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モブ女子、鳥の王国への侵入者

いつも読んでいただき、ありがとうございます!


レアアイテム探しの3つ目です!

水神の盾と、エメラルドドラゴンのウロコを無事にゲットした私達が次に向かわされたのは『月のしずく草』があるとされる、空を浮遊し移動する天空の島『ラ○ュタ』ではなくて、『ラクータ』。


これだけでも私の心が湧き上がってワクワクする環境だというのに、今回私の頃はハラハラ&恐怖に怯えております。



そしてこの島『ラクータ』を縄張りとしているのは、鳥系モンスターである『クロワッサリー』。


私が言い間違えから『クロワッサン』と読んでいたゲームにも登場していた敵で、別に見た目はクロワッサンに全く似ていない。


炎のブレスを吐くこのモンスターは仲間意識が大変に強く、ゲーム中も一匹倒されると次々と仲間を呼び、ステータスが弱いうちは倒しても倒しても呼ばれる長期戦に何度もやられてしまっていた。


しかも一匹一匹が炎の全体攻撃ブレスを吐くものだから、仲間が増えると一気に全滅の危機にさらされてしまう。


そのクロワッサリーの縄張りであり、繁殖地でもあるらしいこの地に降りた侵入者である私達に何千・何万のクロワッサリーが今敵と認識しその鋭い目を一斉に光らせていた。



「ひいぃっ!!!」


「おや・・・・これはまた、盛大なお出迎えで♪」


「いや笑ってる場合じゃないからね?ルーク・・・・って来たぁぁぁーーーーーーっ!!!」



何千何万のクロワッサリーが、一斉に襲いかかってくる。



皆さんは、見たことがあるでしょうか?


よく、住宅街の中にある大きな樹を中心に初めは10羽程度だったものが、空を旋回しながら仲間があちらこちらから集まって行き、ものすごい数の鳥たちが丸くまとまりながら大きな円を描いてぐるぐる旋回している様を。


前世である日の夕方、最寄りの駅の歩道橋からその始まりから終わりまでに偶然出くわし、そのあまりの凄さに携帯のムービーで一部始終を撮って友達に送って興奮していたのだが。


あの時の何倍とも言える数の集団が、私達を襲ってきているんです。



はい、とにかく恐いとしか言いようがありませんっ!!!


この私が体験している恐怖が少しでも伝わったなら幸いです。



隣で地面から浮いて、それはそれは楽しそうに飛びながら逃げている魔導師とはこの気持ちがまっっったく共有できないので。



「フフ・・・・ちょうど産卵期真っ只中で、ものすごい怒りの気に満ちてるよ♪」


「満ちてるよ、じゃないっ!!これ、どうすればいいのっ!!??」



全力疾走で逃げることしかできない私に、ルークはどこまでもニコニコと涼しい笑顔だ。



「あ、あそこ」


「えっ!?なに?!」



突然、ルークがある部分を指差してつぶやいたので、私もつられてそちらに目をやると、そこには島の崖の中腹に淡い青白い光を放つ白い花びらの花が。



「あれが、月のしずく草だよ♪」


「やった!!あれを取ればいいのね?」



それならと、マーズを呼んでその背に乗りながらすぐさま月のしずく草のところまで向かう。



しまった!


最初から、こうすれば良かった!!



今回は割と簡単にゲットできそうだと思った気持ちが何かのフラグを立てたのか、月のしずく草まであと少しというところでクロワッサリー達の攻撃がさらに激しくなった。


炎のブレス攻撃が私に効かないと感づいてしまった彼らは、私に向かって嘴での攻撃に切り替えてくる。


何千何万の鋭い嘴が、すごい速さで私の体に向かってくるのだ。これで怯えないわけがない。


何でルークじゃなくて、私だけに集中攻撃なんですかっ!!



「い、痛ッ!!痛い!!痛いって、言ってんだろうがぁぁぁーーーーーーーッ!!!」




ゴオォォォッ!!!!




あらゆる方向から飛んでくる嘴に全身ミミズ腫れの擦り傷や痣を作り、あまりの痛みにうっかりキレてアグニを発動させてしまい、余計に敵と認識されることを何度が繰り返しているうちに、空はすっかり日が沈んで暗くなってしまった。





「・・・・・痛っ!!」


「またずいぶん、傷が増えたね〜♪」




満天の星空の下、今夜の寝床となる島の端っこの小さな洞窟の中で私はルークに傷の手当をしてもらっていた。


ルークがその手をかざし、触れられたところからゆっくりと傷が塞がっていく。



良かった。


自然治癒だと全身に跡が残りそうな傷ばかりで、さすがに痣だらけの体はクローディアに申し訳無さすぎる。


他者に対しては自動回復機能があっても、自分に対して発動しないのはやっぱり悲しい。



その後、いつの間にやらルークが取っていた、島に生えている果実の実を2人で食べた。


割と小ぶりなそのラ・フランスに似た果実は甘苦く、栄養は高いらしい。



「ねぇ、ルーク」


「・・・・なに?」



ふと、食事が終わって一息ついた際、ルークにクロワッサリーの攻略法を聞こうと思ったけど、すぐさまそれを訪ねても多分教えてくれないような気がした。


ルークとこうして一緒に過ごす時間が大きくなって感じたのは、彼は私を甘やかさないということ。


クロワッサリーのこともそう。


彼が本気を出せば彼らなど一瞬で全滅してしまうだろうし、花一輪をクロワッサリー達に気づかれずに摘んでくるなど彼にはとても簡単だろうに、彼はあえてそれをせず、私が自分で考えて行動することを見守っているかのようにさえ感じるのだ。


今日の終わりは、体力がきつくてヘトヘトになり大群のクロワッサリーに対して何の抵抗もできなくなってしまった私を見かねたのか、ルークが閃光の魔法を唱えて目が眩んだ隙にこの洞窟へと逃げて来ていた。


それまで、一切の手出しはしてきていない。



「・・・・・何でもない。傷の手当と食事、ありがとう」


「敵の敵は、味方だよ♪」


「へ?」



ニッコリと笑ったルークは、それ以上何も言わなかった。



敵の敵は、味方。


つまり、共通の敵を持った時に彼らの味方となればいいってこと?


クロワッサリーにとっての敵?


『天敵』のような存在が、モンスター同士でもあるってことだろうか?




「・・・・・どうしたの?」


「なんでもない、おやすみなさい!」




それはなに?と、彼にはもう聞かない。


それを自分で考えろと、そういう意味できっと彼は言ったと思うから。




その日の夜は、洞窟の中で横になって眠った。


ゴツゴツした岩場の上はとても硬くて寝心地が悪いったらなかったが、寒くも暑くもなく環境的には割と快適でなんとか眠りにはつく。


洞窟の中なら虫はどうしたかって?


さすがに、申し訳ないけれどアグニで洞窟の中を先に燃やし尽くしましたよ。



ちなみに、隣にはルークが私に背を向けて寝ている。


男の人と洞窟の中でこうして並んで寝ているなんて、前世の私からしたらとても考えられないことだ。


しかも相手はあんなに苦手としていたはずの、ルーク=サクリファイス。


でも、今は不思議と前ほど彼を苦手とは思わない。



私はその紺のローブごしの彼の背中を無意識に見つめながら、思った以上に安らかな気持ちで眠りついた。


仲間を呼ぶ敵って、こちらが強ければ一気にやっつけたりレベルアップに最適ですが、弱いうちはやっつけてもやっつけても呼ばれて、画面から敵の数が減らずに滅多打ちされたのをよく覚えてます。


しかも、慣れたファールドから少し強い場所に移動した途端にその制裁にあったりして、泣きました。

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