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モブ女子、神呼びの儀式

今回も読んでいただき、ありがとうございます!


山の神様は基本的にはみな女と聞き、びっくりです!母なる大地同様、母なる山なんですね!

巫女様を尋ねると、もう終わったのっ!?ととてもびっくりしていた。



その後、山に向かうのを私が説得している時は散々渋っていたが、ルークが『豊穣の儀式で大変な時に、本当にありがとう♪』とニッコリと笑えば1発KO。



なんか腑に落ちない。


それなら最初からそうしてくれればいいのに、それはやっぱり最後の手段なのだ。



何度も上り下りした火山への道はツボがない分足取りが軽く、周りの美しい景色を見ながら歩ける余裕も持ちながら先を進む2人についていく。


さっき飲んだ神水には、疲労回復の効能でもあるのかもしれない。


全身がさっきよりも軽く、痛みもなかった。



その間、巫女様はルークへと猛アピール中だ。


それをこちらから見てると通常運転だが、彼女のことを考えると冷たいんじゃない?という、かなりあっさりとした対応と時にさらっとスルーするそのルークの塩対応にため息をつくが、彼女はそれでも気にせずメロメロしている。


イケメンであるということは、様々なことが許されるのだろう。


確かにゲームの中でも、それでも許されるのはイケメンだからという言動は大いにある。




そしていよいよ、先ほど私が水をいっぱいにした銀の巨大受け皿の置かれた儀式の祭壇のへ続く火山の入り口へとたどり着いた。


少し遠くに見える祭壇の向こうは、火山の噴火で出てきた溶岩がグツグツと音を立てて湯気を出している。


ふと、サーラ様のところでアルフレド王子との試練の際に訪れた溶岩のたぎる岩山を思い出し身震いがした。


もちろん信じていたのが、危うくあの中に落ちていたかもしれないと思うと今でも身がすくむ。


いや、こんなことを言っていたらまたあの王子様にキャンキャン吠えられてしまうかもしれないが。



「・・・・・・大丈夫?」


「!?」



考えことに集中していた私に、ルークのどアップが視界に入る。



「ご、ごめん!もう大丈夫だからっ!!」


「フフ・・・・よそ見してると、転ぶよ?」


「わ、わかった」



巫女様からの痛いぐらいの睨みを受けつつ急いでその場から飛び退く。


なんだか最近、彼との距離が前よりもさらに物理的に近い気がしてならない。


パーソナルスペースは広そうなんだけどな。


現に、巫女様が何度もその腕に自分の腕を添えたり触れようとしれいるが、それを絶妙なタイミングでかわすのだ。


しかも、それを『かわされている』と相手にはわからないぐらいの自然さで。


これが余裕というものだろうか?





その後ーーーーーー祭壇の前にいよいよ到着し、祭壇の前に片膝をついた巫女様が祈りを捧げながら儀式を始める。



「我らが山の神、ウルカーヌ様。どうか我らが与えた供物を受け取り、我らが願いを叶えたまえ。我はあなた様の子、ヴァルカーンの娘。どうか今一度、我らの前にそのお姿を現し下さいませ」



どれだけ嫌がっていても、さすがは巫女様。


儀式の言葉はスラスラとその唇から紡がれ、祭壇の火が一際大きく燃え上がる。




ゴゴゴゴゴッ!!!!




「じ、地震!?まさか、噴火っ!?」



地響きの音とともに地面が大きく揺れる。


災害の中で何より一番怖いのが地震である、地震大国日本生まれの私は思わず近くの岩にしがみついて恐怖に震え上がった。



「・・・・あんた、バカじゃないの?山の神様がいらっしゃるのよ」



そんな私に、巫女様はあきれ顔だ。


あ、なるほど!


だけど、怖いもんは怖いんじゃい!!



ゴゴゴゴゴッ!!!!



もう一度地響きが鳴り、私達の前には赤い炎の髪を揺らした女性の姿の山の神様が現れた。



『・・・・・私を眠りから起こしたのはあなた達ですか?』



「豊穣の儀式の前にお呼び立てして、申し訳ありません。この旅の者達が、どうしても山の神様に会いたいとのことで」



『そうですか・・・・・それでは、この大量の神水の捧げ者を用意してくれたのは、いつものように巫女であるあなたですか?』


「!?」



村の人達の話では、本来山の神に捧げる神水を用意するのは巫女の役割で、山の神を直接呼ぶ巫女がかつての村長と同じように供物の用意を一生懸命やる姿を見せることで、神にその真剣さを伝えるというもの。


年若い巫女だから、手伝ってもらうこともこれまで多くあったらしいが。



「・・・・は、はい!そうです!!私が全部準備しました!!」


「!?」



山の神様に問われて少しだけ戸惑いを見せた彼女は、堂々とそう言い放つ。


儀式をお願いしたのはこちらだし、その為にやったことで彼女に恩を売る気もないがほんの少しだけイラッと腹がたってしまった。



『そうですか。これだけの神水をここまで運んで用意するのは、さぞがし大変であったことでしょう。あなたの努力を評して、今年の作物はあなたがこの水に込めた思いの強さに応じて、その豊作を約束しましょう』



「・・・・・え?」



その瞬間、巫女様の顔色が変わる。



『あなたがこの水を運んだ際の思いの強さと、ここまで歩いたその努力を讃えてそれに見合ったものが授かりす。村の者達にはそう明日の儀式で伝えましょう』



「・・・・・・ッ!?」



巫女様の顔色は真っ青だった。


それもそのはず。


山の神様の言葉通りなら、巫女様がこの水を運んだ思いとその行動が今年の村の作物の成功を左右する。


水を一切運んでいない巫女様の心が入るわけがなく、それに見合った作物の行方を考えるとーーーーーーーーー。



「・・・・・・ウ、ウルカーヌ様、私気分が悪いので、一度この場をし、失礼いたしますっ!!」


「あ、ちょ、ちょっと巫女様っ!?」



顔色の悪い巫女様は、ものすごい勢いでその場を離れて山を下りていく。



『気にされなくても大丈夫ですわ。ボルケーノ様の加護を受けた人の娘よ』



慌てて追いかけようとした私を、山の神ーウルカーヌ様が笑顔で止めた。



『彼女は私の言葉の意味を正しく理解し、だからこそ急いで神水を汲みに戻ったのです。本来は頭の賢い子なのですが、今回は供物の水を代わりに運ばせてしまい、申し訳ありませんでした』



ウルカーヌ様が私に向かって頭を下げる。



「い、いえっ!こちらこそ無理を言ってしまってすみませんでした!!あの、今回この村に来たのは」


『火鳥の鎧ですね?ボルケーノ様からお聞きしております。どうぞ、こちらをお持ちください』


「へ?!ボルケーノからっ!?」



そんなこと、さっきは一言も話してなかったのに!


すぐこの場に現れないところを見ると、らしくもなく恥ずかしいのだろうか?


後でお礼をきちんと言っておかねば!


ウルカーヌ様から手渡された『火鳥の鎧』は全身が炎を模した赤や橙・黄色の色彩がマーブル状に混ぜられ、そのデザインも力強い炎をイメージされており肩口などは上向きに尖っている。



「き、貴重なものを、本当にありがとうございますっ!!」



深く頭を下げると、そんな私の頭を優しくウルカーヌ様が撫でた。



『あなたがこの山まで何度もこの神水を運んでくれていた姿、ずっと拝見させて頂きました。我が村の人達にも優しくして頂き、ありがとうございます』


「い、いや、皆さんに優しくしてもらったのは私の方でっ!」



親切な人たちから優しい言葉や、色々なものを頂いたのは私の方だ。



『もしよければ、明日の豊穣祭にも参加していってください』


「!?」



それは、とても有難い申し出だった。


祭自体がとても大好きだし、どんなお祭りなのかもその準備風景の一部を覗き見していることもあって、興味がすごくある。


でもーーーーーー。



「ありがとうございます!でも、先を急ぎますので」


『わかりましたわ。 この後の旅も、どうかお気をつけて』


「はい!」


「お祭り、参加しなくて良かったの?」


「うん、早くウンディーネ様を解放する方が大切だからね!」


「・・・・・」



私とルークが山を降り始めると、巫女様があの大きなツボを汗だくで運んでいるところに出くわす。



「・・・・・ッ!!」



ルークの姿に顔が真っ赤になり、その隣にいる私の姿に彼女の顔が悔しそうに歪む。


そして無言のまま私達の隣を通り過ぎようとする彼女に、私は振り返りその背中に向かって声をかけた。



「巫女様!!神呼びの儀式を引き受けてくれて、本当にありがとう!!」


「!?」



巫女様は振り返らず、そのままツボを祭壇へと運ぶ為にと歩き続ける。


そして彼女の後ろからは、その彼女を心配してついきたであろう村の青年が姿を隠しながら見守っていた。


彼女の求める幸せは、案外すぐ近くにあるのかもしれない。



その光景に胸を暖かくさせながら、私とルークは『カチャン・ダール』へと戻る。




これで残すレアアイテムは、『大地の腕輪』だけだ!

お祭りは私も大好きです!


あの独特の雰囲気や音楽ははその場にいるだけでも楽しいですよね!

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