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モブ女子、扉の中から出てきたあなたにビックリしてます!

いつも読んでいただき、感謝しています!


久々の団長のターンです!

たまには団長目線でと、頑張りました。

なんだろうか?

さっきからスッキリすることのない、この胸のモヤモヤは。



仕事も順調で、城も王都も平和だ。

以前まで忙殺されて、寝る間もほとんどない中で働いていた頃に比べたら、とても毎日穏やかな日々が続いている。



夜寝るのが早いとは言わないが、昨夜だってそれなりに休めた。

今日は久しぶりに騎士院での仕事が業務が出来るというのに、何やら落ち着かない、



特に何かがあったわけではないのに、どうしてだか無性にーーーーーーイライラする。






「ーーーーーーグレイ、この書類を至急魔法院と大臣の方に回してくれ。返信は2・3日中にと」


「かしこまりました」



ひさかたぶりの騎士院での仕事に、だいたい予想はしていたが、自室のテーブルには俺の確認待ち書類がいくつもの山になって積まれていた。


だが、予想以上に書類の仕事が進められていて、あとは俺の確認の意を示す承諾印を待つだけの書類ばかりで、作業は実際とても楽である。



「すまなかったな、グレイ。ずいぶん無理をさせたんじゃないか?」


「ーーーーーーいえ、仕事中は疲れませんでしたので」


「????・・・そうか」



いくら体力があるとはいえ、普段の稽古に自身の鍛錬にプラスしてのこの書類作業は、大の男でも相当疲れるとは思うが、息抜きが上手くできたんだろうか?



「そういえば、ステル・ララの評判は、かなりいいそうだな。騎士院に入るなり、その話題が持ちきりだった」


「!?」


あの日以来、俺は彼女にちゃんと面と向かって会えていない。次に会えたらすぐに聞こうと思っていた名前も、ステル・ララのおかげで騎士達のモチベーションが上がり、騎士院に活気がより出ていることへのお礼も言えていなかった。


誰かに聞けば、すぐに名前など分かるのだろうが、俺は彼女から直接聞きたい。



「ーーーーーーえぇ。そろそろ、いつも通りに来る頃だと思います」


「そうか。ようやく、彼女に会えるんだな」


「ーーーーーー私は準備がありますので、一度下がらせて頂きます」


「・・・・あ?あぁ」




なんの準備だろうか??

あいつにしては、やけに急いでどこかへ向かっていたが、今日は騎士院への来訪は特になかったはずだが・・・・??




「おはようございまーーーーーーすっ!!」


「!!??」




その時、騎士院全体に大きく明るい声が響き渡る。


彼女が来たのだ。




「おはよ〜!!今日のランチは何だ??」


「今日はDランチの、オムライスです!!」


「おぉ〜〜〜〜っ!!待ってましたぜ!!ふわトロ特大スペシャルオムライス!!」


「・・・・・・!!」




ドアの向こうに人が集まってきている気配が強くなり、賑やかになっている。


どの騎士達も本当に嬉しそうだ。


この提案をしてくれた彼女には、心から礼を

伝えなければいけないな。




コンコン!!




目の前の扉がノックされる。



「ーーーーーーあぁ。今あける」



途中まで仕上げた書類を横に置くと、扉まで早足で向かった。

なぜだろう?さっきから体が不思議と軽く、気持ちもいつもと何かが違う気がする。



ガチャッ!!



「おはよう。すまないが、散らかっていてよければ、入ってくれ」


「ッッ!!??」



扉を開けた先にいた彼女は、俺の顔をみた瞬間に、何かショックを受けたように目と口をカッ!!と見開いて一気に固まった。


そしてなぜか、顔色が青い。




「・・・・・し、し、失礼します!!」




キイィーーーーーーバタン!!




おそらく全部我が院のお弁当と思われる大きな荷物を背負ったまま、彼女がスッと室内に入ると、扉が自然と元の位置へと戻っていく。


彼女は、背負った荷物を脇に置くと、なぜか顔を真っ青ににしたまま何かをしきりにつぶやいている。顔はなぜか、少しうつむいていた。



「お、おはようございます!!今日のランチのお弁当を、届けにきました!!」


「・・・・・・」




こんなに近くにいるのに、久しぶりの再会なのに、彼女は俺を見るのを何か避けているような気がする。


彼女と初めて会ってからは、最近は本当に遠くからでしか姿を目にすることもできずにいたが、いつだってまっすぐにこちらを見て、全身で自分という存在を伝えてくれていた。


なのに、なぜだろう??

目の前にいる今の方が、距離がある気がする。




「・・・・あ、あの、ジーク、フリート様??」


「ーーーーーあぁ、すまない。お弁当をありがとう。実はずっと、君に聞きたいことがあったんだ」


「ええぇっ?!わ、私にですかっ?!」



先ほどまでの真っ青だった彼女の顔が、今度は一気に茹でタコのように赤くなり、顔があわあわし始める。



「ーーーーーあぁ」



よかった。

何か避けられてると感じたのは気のせいだったのかもしれないな。


いや、さけるとか以前に、俺と彼女はほとんど初対面の知り合い程度の繋がりでしかないはずなんだがーーーーー??




あまりに彼女の顔が赤くなっていく為、もしかして体調不良だったらいけないと、熱の有無を確かめようと彼女の頬に手を添える。



「!!??」



少し熱いが、これぐらいなら病の熱はないだろう。

だが、街からここまでの距離を、この大きな荷物を持ってくるのは、やはり少女1人の身には酷なはずだ。


明日からは、誰かに騎士達を交代で途中からでも迎えに行かせようかーーーーーー??




「・・・・・・・ッ??!!」



ジィィーーーーーーっと、彼女の赤い顔を見つめながら、そんなことを考えていると、気づけば彼女が泣きそうになっていることに、気づきすぐに手を放す。



「す、すまない!!女性に対し、大変失礼なことをした!!」


「い、いえ・・・・・あの、最高でした」


「えっ??」


「あっ・・・・!じゃなくて、至福、いやもうこれはもう天国っ??!!もういつ死んでもいい!!いや、団長のフラグを折るまでは死ねない!!でも、こんな!いや!やっぱり死んでもいい〜〜〜!」


「・・・・・・?」


恥ずかしさのあまりか、横を向いて顔を俯いた彼女は両手で顔を包み込むと、何かをしきりにぶつぶつと話していているが、俺の耳にはその内容まではしっかりと聞き取れなかった。




「ーーーーーー大丈夫、か?」


「は、はひぃっ!!全然私は大丈夫です!!」



ビシッ!!と、彼女は騎士達が行うような、敬礼のポーズを勢いよく取ると、あまりに勢いよく態勢を変えた為に、足がもつれてよろけた。



「・・・・あれ?!あっ、と」

「あぶないっ!!」

「ッッ!!??」



彼女の、女性としては普通なんだろうが、自分と比べると細く小柄に感じる体をしっかりと抱きとめる。

その途端、全身に温かいものが走り、何かに身体の芯から満たされた。




「ッッ!!??」


「ーーーーーー」




ここ数日、遠征や王室の警護にと、長距離の移動が多く身体は騎士院での仕事時よりも確かに疲れていた。

昨日も帰ってきたのは夜遅くで、そんなに長いことは寝ていない。それでも、昔に比べれば普通かまだマシな方だ。


なのに、なぜこんなにも人の温もりがはなしがたく、心地よく、癒しにも似た感覚に包まれるのか。



ギュッーーーーーー。



彼女を抱きしめる力を、さらに込める。

もういい加減、この手を離さなければ!!と頭では思っているんだか、なぜ今だけはこんなにも自分の身体が思う通りに動かないのか。




「・・・・・??!!」


「ーーーーーーすまない。こんな姿勢で申し訳ない。そして今更になってしまうが、君の名前を、聞かせてくれないか?」


「あっ・・・・・・く、クローディア」


「クローディア?」


「く、クローディア・・・・しゃ、シャーロット、です」


「クローディア=シャーロット、いい響きの名だ。君に、改めてお礼を言わせてくれ」


「・・・・・へっ!?」


「君の提案のおかげで、我が騎士達は身体も心も元気になり、あんなにも疲れきって下がっていたみなのモチベーションが、毎日とても楽しそうに生き生きと過ごしている」


「・・・・・・」


「ありがとう。本当は、すぐに騎士院の長として君に礼を言いたかったんだが。中々会える機会を作れず、申し訳なかった」


「・・・・・長と、して・・・・い、いえ。私は特に、何も」



急に彼女の表情が、複雑そうに歪む。

自分は何か変なことを伝えてしまったんだろうか??






この時間を一瞬にも永遠にも感じたが。


ーーーーーーーその時間はすぐに終わることになる。






バタンッ!!!!




「「・・・・・・!!??」」


「あぁぁーーーーーーーッ!!団長ってば、ずっりぃぃぃーーーーー!!!」




扉を乱暴に、そして勢いよく開けて飛び込んできたのはーーーーーーーー誰だ??


そうだ!


少し雰囲気が変わった?ようだが??

見覚えがあるあの顔は、若い騎士の中の1人である、レオナルド=ラティーート。


その後ろには頭を抱えて苦々しい顔をした、グレイまで見える。




「ズルい!!ズルい!!ズルいッ!!!

クロエにくっついていいのは、俺だけなのにっ!!」


「れ、レオっ!!あんた何勝手なこと言ってっ!!」



レオナルドの登場に、彼女は顔を真っ赤にして怒ると、俺の腕の中から飛び出し、レオナルドの方へと向きなおる。



急に温度を失った両腕に、何か不思議な違和感を感じて心が戸惑った。こんな感覚は、知らない。





「ーーーーーーー団長、あなたって人は」


「・・・・・なんだ?グレイ?」


「ーーーーーーーお願いですから、自覚をしてください」


「・・・・・何を言ってるんだ?」


「ーーーーーーーハァ」




さらに頭を抱えるグレイの横では、レオナルドとクローディアの言い争い??が続いていた。



「だって、クロエには俺だけがくっつきたいの!!」


「それはローズに今すぐお願いして!!私のもう2度とあるかどうかの、至福タイムを奪わないで!!」


「ヤダヤダヤダッ!!俺がクロエにくっつきたい!!」


「・・・・・に、これ以上私は誤解されたくないの!!」


「なんだよ〜〜!せっかく、クロエに話したいことがあるってきいて、俺すっごい嬉しかったのに!!」


「レ、レオッ!!!

それは今言っちゃダメーーーーーッ!!!」



会話がところどころ聞き取れないが、ケンカ?とはまた違うようだ。

さらに何かを言おうとしたレオナルドの口を、クローディアが必死に両手で塞ぐ。口を塞がれたレオはそれでもニコニコ嬉しそうに、クローディアの方を見ている。



「ーーーーーーーッ?!」




その時、ふとクローディアしか見ていなかったレオナルドが、俺の方を見て目が一瞬だけ合う。




「・・・・・・・」




それは、部下が目上の者である上司に対する憧れとか尊敬とかの視線ではなくて、どちらかといえばあれはーーーーーーー敵意だ。



ペロッ!



ジーフリードからは見えていなかったが、クローディアに両手で口を塞がれたレオが、その手の平を舐めた。



「ギャッッ!!!」


「俺ッ!クロエのこと、だーーーいすき!」



あまりのことにビックリしてすぐさまレオナルドの口元から手を外したのを見計らい、その手ごとクローディアを包み込む、




「「ーーーーーー!?!?」」



ギュューーーーーーーッ!!!




「ーーーーーーーーーーーあのバカ!」



ジーフリードの目前で、レオナルドが思いっきり力を込めてクローディアを抱きしめた。


毎回のことで慣れているとはいえ、突然のことに目をパチクリさせて動けないクローディアと、やっぱりやりやがったか!と大きなため息をつくグレイ。


そして、その光景にどうしていいか分からずにいる、ジークフリートがそこにいた。




「クロエ〜〜〜〜〜!!好き好き!!大好きーーーッ!!」



スリスリスリスリ〜〜〜ッ!!



レオナルドがクローディアの首元に顔をうずめて、ほおと頭を摺り寄せる。


この一連の流れは、騎士院ではもはや歩く名物、恒例行事、いつものこと、また懲りずにやってるぜ、ぐらい頻繁に繰り返されていることだった。



唖然としてその光景を見ていたジークフリートと、レオナルドの腕の中でぽかんとしていたクローディアの目がふいにあう。



「!!??」



その途端、クローディアの顔が一気に青くなり、すぐさま真っ赤になって、目に涙をいっぱい浮かべて今にも泣きだすかのような顔に変化した。


彼女の泣き顔を見ていると、なぜだか胸の奥が苦しい。





そして、その後。




「れ、れ、レオのバカーーーーーー!!!」




バキッィ!!!


バタンッ!!!!


バタバタバタバタバタッ!!!




調子に乗ったレオナルドを、怒ったクローディアが殴るーーーーーここまでがもはや1セットだ。



「いってぇ〜〜〜!!クロエってば、手加減しないんだから」


「ーーーーーーー」



レオナルドは嵐の勢いで出て行ったクローディアの背中を目で追っていたが、しばらくすると殴られた頬をさすりながらジークフリートに向きなおる。



「団長!!」


「?!」


「俺、負けませんから!!」


「!!??」


「お騒がせしました!!失礼します!!」




向きなおったレオナルドの顔は、昔から真面目で努力家だが、以前のどこか引っ込み思案で騎士院の仲間の中でもどこか壁があってなじめずにいた頃とは、別人だった。


あまり前に出ることはなく、誰かの影に隠れていたあの頃の面影はまったくなくなり、堂々として自信にも溢れている。


特に、以前は自分と向き合う時も目はまっすぐに見てくるものの、尊敬と憧れとともにどこか強い緊張感と不安に溢れていたのが、



今はどうだーーーーーー?



自分が騎士院にいなかった数日間で、彼の目は何かを決めたような、強い意志を持つ立派な騎士へと変化していた。



「・・・・・グレイ」



レオナルドに何かがあったのか??と聞こうと思ったが、その意思は言わずとも伝わったようだ。



「ーーーーークロエ。クローディアですよ」


「!!??」


「ーーーーーー彼女のおかげで、色々変わってきました」


「・・・・・そうか」




自分のいない間に、彼女の影響は騎士院にとってとても大きかったようだ。

その間、騎士院の長としてその場を長く離れていたことが悔やまれる。



だが、今はーーーーーー。




「・・・・・・・」



頭の中で、何度もクローディアがレオナルドに抱きしめられる光景が浮かんでは、心の奥にある何かの感情が暴れようと強くもがいている。


彼女がこの腕の中にいた時は、あんなにも心安らかな穏やかな気持ちに溢れていたというのに。



なんなんだ?これは。



今日は特に仕事の上で不都合なことは何も起きていないし、彼女にも名前を聞いてお礼を言うという、ここ最近の目標は叶えられた。


騎士院の未来を担う部下が成長してよりたくましくなり、喜ばしい限りじゃないか。




なのになんで

なんでこんなにもーーーーーーーー。




「・・・・・・・イライラするんだ?」


「ーーーーーーーーハァァァ」




今日一番のため息を大きくついて、頭を抱えるグレイの前で、ジークフリートは頭をかしげながらも仕事の続きをする為に、書類の積み上がった自分のテーブルへと戻る。


黙々と仕事を始めてからも、時折くそっ!!

なんなんだっ?!と、自分の沸き上がる感情に葛藤し振り回されていた。





「ーーーーーーいい加減、自覚をしてください」


「何?お前のいう自覚とは、一体なんのことなんだ??」


「ーーーーーー知りませんよ、後から後悔しても」


「はぁ??俺が一体何を後悔するんだ?」



「ーーーーーーーーハァァァ」







今日も騎士院の副団長は、団長にその後に頼まれた仕事を終えて休憩に入った。


自室に戻るなり大きなため息をつき、少しでも胃に優しいものをと選んで煎れた紅茶を飲んでは、またため息を繰り返しついている。


そのテーブルには、紅茶の茶器が2セットおかれており、向かい側にある空いた席が寂しそうに座り主が来るのを静かに待っていた。




「ーーーーーーー今日のお茶は、彼女にだいぶ前から頼まれていた、一押しの茶葉だったんだがな」




グレイは入れたばかりの紅茶をもう一度口に含むと、また大きくため息をついてもう1つのカップを、どこか寂しそうに見つめていたーーーーーー。

自覚をしてくれ!とは、私もすごく思いました。

そんなモタモタしてたら、あの人とかあの人に持っていかれるよ!!と。


いや、私がさっさと、にぶい団長が自覚できるようなステキな話をかけって話ですよねm(__)m

すみません!精進いたします!!

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