モブ女子、解毒の方法
続けて読んでいただき、感謝です!!
今回は、他者自動回復機能が久々に陽の目を浴びる機会となりました。
ルークの元へと向かうと、その頭の下に手を入れて状態を少し起こす。
今もルークは苦しそうに時折呻き声を漏らしながら、荒い呼吸を繰り返していた。
「ルーク!解毒剤もらえたよ!これでもう大丈夫だから!」
ヴァレンティーナに言われた通り、まずは水の入ったコップを彼の口につけてその水を飲ませる。
「・・・・・ゴホッ!ゴホッ!!」
「!?」
だが、何度口にコップをつけて水を含ませてみせても飲み干す前に咳き込んで吐いてしまうのだ。
そしてこれを見越したからこそ、ヴァレンティーナは先に水を飲ませろと言ったのだろう。
貴重な薬を飲めずに吐かれてしまったら最後だ。
「・・・・・・ッ!」
少しだけ迷ったあと、意を決したクローディアは自分の口にコップをつけて水を含むとルークの唇に自分のそれを重ねる。
目の前で、人の命がかかっているのだ。
躊躇している暇はない。
「・・・・・・ッ!!」
ルークが無事に水を飲み込んだのを確認すると、念のためもう一度水を含み同じように唇を重ねて水を与える。
ルークは先ほどよりはスムーズに喉から水を飲み込んだ。
これなら、いける!
最後にヴァレンティーナから受け取った薬を口に含み、ルークの唇からそれを中へと流し込む。
ヴァレンティーナさんに、健康な人が含んでも何の害もないことは確認済みだ。
薬のかなり苦い味にルークの体が本能的に嫌がるが、その両頬を包むように手で抱え込み、薬を避けようとする彼の舌を自分の舌でなだめながら薬を全部飲み込ませた。
ごめんね、ルーク!
少しだけ我慢して!
「・・・・・・よし、これでもう大丈夫!」
唇を離し、持ち上げていた彼の頭をゆっくりと枕へと下ろすと、クローディアは彼の汗ばんだ顔を冷たく濡れたタオルで拭き取り、もう一度冷水で洗って十分に冷やしてからその額へと小さくたたんだタオルを乗せた。
ヴァレンティーナに薬を飲ませたことを伝えたら、あとは彼自身の体力勝負だとのことを聞き、少しでも彼の体力が回復するよう自身の他者自動回復機能を信じて彼の熱い手を握りながら側で座りながら見守る。
「ルーク・・・・あんな奴の毒になんて、負けないで!」
こんな苦しそう顔なんか、あんたには似合わない!
あんたは、いつもの余裕しゃくしゃくの笑顔でニコニコしてなきゃ!
それから、どれくらいの時間が過ぎたのか。
気づくと私もルークの側で寝てしまったようで、目を開けると慌てて彼の様子を伺う。
「・・・・・良かった!熱が引いてる!」
触れた額や、握りしめた手の平から感じる熱は自分と変わらない温度になっていた。
あんなにも苦しそうだった様子も、穏やかな寝息に変わっている。
念のためにもう一度冷えたタオルを乗せようとしたが、握り込まれた手がどうしても離れないのでとりあえずそのままの状態で顔の汗だけを拭き取った。
『・・・・・ありがとう』
「!?」
突然、耳元に響いた高い声に体をビクつかせて振り返ると、そこには銀色の長い髪をした美しい少女が目の前にいた。
「あ、あなたは・・・・アイシスさん?!」
森の中と夢の中に現れた姿そのままで、全身が淡い銀の光で包まれた彼女が柔らかい笑みを浮かべて私と穏やかに眠るルークを交互に見つめる。
『シオンやルークを助けてくれて、本当にありがとう。今日はあなたにどうしても見せたいものがあって会いにきたの』
「・・・・・えっ?」
何が起きているのか分からないまま、彼女を包む銀色の光に私の全身が包まれその意識を失い、私の頭は眠るルークのベットの上に倒れて安らかな寝息を立てた。
『勝手なことをしてごめんね、ルーク。でも彼女ならきっと、あなたを助けてくれると思うから』
優しい微笑みを浮かべながらアイシスは眠るルークの頭をその白い指で何度か撫で、そしてその姿も静かに消えていく。
ガチャ。
「ふぇっふえっふえっ!なんじゃ、あの娘も一緒に寝てしもうたのか?仕方がないのう、もうしばし寝かせてやるとするか」
様子を見に来たヴァレンティーナは、近くにあった毛布をクローディアの体にかけると静かに部屋を出て行く。
「うーーーむ、一瞬妙な気配を感じたんじゃが、気のせいであったかのう?」
先ほど感じた不可思議な気配はすでに部屋にはない。
邪悪なものではなかったことを思い出し、まぁいいか!と笑いながら店頭へと戻っていった。
火山の際とは逆の立場で、お互いが意識不明の時の出来事となりました。
まともな恋愛シーンがまだなくて申し訳ないです。頑張ります!




