまだ半年以上あるが、女神様はその前の予行演習でも私にさせてくれるというのだろうか??
「まぁ、もし怒られたら、その時は謝ればいいっか!な〜〜んて、中を直接見てみたいだけなんだけどね」
なぜか、神殿の中に呼ばれているような気がして・・・と、勝手に思い込んで!えへっ☆
意を決して中へと進む。
「わぁ〜〜〜〜!!スチル画像よりも、当然だけど迫力がすごいっ!!超キレイ!!!」
中は天井がはるか高くまであり、天井近くの窓は全部ステンドグラスになっていて、そこから差し込む光が色んな色を反射してとてもキレイだった。
まっすぐに進んでいくと目の前に現れるのは、真っ白い石で作られた女神・ナーサディアの石像。
優しい顔が微笑み、両手を大きく広げて佇むその姿は、慈しみと母性に溢れていて、
伝説の大地の女神そのものの姿だった。
同じように神殿に入ったローズは、この女神像に向けて祈りを捧げる。
自分の為にと騎士になることを決め、村を出て行った、レオナルドのことを思って、レオナルドの健康と成功とーーーーー。
そして、生きとし生けるもの全ての幸せを願って、ローズは祈るのだ。
「レオってば、けっこう愛されてるじゃん」
ただそれは、今の段階ではまだみんな仲良くお友達!みんなが大事なの!というローズの博愛主義的なものが強いとは思うけれども。
「さて、私が祈りを捧げるなら、この人のことしかないでしょ!!」
真実はいつも1つ!!
って、悲しいかなクイズにもならないぐらいに、たった1つしかないからなんだけどね。
でも、それを願える人がいるというのは、
とても幸せなことなんだと今はすごく思う。
前世の私は両親や友達など、大切な人たちはもちろんいたけれど、自分の人生をかけてまで祈りを捧げられるような存在は、残念ながらいなかった。
恋人がいたこともある。
片思いなら玉砕コースもセットでたくさん通った。
でも、今みたいな、心に思い描くだけで涙が出そうになるようの人とは『私』の前世の人生の中では出会えずに終わってしまった。
だからこそーーーーーーーー。
「女神、ナーサディア様、私は今の私があることをとても感謝しています」
両膝を床につき手を胸の前で組んで、目の前のナーサディアの石像の前に目を閉じて祈りを捧げる。
「この地でこの命と運命をあなたに頂けたこと、感謝しています。
もし、この小さな祈りを聞いて頂けるなら、祈りと願いを捧げることをお許しください。
私の人生を、おそらくこの地へ繋ぐきっかけをくださった、ジークフリート=ウルンリヒ様のことを、どうかこれまで以上にお守りください!!」
『・・・・・・ッ!!』
その時、神殿の入り口に人影が映るが、目を閉じて祈りを捧げるクローディアはそのことに気がつかない。
その人影は、クローディアの存在に気がつくと、声を潜めてその場に佇む。
「彼にはこの先、たくさんの死の影がつくかもしれません。私もそれを防ぐために尽力させて頂きますが、やっぱりあなたの力がなくては彼の幸せはありません。
この先に現れる、ローズとの出会いで彼が幸せになるのなら、心は嫉妬で醜くなるかもしれませんができる限りお手伝いいたします!
私の身に宿った力がその為に必要なら、いくらでも使って頂いて構いません!」
『・・・・・・?!』
「いや、ダメだ!!こんなんじゃ、何千何万の生きとし生けるものを見守られてる、超人気絶頂の女神様には届いかない!!ここは本気で祈らなきゃ!!」
『・・・・・???』
次の瞬間、目を閉じて静かに祈りの言葉を伝ていた彼女の目がくわっ!!!っと開かれ、膝を着いていた彼女の体が、いや頭が勢いよく両手とともに床につく。
ドンッ!!!!
そう、これは古今東西、心からお願いする時の神聖な祈りのポーズDO・GE・ZA☆だ!!
「女神、ナーサディア様!!
彼の死神からの愛され方は、異常なほどにMaxです!!
できれば守りも、普通よりも何百倍で!!
もし誤った道に行くようなら、すぐさま殴ってでもお止めください!!
彼はそのまっすくで真面目な素晴らしい内面の性格上、道に一歩でも足を踏みいれたら一気に走ります!!
止まりません!
引き返しません!!
とにかく、決めたら迷わず一直線です!!
女神様しかもう頼れる人がいません!!
フラグが発動したら、何を言っても聞きゃあしません!!
どうか彼の、死亡フラグを発動前に根こそぎバッキバキにおって、宇宙の彼方にその種全部をお捨てくださいッ!!!
むしろ、太陽の業火に投げ入れて燃やし尽くしてくださいッ!!!
いや、そこまでもしても、まだ足りないかもしれませんが、どうか、どうかっ!!!
どうかァーーーーー!!!!
彼に、余生を静かに送れる幸せを、お願いしまぁぁーーーーーすッ!!!」
『!!!???』
神聖な神殿の中に、クローディアの全身全霊の叫び声が響き渡る。
全力で祈りを捧げたためにその後しばらくは息がきれていたが、最後にもう一度と膝を立てた姿勢にもどし手を胸の前に組むと、クローディアは念を押すように改めて祈りを捧げた。
「どうか、彼がこの先も幸せで、なるべく長く生きられますようにーーーーーーお守りください」
『・・・・・・・偽善だな』
「!!!???」
突然耳に入ってきた、『クローディア』には聞き覚えのない少し低めの男性の声にハッと驚いて、瞬間的に振り返る。
「あ、あなたはーーーーーーッ!!??」
そこには、神殿の中の柱に腕を組みながら寄りかかり、こちらを睨むようにして厳しい顔をしている青年がいた。
光り輝く黄金の髪に、深海のような深みのある青い瞳。
高貴なロイヤルブルーの上等の生地を使った上下に、金色の装飾があちらこちらにあしらわれており、肩口から足元まで覆う純白のマントにその青がとてもよく映えていた。
気品と、滲み出る自信を感じさせる堂々とした立ち居振る舞い、カリスマ性抜群なその姿を誰かと間違えるわけがない!
「ーーーーーーアルフレド、王子!」
「フン!よく一般の民にすぎないお前が、王族であるこの俺の顔を知っていたものだ!」
「・・・・・・ヤベ、苦手タイプだ」
「ん??今何かいったか?平民?」
「・・・・・・なんでも、ございません」
そう、このクソ偉そうな!!って、実際メチャクチャ偉い立場におられるのが
アルフレド・ルカ・ド・オーギュスト。
アルカンダル王国の第一王子にして、次期王位継承者第一位。
やってしまった!
なんで『ここ』に気づかなかったのか?
ゲームをやり直す度に、オープニングはスキップであっという間に飛ばしてたから、ぶっちゃけ初めの一回以降、全く見てなかったんだよね。
この神殿を訪れるオープニングイベントで、
ローズが最初に出会う攻略相手にして、ローズの相手としては王道のメインキャラクター。
パッケージやポスターにも、毎回特大サイズで場所取りをなさっている。
確か、ローズが実は前王妃に連なる血筋の末裔とかなんとかで、王族同士の婚姻となるエンディングが、正規ルートと言われていた。
私がジークフリート様ルート一筋で、他のキャラと同様、ジークフリート様ルートのサブキャラとして出したことしかないけど、俺様で偉そうな、これまた王道タイプ、らしい。
そして、死亡フラグは毒死。
彼の場合は近くにいる者から毒を盛られたり、暗殺をされたりで、人を信じられなくなっている部分があり、護衛も裏切られてはたまらないとほとんどつけない。
その中で唯一、信頼してもいいとしているのが、我らがジークフリート様ッ!!!
その為、ジークフリート様ルートの際に彼を守る為っていう死亡フラグが立つ。本当によく立つ!!
くそっ!!私が暗殺してやろうかッ!!!
いくら英雄と言われたジークフリート様でも、たった1人で数人なら余裕だろうが、
1人で何十人もの暗殺部隊をやっつけるにはさすがに無理がある。
どこかで○天◯剣流なんとか辺りをジークフリート様が習得して来ないと!!
なので、団長の死亡フラグ回避の為には、アルフレド王子が結構大きなキーだったりする。
団長以外の騎士や人間を信頼できるようになれば、団長自身の負担が大きく減るからだ。
「・・・・・フン!!王族であるこの俺が、民の1人にすぎない平民のお前ごときに、直接話しかけてやっているんだ!ありがたく思うがいい!」
「ーーーーーーはぁ。ありがとうーーございまーーす(棒読み)」
つまりそれって、まずは私がこの王子ともしかしなくとも、信頼してもらえるぐらいに仲良くならなきゃだめってことですよね???
そこは本家のローズに任せちゃダメですか??
クソっ!!
俺様王子、なんで後半年ほどの『待て』が出来なかったッ!!!
早く外に出たかった??
あーーそうですよね!だいたいメインの俺様キャラって、みなさん目立ちたがり屋のわがまま王子様的な感じが多いですよね。
俺を無視するな!!的な??
ここまでサブキャラみたいな位置にいたんだから、そのままサポートキャラでいいじゃない!!
王道??そんなもの知りませんよ!
私は前世も今世も、ジークフリート様一択です!
「・・・・・・って、おい!お前!!聞いてるのかッ?!この俺をお前みたいな平民風情が無視するんじゃない!!」
「ーーーーーーすみません」
あぁーーーあ、本当に言いなさったよ。
読んで頂ける方が少しずつ増えていくことが、すごく嬉しいです!少しでも楽しく読んで頂けるよう、頑張ります!!
ありがとうございます!!
俺様キャラは、どうも苦手で、私が苦手だから後回しにされたんじゃないからね!話の成り行き上だからね!と、今更彼には謝ってしまいました。




