モブ女子、星空の下で君を想う
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
昔の内容を見返すことが増えて、そのたびに書き直したい衝動にかられてます。
でも、その時にしか書けないものなんですよね。
ルークからの脅しという名の願いを聞き入れた後、明日から闇の神殿があるとされる西の地方に行くことをお母さんやイザベルに告げ、毎回大変ねぇ〜〜とあまりににこやかにあっさりと受け入れられてしまったことにショックを受けて、今に繋がっております。
今夜は早く休んでいいわよ♪と店を追い出された私は、久しぶりに大好きな街の広場の噴水のところまで歩いてきた。
この場所に座り込んで星を見上げるのは、何日ぶりだろうか?
以前ここに来た時は、前世の家族のことを思い出して泣いていた。
そして、その後にまさかの彼がここに来たのだ。
『辛い気持ちを言いたくないなら、無理に言わなくても構わない。だが、たまには泣ける場所が誰だって必要だ』
『お前にその場所がまだないなら、俺を使え』
あの時、彼のおかげで私は思いっきり泣くことができてとても気持ちが軽くなった。
「・・・・ダメだなぁ〜〜」
もう会わないと決めたはずの彼のことを、何処にいてもこうしてすぐに思い出してしまう。
遠くからでも見てしまったら我慢が出来なくなりそうで必死でそれも堪えているのだが、彼専用のかなりレベルアップしたセンサーが勝手に彼を探して見つけてしまいとても困る。
初めは、画面の中で見ていた彼をこの目で実際に見れたことに感動し、文章つきで見ていた会話が実際に目を合わせて会話ができることに心の底から喜びに震えあがった。
だって、同じ会話が繰り返されるわけでも、決まった選択肢が目の前に出てきて分かってる反応が返ってくるわけじゃなく、彼の心の言葉で返ってくる。
彼の性格も、ゲームの時には見られなかった以外な部分も含めた色んな面が見えてきて、気づけばどんどん好きになってしまった。
ただの萌えからの憧れが、1人の男性として好きになってしまったのは果たしていつからなのか。
『愛している』という言葉を知っていたし、大好きなキャラへの愛は自分の中では確かにあったものだけど、リアルな人間に対して家族以外でその言葉を『好き』ではなく当てはめることが難しかった。
でも、今はそれが少しだけ分かるような気がする。
この満天の空の下で、たとえ彼が自分に何をしてくれなくても、生きてくれているだけでやっぱり幸せなのだ。
いつかローズが来て彼と結ばれ、幸せになるのが彼の幸せならこんなに嬉しいことはない。
こんなにーーーーーーーー。
「・・・・バカね。悲しくてさびしいなら、無理に自分に言い聞かせて笑うことも、相手の幸せも無理やり願うことではないわ」
「!?」
いつの間にか、星を眺めながら泣いていた私を暖かい胸と腕が強く抱きしめる。
「い、イザベラッ」
「いいのよ、泣いても。本当は会いたくてたまらないのでしょう?その素直な自分の気持ちにまで蓋をして嘘をついて、我慢することはないわ。私がこうして隠しててあげるから、思いっきり泣いてしまいなさいな」
「・・・・・・ッ!!!」
イザベルに頭をそっと抱えられながら優しく体と心を抱きしめられ、私は子どもの頃のように大声で泣いた。
ジークフリート様。
あなたのおかげで、あなた以外にもこうして心から泣かせてくれる暖かい場所が私にもできました。
そんな彼を好きで好きで、たまらないその気持ちがその涙とともに流れてしまえばいいのにと思いながら、むしろ膨れ上がるのを感じて余計に涙が溢れていく。
泣き止むまでずっとそばについてくれた優しいイザベルのおかげで、私はその夜ぐっすりと穏やかな気持ちで眠りにつけた。
そんな私の夢に、1人の来訪者が訪れる。
『こんにちは!』
『・・・・・こ、こんにちは!』
目の前には、森の中で出会ったサラサラと風にたなびく銀色の美しい髪の美少女がニコニコと私に笑いかけてくる。
『無事にサーラにも会えたみたいで、良かったわ!』
『あ、あの時は本当にありがとうございました!』
『私は大したことはしてないわ。分かりづらい伝え方をしたルークがいけないのよ』
『ルーク・・・・あ、あの私はクローディア=シャーロットと言います!あなたは?』
『あら?ごめんなさい!そういえば、名前を言ってなかったよね?私はアイシスよ!』
ニコッ!と大変可愛らしい笑顔をして『アイシス』と名乗った美少女は、頬を桃色に染めながら小さくお辞儀をした。
あぁ、本当に自分と同じ女子とは思えない天使のような可愛らしさだ!
『今日はルークがごめんなさい。あの子、根はとても優しい子なの』
見た目的にはルークより年下に見える彼女から、あの子と言われて何やら変な感じがした。
そして、そのまま深く頭を下げ続けるアイシスに慌ててしまう。
『あ、いえ、アイシスさんに謝ってもらうことでは!』
『ううん、全部私のせいなのよ』
『えっ?』
顔を上げたアイシスさんは、なぜかとても悲しそうな笑みをを浮かべていた。
『悪いのは全部私なの。だから、お願い!あの子をどうか助けて』
『!?』
アイシスさんは私の両手を握りしめるとそれをどこか必死な様子の強い瞳で私に伝えて、そしてそこで夢は突然終わりを告げた。
「・・・・・きみ、いつまで寝てるつもり?」
「へ?」
次に目を開けた時には、アイシスさんと同じ銀髪の髪をフードの中に隠したそれはそれはキレイな顔のーーーーーーー。
「・・・・・・・」
「まだ寝ぼけているなら、一瞬で眼が覚めるようなことでもしてあげようか?」
「・・・・・ご、ご、ご、ごめんなさぁーーーいっ!!!!」
顎の下にその長い指をかけられキレイな顔が至近距離にまで近づいてきたことで、ようやく意識を取り戻した私はルークを急いで部屋から追い出し、大慌てで支度を始めた。
やばい!寝坊したっ!!
それにしても夢で助けを求められるなんて、ゲームか漫画くらいかと思ってたのにまさか現実に起こるのはっ!!
いや、もしかしたら私のやっていないゲームのルークルートにイベントとして起こるのかもしれない。
彼のルートは、後々にエルフの里が関わってくるということ以外ほとんど知らないのだ。
今回の闇の神殿のウンディーネ様を解放することと、何か関係があるんだろうか?
それに、彼の命を蝕んでいる呪いことも。
脳内会議をしようにも、情報があまりに足りなさすぎる。
後でボルケーノにも相談してみようか?
って、今はとにかく急いで家を出ることが最優先!!!
「おはよう!お父さん、お母さん!行ってくるね!」
「魔法院の魔導師様が一緒だとしても、十分に気をつけるんだぞ?」
「うん!」
「クロエちゃん、これお昼に2人で食べたらいいわ♪」
「ありがとう!お母さん!行ってきます!」
お母さんからのお弁当を笑顔で受け取ると、私は急いで家の外に追い出したルークの元へと急ぐ。
そんなクローディアを、暖かい眼差しでララは愛する娘とその横で歩く彼を見送った。
「・・・・ぼうや、クロエちゃんをよろしくね」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ〜〜♪」
こらから始まる新しい旅も、太陽の光が降り注ぐ快晴の空の下からスタートした。
名前だけなら、かなり最初からいたのに中々出してあげられなかなったアイシスちゃんもこれからもっと出せたらな〜と思います♪




