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禁じられた小夜曲 5

今回も読んでいただき、感謝です!


色々端折ってるので、分かりにくかったらすみません!

次の場面は、アイシスさん側へと移った。





どこかの地下室だろうか?


薄暗い中で、身体中に傷められた跡が見られたが、意識もしっかりして無事なその姿にほっと胸をなでおろす。



『ちょっと!!この重しを外してよ!!』



強気に叫ぶアイシスの足元には大きな鉄球が鎖でつけられ、手元にも小ぶりな鉄球が鎖で繋がられていた。


その鉄球にはお札のようなものが貼り付けられ、何か古代の呪文のような文字が書いてある。



『いってーーー!!!親分!!この女、足の鉄球を俺の足にぶつけて来やがった!!』



アイシスのそばにいた、背が低めの鼻の髭とボサボサ髪とで目が見えにくい男が右の足の赤く腫れ上がったすねを指差す。



『我慢しろ!!そいつは俺たちの大事な金ヅルなんだ!!これ以上傷をつけたら、俺たちがボスにどやされちまう!!』



親分と呼ばれたガタイのいい大男も、アイシスさんにやられたのだろう深く噛みつかれて血が出ている腕にフーフーと息を吹きかけている。



『全く、女1人に手間をかけさせやがって!危うくこっちが死ぬかと思ったぜ!!』


『見たこともない変な魔法を使いやすからね、この女』


『逃げ出さないよう、しっかり見張っておけよ!!明日は人買いの野郎に高値で売り渡すんだからな!』


『へっへっ!分かってやすぜ!!』



アイシスさんのいる部屋の扉が乱暴に閉められ、暗い室内にアイシスさんは一人きりとなった。



『・・・・・どうしよう、ちょっと街の中を見てただけのに』



魔法で脱出しようと思っても、鉄球につけられた札がそれを邪魔するのか発動すらしない。


先ほど男たちに捕まって乱暴されそうになった際に出来た、顔や手足の傷がジンジンと痛んだ。



街に行きたいだと!?

人間の中にはお前を悪用しようとする輩もいるんだ!!

お前は自分がどんな存在なのか、まだ分からないのか!!



『・・・・カルロの言う通りだわ』



なぜカルロが自分をあの部屋に閉じ込めていたのか、あんなにも部屋から出ることを防いでいたのか、ようやく分かったような気がした。


本当に自分を閉じ込めるだけなら、この男達のように鎖でつなぐこともできたのに、カルロは決してそれをしなかった。


自分を止める魔法でも体には傷をつけないようなものばかりで、部屋の中での自由も食事などもしっかりともらえていた。


そういえば、朝食を食べてから何も食べていない。


それに気がつくと、とたんにお腹が大きく鳴った。



『カルロ、ジル・・・・ごめんなさい』



アイシスの瞳から涙が溢れ、折り曲げた膝に向かって頭をつけて声を殺して泣いていると、不思議な声がアイシスの耳に小さく響く。



ケロロロロロ・・・・・



『なに?』



ケロロロロロ・・・・・



音は扉の方から響き、その扉と床の隙間から水が流れてくる。



『?!』



そしてその水が一ヶ所に集まると、ある生き物へと透明なまま姿を変えた。



『ケロケロケロ!』


『か、カエルさん?』



いつだか、脱走する自分を止めるために門番として部屋の扉に立っていたことのある巨大なカエルに比べると、大変小ぶりなアイシスの手のひらにちょうど乗りそうな大きさのカエルがアイシスの目の前にいた。



『ケロケロケロ!』


『も、もしかして・・・・カルロが?』




ドカーーーーーンッ!!!!




その瞬間、扉の向こうで大きな爆発音が響く。



『な、なんだきさまはっ!!』


『てめぇらに教える名なんて、こちとら一つも持ち合わしてなんかねぇよ!!』


『か・・・こ、言葉が昔に戻っております!!』


『お、お前らやっちまえ!!』


『いいぜ!!全員血祭りにしてやらぁーーー!!かかってこいやーーーっ!!』



試しにちらっとそっちの様子を見に行ったら、とてもヒーローとは思えない悪鬼のような顔で生き生きと荒くれ者達を殴り飛ばし、蹴り飛ばしていくカルロ王子が。


その王子の傍で、オロオロしながらも確実に敵の急所のみを最低限の動きのみでKOしていくジルの姿も見えた。


しばらくするとたった2人の若者相手に、十数人といた荒くれ者達はみな息も絶え絶えにその場に倒れている。



『お前ら・・・・他国から来た新参者だろう?この俺のシマで、最近好き勝手やってるらしいじゃねぇか?』



その中でボスらしき顔に傷を持った、すでに傷だらけで満身創痍の荒くれの男のそばへとしゃがみこむと、カルロはその髪の毛をつかんで顔を自分の方へと持ち上げる。



『ま、まさか・・・・下の者には決して姿を見せないと聞いていた、このシマのボスと言うのはっ!!』


『ちっ、お前なんぞが知る必要はねぇよ!』



ガンッ!!



そのままその男の顔を床に叩きつけると、男はついにその意識を白目を剥いて手放した。



『ちょ、ちょっと!カルロ様!うっかり殺さないでくださいよ?後が面倒なんですから!』


『わかってるって!それより、ジェラルドに裏の管理をもっとしっかりするよう伝えておけよ!』




うん、カルロ王子が何やら普通の王子様じゃないのだけは分かった気がする。


しかし、ウンディーネ様もよくこの王子様に加護を与えたな。


さっきの荒くれ者を殴り倒してる時なんか、とても王子の知的さや高貴さとかまるで感じなかったし。


目なんか瞳孔開いて、それはそれは愉しそうに笑いながら容赦なく鋭い拳や足を繰り出していましたよ?






そして、その頃のアイシスさんと言えば。



『ケロケロケロ・・・・』


『どうしよう、ついに本人が来ちゃったわ!』



助けが来て喜ぶのかと思えば、アイシスさんの顔色は真っ青だった。


あの悪鬼の様子は見てないはずだけど、エルフ独特の感性で何か感じるものでもあったのだろうか?



『きっとものすごいお説教の嵐だわ!!そ、それとも、あのものすごい味の飲み物をまた飲まされるのかしら!?』



アイシスさん、そのお気持ちは分かります。


私も少し前にものすごいの飲まされました。


あれをもう一度って、本当にかなりの試練ですよね。



ガチャッ!



そんな中で、ついにその扉が開いてしまう。



『!?』


『アイシス様、大丈夫ですか?!』


『キャーーーー!!!』



アイシスさんの悲鳴とともに、扉から入ってきたジルとカルロ王子に向けて、その辺にあった袋や木々、小さな置物をアイシスさんが力任せに投げつける。


あの鉄球をはめたままで、華奢な体ですごい怪力だ。



『おい!何すんだっ!?』


『ぼ、僕たちですよアイシス様っ!!』


『キャーーーー!!キャーーーー!!』


『このアホッ!!いい加減に・・・・ッ』



止まらない猛攻にイラついたカルロ王子がついにあの大量の水をひっくり返して、体を青い布で包み込む魔法を発動させてアイシスさんを拘束した。



『ご、ご無事で・・・・何よりです』



ようやく止んだ猛攻に安心したジルが大きなため息をつき、カルロは眉間にシワを寄せたままアイシスの元へとズカズカ早足で向かっていく。



『ご、ごめんなさいっ!!!』



どんな仕打ちが来るかと、思わず目を閉じて体に力を入れたアイシスの体を、カルロはその青い布でぐるぐる巻きにされた体ごと両手でしっかりと抱きしめる。



『!?』


『アホ・・・・・無事で、よかった』



ため息をついたカルロに抱きしめられながら、アイシスの目からはポロポロと涙がこぼれた。




私もうっかり涙が出そうになるが、芋虫状態のアイシスさんにどうしても感動しきれない自分がおり、心のそこでこっそり謝った。

実は色々裏設定がある、カルロ王子とジルです。


ここまでケンカ上等!にするつもりはなかったんですが、気がついたら拳が飛び出てました。


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