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モブ女子、 戦友達との別れ

今回もお読みいただき、ありがとうございます!


鳥の王国は今回でさよならです!

まさかの鳥モンスター戦争を終えたことで、クロワッサリー達に襲われることなくむしろ見守られる中で、無事に『月のしずく草』をゲットしました!!


『月のしずく草』は、摘まれた後も変わらずに淡く青い光を放っている。



「やった!これで3つ目っ!!」


「ピイィーーーーッ!!」



私の肩口が気に入ったのか、今だにそこへ乗ったままのクロワッサリーが大きく鳴き声を上げた。



『・・・・なるほど。主よ、クロワッサリー達が主に何か礼をしたいと申しておるぞ?』



「えっ?!」



まさかの、神様通訳ですかっ?!



「いや、お礼はこの月のしずく草がもらえれば十分ですし」


「ピイィーーーーッ!!」



『ふむ、それでは自分達の気がすまないそうだ』



「な・・・・なんて義理堅い!」



受けた必ず恩は返します!!って、そんなにも義理人情に厚い鳥さんだったのか!!


ただのレベルアップ要員として、ゲーム後半で経験値欲しさに大量虐殺してしまって本当にごめんよ。


今もあちこちで孵化した卵からそれは可愛い雛が生まれていて、そのつぶらな瞳を見ては余計に胸が痛んだ。



「それなら・・・・・・」



私は1つだけ、もし出来るならと『お願い』をクロワッサリーに伝えた。



「君って、本当にぶれないよね〜♪そろそろしつこいって、嫌がられるんじゃないの?」


「ちょっと、芯があるといってくれる?それに、嫌がられるようなことはお願いしてません!」



そのお願いを側で聞いていたルークが、口に手を当てながらクスクスと笑いだす。


自分でも他にないのかとは思うけど、それしか思いつかないんだからしょうがない。



「いいね♪その太い芯、ぼくがぶれさせてみたいなぁ〜〜」



ニコニコ顔のルークが顔をぐっと近づけてきて、私の顎に手を当てると自分の方に向ける。


相変わらず、ため息がつきたくなるほどの美形だ。



「はいはい、またどうせいつもの冗談でしょ?」


「ひどいなぁ〜半分は本気なのに♪」


「・・・・・・・」



ということは、半分かそれ以上は冗談ということだ。


彼が誰かを心の底から本気で好きになることなんて、あるんだろうか?


いや、ゲームでは実際ローズにそれをしてるんだよね。



「!?」



待てよ?あのローズに、このルークが??


恋を・・・・・するの??


今更かもしれないけど、どんな風に彼が恋愛で変わるのかを見たいが為だけにルークのルートをやりたかった!!


そうか、彼にハマる人はこれか!!


どんな感じになるのかは全く分からないが、おそらく通常時と恋愛時の大きすぎるギャップにしてやられるのかっ!!


この男が甘い何かを囁くっ!?


だめだっ!!


タチの悪い心の全くこもらない冗談ならまだしも、本気で熱い恋の気持ちを語りだすなど想像すらできないっ!!



「なに?どうせ熱く見つめてくれるなら、もっといい顔をしてほしいなぁ〜〜♪」


「・・・・・・ごめん、なんでもない」



今は考えるだけ無駄だった。


本当に気になるなら、王都にローズが登場してからこっそり2人の様子を影から見ていればいいことだ。


私は気持ちを切り替えて、先ほどのお願いの返事を通訳役のボルケーノへと聞く。



『主の願いは、そこにいるクロワッサリーが叶えるそうだ』



「えっ!?いいの?!」


「ピイィーーーーッ!!」



今回の戦いの中、クロワッサリーの中では一番親しくなったかもしれない、目の周りに赤いあざのある多分リーダー格の『彼』が引き受けてくれることになったらしい。



「ごめんね、本当にありがとうっ!!」


「ピイィーーーーッ!!」



肩口に止まったままの彼は、喜んでいるのか何度も私の頬にその体を摺り寄せてくる。


その羽根を私が何度か撫でた後、彼が空へと飛び立ち私達の周りを何度も大きく旋回してから、私の願いを叶える為に地上へと勢いよく急降下していった。


彼の姿に他のクロワッサリー達も一気に空へと羽ばたき、初めて見た時と同様どんどん1つの塊になりながら私たちの周りを大きく旋回して飛び回る。



「「ピイィーーーーーーーッ!!」」



飛びながら聞こえ始めるのは、クロワッサリー達による高い鳴き声の大合唱。



『我が主へ、みながお礼をいっておるぞ?』


「!?」



あんなに怖かったはずなのに、今はその光景にすごく胸の奥が暖かくなった。



「ありがとうーーーー!!元気な赤ちゃんを産んで育ててねーーーーーっ!!!」



その大合唱に応える為に、腹の底から大きな声で叫ぶ。



「「ピイィーーーーーーッ!!」」



クロワッサリー達の大合唱に見送られながら、私達は光る魔方陣に乗り『よろず屋・カチャンダール』へと戻った。



残るレアアイテムは、火鳥の鎧と大地の腕輪の2つのみ。


『月のしずく草』を届けると、いつもの笑い方で嬉しそうに受け取ったヴァレンティーナが、4つ目のアイテム『火鳥の鎧』があるという場所へと私達を魔方陣ですぐさま飛ばす。


お願いだから、ちょっとは休ませて下さい!!






次に私達が送られた場所は、アルカンダル王国から南の地方の、近くに火山がある海沿いにある村『ヴァルカーン』。


村の人に聞いたところこの村では火山を神様として崇めているらしく、もうすぐ毎年行われる豊穣のお礼の為のお祭りが開かれる為に村の中は出店が出ていたり飾りが付いていたりととても活気に溢れていた。


すぐさま村長さんに『火鳥の鎧』について聞いてみたところ、だいぶ昔に山の神へと捧げたものだからもしその神が許すならば持って行って構わないとのことだった。


そして、その許しを得る為には村の娘の中から選ばれた巫女を連れて神呼びの儀式をしなくてはならないらしく、私達は今現在その巫女の元へと訪れている。



「お願いします!どうしても神呼びの儀式が必要なんです!どうか、力を貸して頂けないでしょうか!」



頭を下げる私の前には長い黒髪を1つにまとめて背中に流し、その体には複雑で繊細な模様が金色の糸で刺繍してある赤い民族衣装のような服を身にまとい、頭からは薄く透ける金色の生地でできたこれまた素晴らしい刺繍が同じ金色の糸で作られたものをかぶった女性が椅子に気だるそうに腰掛けている。


とびきりの美人ではないものの、大きめの瞳と鼻の上のそばかすが可愛らしい。



「神呼びの儀式って、準備が大変で嫌なのよね」


「へ?」



そして、大げさなくらい大きなため息を目の前でつく。



「そこをなんとか、お願いします!!」



再度頭を下げる私を見ていた巫女の女性はしばらく黙っていたが、突然ニッコリと笑った。



「・・・・・そうだ!私の代わりに神呼びの儀式で必要な神水を、そこのツボ10個分運んでくれたらやってあげてもいいわ!」


「!?」



巫女がいうツボというのは、私の斜めうしろにある1メートルほどあるツボのことで、陶器であるそれは水を入れたらかなり重そうだった。



「・・・・・じゅ、10個分ですか」


「そうよ、神のお山の中の祭壇があるところまで、自分の足で運ぶの。見たところあなたなら力がありそうだし、大丈夫よね?」



見た目はいたって普通の私のどこを見て『力がある』と判断したのかは不明たが、確かに普通の女の子よりは日々のデリバリー訓練であるとは思う。



「そしたら、ルークも」


「ダメよ!!彼のように美しい人に何をさせる気なのっ?!もし腕を痛めたりしたらどうする気っ!?運ぶなら、あなた1人でよ!!」


「・・・・・・・わかりました」



イケメンの力は凄いな。


誰が見ても明らかなくらい、巫女様は私の後ろにいるルークに目がハートでいらっしゃる。


私の腕は痛めてもいいんですか?


一応、私もあなたと同じ女なんですけどね?



「じゃ、あとはよろしくね!私は豊穣の儀式の準備で忙しいから、終わったら呼んでちょうだい!」


「は、はぁ」



どうしよう。


クロワッサリー達との方が、心は絶対に楽だった。



「それじゃ、行ってきます」



ため息をつきながら、私は1メートル弱はありそうな大きなツボを両手で掴むとまずは水を入れる為に神水があるという井戸のところまで向かい始める。


空なのにこの重さでは、水を入れてからが恐ろしい。



そんな私を、いつもの笑みを浮かべたルークが無言で見つめていた。


鳥の王国に帰りたい、と心の底から願いながらツボを運んでいる主人公です。


言葉がない方が、かえってお互いの心を強く感じようとするのかもしれないですね

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