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モブ女子、なつかれました!

ワンコ君、過去話です。

本当に難産でした!

レオこと、レオナルド=ラティーートと出会ったのは、アルカンダルでは珍しい大雨の天気の中だった。





ランチの件があった日の数日後ーーーーー。


お弁当を届け終わった後に帰ろうとすると、いきなりの大雨に降られて、私は近くにあった騎士院の端に位置する物置小屋のようなところに避難した。




「あぁ〜〜あ、全身びちょびちょで気持ち悪い。帰ったらすぐにお風呂だな〜〜〜」



とりあえず、身につけていた白いレースの飾りがついたエプロンを外して水気をきって乾かす。

さすがに上下の服は脱げないので、着たままスカートの端をつかんではしぼって、を繰り返していた。




「はぁ〜〜〜、風邪ひかなきゃいいけど」


「ーーーーーーーの??」


「・・・・・・えっ?」




部屋のどこからか聞こえた小さい声に、まさか他に人がいるとは思わず一瞬全身がビクッ!!と跳ね上がった。




「ーーーーーー誰か、そこにいるの??」



今度は、先ほどよりは大きく聞こえた。



「あ!ごめんなさい!雨が突然降ってきちゃって、しばらく一緒に雨宿りさせて欲しいんですが・・・・」


「ーーーーーーー」


「あ、あの、私は城下のレストランで働く、クローディア=シャーロットです。あなたは??」





小屋の中に明かりはほとんどないので、隅の方は暗さが深くなり、部屋の奥で座り込んでいるだろう、先ほど聞こえてきた声からしておそらくクローディアと同じくらいの青年。


だが、入り口からではその姿はやっぱり見えにくい。





「ーーーーーーーお、俺は、レオ。騎士の、1人だ」


「よかった〜〜!!騎士さまが一緒なら、もう安心ですね!」




はぁ〜〜♪と安堵の息を吐いて奥に向かおうすると、その足音で自分の方に向かってきているのに気がついたのか、青年はよけいに身体を強張らせた。




「ーーーーーーこ、こっちに来るな!!!」


「えっ?!」


「い、今、俺・・・・体がおかしくて、いつもとなんか違くて・・・・だから、頼むから!!それ以上こっちに来るな!!!」


「!!!???」




話しながら、鳴き声が少し混じっているのがわかった。途中で鼻をすする音も混じっている。





ーーーーーレオ!!

そうだ!!思い出した!!


愛称がレオこと、

レオナルド=ラティーート。


彼は騎士院にて、団長であるジークフリート様の下で働く、騎士院内で言えば中の下というポジションな、明るく元気な好青年。


生まれはローズと同じ村で、幼馴染。


彼のルートに進むと、最初は毎日元気な大型犬ワンコのように、出会うたびに飛びついてくっついてきてすごくびっくりした。


でも、人懐っこく成人男性なのにかわいいと感じてしまう幼馴染は、その後どんどんその元気さと笑顔を失っていく。




彼の死亡フラグは、原因不明・治療法不明の謎の病。

幼い頃は大変病弱で、毎日ベットから離れられなかった彼を、ローズは毎日ように会いに行っては元気付けていたエピソードが途中ではさまれた。


そんな健気でまっすぐで、優しいローズに彼は幼いながらも恋をし、彼女を守れる男になるために、彼は村を出て王都で騎士院に入り、立派な騎士を目指すこととなる。


騎士院で身体を鍛えて、見た目はなんともないように見えていたが、彼の奥で静かに眠る病魔というモンスターは、ゲーム開始とともに目を覚まし、彼の体力・気力をゆっくり奪っていき、ゲーム後半のレオはどんどん衰弱していった。




「・・・・ゴホゴホッ!!」


「!!??」




そうだ。それにこの流れは、彼の病気のことをローズが本格的に知ったイベントによく似ている。


この先に起こるだろうローズとの大切なイベントなのに、モブの私が勝手に進めていいものなんだろうかーーーーー??




「・・・・ゴホゴホッ!!く、くそっ!!」


「ッ?!」




今の彼が後々に辿るだろう、その先の姿を知っているだけに、病の発現に脅えるレオを見ているだけで胸が苦しくなった。


彼は、あんなにも明るく元気な青年なのに!


ローズの為に、病気でガリガリだった自分の体を人一倍努力して鍛えあげて、騎士見習いから騎士になり、今も努力し続けているというのに!


病気になったことも本当に偶然で、彼は何も悪くないのにーーーーーー!!




「・・・・・ゴホゴホッ!!」


「ーーーーーレオ、そっちに行ってもいいかな?」


「!!??」





ごめん、ローズ。

あなたとの大事なイベントかもしれない。


団長のフラグにも、もしかしたら全く関係なかったり、逆に死亡フラグのきっかけになるのかもしれないけど。


それでも、今目の前にいるレオを見て、何もしないで放っておくなんて、やっぱりできない!!




「な、なんでっ!?来るなって言ってるじゃん!!!」


「うん。でも、ごめんね。私があなたのそばに行きたいの」


「!!??」





この他者自動回復機能が、確かに病気まで治したことはあるものの、その時々で効果に波があるし、どこまで役に立てるかも分からない。


彼の病は、治療法不明・回復方法すらも不明の謎の病気。

確かゲーム内では、死亡フラグ回避の為に、何か特別な道具が必要だったことだけは覚えている。


でも、その道具が魔力だろうと奇跡だろうと、完治する可能性があることは証明されたのだ。


それならば、試してやるだけやってみる価値はあるかもしれないじゃない?


結果がどう転ぶなんて、

誰にも分からいんだからーーーーーーー!!




「く、来るなっ!!俺は病気なんだ!!

治療法も不明の病気だから!!来るとうつるかもしれないぞ!!頼むから来ないでくれっ!!!」




レオは泣きじゃくりながら、私に病気のことを打ち明ける。

本当は言いたくなかったろうに、私に病気の影響が受けないようにと、必死で叫んでる。



本当に、レオは優しい。



優しいから、きっと今まで色んなところで、病気のことでも傷ついてる。


前世で保育士という仕事をする中で、心が傷つけられて苦しんでいる子どもともたくさん出会った。

すぐになんて、受け入れてもらえなかったけど、その子達との関わりは私の方が教えられることばかりだった。


あの時、助けているようで、私の方が助けてもらっていた。

温もりや愛を与えているようで、それを本当に望んでいるのは自分自身だということにも、すごく気づかされた。


その時に、人が人に求めているものは、きっとみんなそんなに違わないと思ったから。






「そしたら、私は原因不明の、人を治す力が急に体にできたんだって話したら、同じように信じてくれる??」




ニッーーーーコリ☆




「・・・・・へ?」




ギューーーーーーッ!!!





「は〜〜い!!レオ君、つっかま〜〜えった!!」


「!!!???」





レオが、私の腕の中で身体を強張らせるのが分かる。




お願い!!自動回復機能!

レオの身体を少しでも癒してっ!!





「は、離して!!離せ!!なんでこんなことするんだっ!!俺のことなんか、何も知らないくせにっ!!!」


「ーーーーーーうん、知らない」


「・・・・えっ?!」





それはゲームの中のことかもしれないけど、それだって、間違ってるかもしれないけど。




「ーーーーーでも、知ってることもあるよ。あなたが、病気だろうとそれをいいわけにしないで、騎士の訓練や努力を人一倍努力してきたこととか」


「!!??」


「病気のことを1人で抱え込まずに、みんなを巻き込むことだって出来るのに、さっきみたいに人に迷惑かからないようにする優しい人だってことは、会ったばかりの私にだって分かる」


「・・・・・・・」




レオの全身に入っていた力が、少しずつ抜けていく。自動回復機能の効果が出たんだろうか?





「でも、あなたのことは全然まだまだ知らないから。だから、これから教えて?これからあなたのことを、たくさん聞かせて欲しい」


「・・・・・・・」




ずっと、されるがままに抱きしめられていたレオが、私の背中に恐る恐る手を回してそっと触れる。




「・・・・・・なん、で?なんで、会ったばっかりの俺に、そんなこと言うの?」


「!?」




それは確かにごもっとも!

私が人に言われても、何それ??って、へたしたら気持ち悪い!!って逃げるかもしれないな。


まぁ、それでも、ありのままに伝えるしかないよね。



「ーーーー確かにそう思うよね。私がレオの立場でも同じこと思うだろうし、言うと思う。

でも私ね、レオの笑った顔が好きなんだ♪」


「・・・・・・えっ??」


「元気いっぱいのレオの笑顔を見て、すごく気持ちが明るくなって、私の方が元気をもらってたんだよ」




それは前世の世界の、しかもゲームの中のレオだったけど、それでも私の気持ちは嘘じゃない。





「今のあなたも、同じように明るい笑顔で笑っててくれたら嬉しいな♪レオが病気で辛い時は私がその分笑ってるから、大丈夫な時は一緒にたくさん笑おう♪」


「・・・・・・」






『レオーー!私、レオの笑顔がだーい好き!』


『レオの笑顔見てると、私までつられて笑っちゃうんだもん♪』


『レオが病気の時は私が笑ってあげる!元気になったら、また一緒に笑おう〜♪』





「・・・・・・ローズ!」


「!!??」




レオの瞳から、またたくさんの涙が溢れ始める。




「お、俺、ローズと、約束したんだ!」


「約束?」


「り、りっぱな、騎士に、なって・・・!」




泣きながら、レオの全身が震え始めたので、私は彼を抱きしめる腕に力込めた。




「う、うぅ・・・・ろ、ローズを、守るってっ!!」


「ーーーーーうん、そうだよ。ローズもレオが騎士になるの待ってる!レオが元気になって、逞しい騎士になって迎えに来てくれるのを待ってるよ!!」




「お、俺、死にたく、ない!!ぜ、絶対に、

死にたく、ないよぉぉーーーーーーーーッ!!!」




レオが大きく身体を震わし、私の首元に顔を伏せると、思いっきり抱きつきながら子どものように大きな声で泣き出した。


もしかしたら、彼はずっとこんな風に泣きたかったのかもしれない。





「大丈夫。あなたをけっして、死なせたりなんかしない!!」


「ッ!?」


「一緒に、生きられる方法を探そう!!

ローズの為にも、絶対に生きることを諦めちゃダメ!!だってレオは、ローズと一緒に幸せになるんでしょっ!!!」


「ッ!!??」






『レオ!!立派な騎士になったら、私のことを迎えに来てね!』


『そしたら、私はレオのお姫様になるから♪』


『2人で一緒に、幸せになろうね♪』





「・・・・・うん!俺、生きる!!絶対、絶対諦めないで生きる!!ローズが、待ってるもん!!」


「そうだよ!とびきりいい男の、素敵な騎士になって、ローズに会いに行こうよ!レオなら絶対できる!!大丈夫!!」


「・・・・・うん!!・・・・うん!!」





それからしばらくの間、レオは私にしがみつき、首元に顔をうずめて泣き続けていた。

そのまま泣き疲れて、子どものように寝てしまうまで、ずっと。


その間中も、自動回復機能は彼を癒してくれてたらしくて、目が覚めたレオは身体が全然違うと、すごくいい笑顔で元気いっぱいの姿を見せてくれた。



ただ、その時に、首元に顔をくっつけるのが彼の癖になってしまったようで・・・。


そうしてるのが一番安心して、とても身体が心地よくて気持ちがいいのだと。




初めの何回かは身体の癒しになればとそのままにしていたが、これをローズが見たら何て思うかを考えたら、とんでもないっ!!!と、今に至っているわけです。



まぁ、実際の年齢がアラサーの私からすると、年の離れた弟のような気持ちなんだけど、今のクローディアの体は10代だから、人から見たらそうは思わないだろうし。


それをあの愛しの団長に見られて、少しでも変な誤解でもされたら!!!と、後から後から肝がひえたのだっ!!!!





「クロエ!!俺、クロエのこと、だーーーい好きだよ!!」


「・・・・ハァ。ローズはどうしたの?」


「もちろん!ローズのことも大好き!!」


「・・・・おい!!」


「だって、ローズへの好きって気持ちも、君への大好き!!って気持ちも、両方ちゃんとあるんだ!!」


「・・・・・ハァ。何かを、間違えた」


「どうしたの、クロエ??ね、クロエ!ギューーってしていい??」


「だ、だ、ダメに決まってんだろーーーーーッ!!!」


「ちぇっ!!」





おかしいな。

俺、クロエのこと好きなのに。



あ!ローズのことも好きだよ!ローズのことを考えると、心がフワフワして嬉しくなる。


でも、何年も会えてないからかな。

どんどん、ローズとの思い出も忘れて行くんだ。

キレイな思い出は心の中に残ってキラキラしているけど、それだけしかなくなってきているのが、すごく悲しい。




俺が、おかしいのかな?




長く会えてなくても、みんなそんな風にならないで、全部の思いや思い出をずっと覚えているものなんだろうか??



クロエは、毎回なぜか怒られるけど。

でも、同じくらい俺が頑張った時も、思いっきり褒めてくれるし一緒に喜んでくれるんだ!!


俺の話も、俺が説明へたくそでも、ちゃんと全部聞いてくれるし。


くっつくのもローズにやりなさい!って怒るけど、でも甘えまくったら最後には仕方ないな〜〜って許してくれる。


怒った顔も笑った顔も好きだけど、仕方ないな〜〜って、少し困ったように笑う顔も俺けっこう大好きなんだ!



なんだか、もっともっと困らせたくなっちゃう!



でも、やっぱり一番はクロエの首元にくっついて、全身隙間ないくらいくっついてるのが何よりも気持ちがいい。

彼女はそれを自分の回復機能っていう、魔法みたいなもののせいだっていうけど。



抱きしめたときの温かさとか、柔らかさとか。

抱きしめ返してくれた時の、あの心から満たされたような、何かが溢れてくるようなこの気持ちは、クロエにしか感じたことがない。



ローズにだって、そんな気持ちはこれまでに感じたことがないんだ。




俺が、おかしいのかな?




クロエと、もっともっと一緒にいたいんだ。

もっとくっついていたいし、もっと深いところで繋がりたい。

クロエを、独り占めにしてどこかに閉じ込めてしまいたい!!



時々、そんな気持ちになったりもするんだ。




ローズには、そんな気持ちにならないのに。



いつだって笑顔で幸せでいてくれたらいいって、ローズにはそう思えるのに。



ローズ、俺のこの気持ちはなんなんだろう??



ずっと考えてるのに、答えが全然わからないんだ。俺がバカなのかな?

君にもう一度会えたら、答えは出るのかな?


クロエに感じる気持ちと同じものを、君にも感じたりするんだろうか?





ねぇ、教えてよーーーーーーーローズ。

いつも、読んでくだっている方々、本当にありがとうございます!!


前書きにもあったように、今回は今までの中で一番難産でした。初めはレオとクロエがお互いの気持ちをぶつけってるような感じだったんですが、途中からどうしても進まずストップ。


少し時間をおいたら、クロエがぶつけるのって違くない?と全然違う方からやってきたら、レオ君もおれました。


北風と太陽だな〜〜と、ほぼ全部の書き直しをしながら感じてました!

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