モブ女子、空からの来訪者
今回も読んでいただきありがとうございます!
モンスター達との絆をなぜか深めていく主人公です!魔物使いとかの方が実はあってたりして?
あの地獄のような無双のおかげで見てくださいよ、力を入れると硬くなって形を変える立派なこのふくらはぎと力こぶを!
ローズが言われていたような、折れそうに細い手足とか、柔らかそうな腕とか体とか?
いい匂いのしそうな髪の毛に、小動物のような顔だったっけか?
そんなヒロイン要素、残念ながら今の私には一つも当てはまらない。
体は全身筋肉痛で痛さが半端ないし、頭から足の先まで砂埃と泥と汗だくでお風呂に今すぐダイブしたい!!
しかもさっきまで生死をかけた戦いの中に身を投じてたおかげで、顔つきは今だに険しいままで警戒心が全く解かれない。
さらにローズはイケメンにチヤホヤ大事にされていたはずなのに、今の私はドラゴン兵の軍隊みたいな一個師団に膝を地面につけて頭を下げられている。
仲間以外で自分を打ち負かした相手に忠誠を尽くす習性らしく、目当ての尻尾は何十個とすでに十分過ぎる数をゲットしたから、誠に勝手な言い分ながらもう元の辺境の地へ帰って下さいと丁重にお願いしたのに、断固として受け入れてもらえないのだ。
「王のタメ・・・・タタカウ」
ドラゴン兵の中でも賢いリーダードラゴンが、少しだけ人間の言葉が操れるらしく通訳をしてくれているが、中々納得してもらえない。
こんな大勢のモンスター達にひざまずかられて、一体私は何エンドに向かっているんだろうか?
「・・・・ルーク、これ本気でどうするつもり?」
この事態の元凶はさっきからこの光景が面白くて仕方がないらしく、それは楽しそうにずっと笑っていた。
「せっかくくれるって言うんだから、もらっておけばいいんじゃない?」
「いやもらっておけって、軽く言いますけどね?」
彼らが私に捧げようとしているのは、その忠誠と命。
いざとなれば主の為にこの命と誇りを全身全霊全力で使ってお役に立ちますと、ジャパニーズサムライ魂をこんなところで見つけてしまった。
しかも、こんなどこにでもいそうなモブキャラ相手にだ。
取り敢えず、もし何か力を貸して欲しい時は絶対に声をかけますと彼らと固く約束し、その約定を記した長い巻物みたいな紙にドラゴン兵達がその証として自分の指の血を次々とそこにつけていく。
えっと、これは何かの契約なんでしょうか?
何十ものドラゴン兵達の血判が押されたその恐怖の巻物をルークから手渡され、さらにドラゴン兵の秘宝だという『太古の剣』と呼ばれる少し錆びてはいるものの攻撃力は未知数な武器と、いざとなった際に彼らを呼びよせる角笛を受け取った。
「王よ、ナニカアレバ、イツデモよべ」
「・・・・わ、分かりました!絶対に呼びますから、今は国にはやくお帰りください!!」
正直、血判状を懐に入れたくなくてかなり渋ったが仕方がない。
だって何十ものドラゴン兵達が私がそれを懐に入れるまで、その熱い目線を真剣に注ぐのだ。
正直言って、本気で怖いです。
ルークの魔方陣から、元いた辺境の地へと無事に全ドラゴン兵が無事に帰って行ったのを見届けてから、ようやく私は全身の力を抜きつつ草原に仰向けになって倒れこんだ。
空は雲ひとつない、快晴そのもので本当に気持ちがいい!!
「あぁ〜〜!!ようやく平和が帰ってきた!!」
「フフ・・・・・何言ってるの?本番はこれからだよ?」
「!?」
その私の頭上から立ったまま覗き込んできたルークの、逆光に暗い影がかかって残念ながらその顔はよく見えなかったが、いつもとは違う顔で笑っているようにも感じた。
なんだろう?
上手くは言えないけれど、最近のルークは時々今みたいに彼らしくないような、そんな表情をすることが増えたようにも思う。
「・・・・・なに?」
「別に、なんでもない」
少し顔が熱いような気がするのは、きっとこの熱い日差しのせいだろう。
「!?」
その時ーーーーー風が強くその草原に吹き、ルークが素早い動きで私の腕を掴んで引っ張り上げると、そのまま自分の腕の中へと強く抱きしめる。
「る、ルークッ!?」
「・・・・・暴れたら危ないよ?」
ドスッ!!
「!!??」
いきなり何をするんだと叫ぼうとした私の背後、ちょうど私が寝そべっていた辺りに細身の剣が見事に大地へとつき刺さっていた。
「ヒイイィィッ!!!」
あともう少しルークに引っ張られるのが遅かったら、あの剣が突き刺さっていたのは私の腹か胸だ。
その事実を理解すると一気に血の気が引き、私はガタガタと震えながらルークのローブを強く握り締める。
「・・・・もう少し、時間があると思ったんだけど」
「へ?」
ルークがまっすぐ見据える先には、大きな森がありその上の空だけは暗い紫の雲に覆われて、怪しげな雰囲気を醸し出していた。
そしてその森から見覚えのある大きなモンスターが姿を現わす。
「あ、あれはっ!?」
強い風とともに、クローディア達の元へと飛んでくるのは大量の黒い花びら。
「デス・ブラックッ!?」
それは死の山にて、白い魔女の幻影の中で見た黒い花。
黒い花があるのはーーーーーーーそこに『あるモンスター』がいる証。
「グオォォォォーーーーーーーーッ!!!」
空に響き渡る、耳の鼓膜が破れそうに感じるほどに衝撃を伴う咆哮。
見上げた大空に大きく広げる翼も、その鋼鉄の鱗に覆われた体も全てが深い闇の色をし、その瞳は血のような赤。
「ま、まさか、本物のブラックドラゴンッ!?」
「・・・・・問題なのはそこじゃない」
「へ?」
大空を飛んでいたブラックドラゴンが、嵐を周囲に巻きおこしながら私達の前に悠然と降りてくる。
その背から降り草原に現れたのは、全身を銀の鎧で覆った『銀の騎士』。
「・・・・彼は、黒い魔女の側近。ぼくらを、殺しに来たんだ」
「!?」
「古の魔導師殿は話が早くてありがたい。初めまして、神に愛されし運命の娘よ。黒い魔女様のご命令で君らの命を頂きにきた」
言葉とともに銀の騎士は腰にある大剣を抜き、クローディア達に向けてその鋭い光を放つ剣をまっすぐ向けた。
ついに来てしまいました銀の騎士さん!
普通銀の騎士だと味方っぽいですが、この世界では敵となっております!
いつかドラゴン兵たちとの共闘もありえるかもしれません




