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モブ女子、とりあえず下ろして下さい!

今回もお読みいただき、ありがとうございます!



次から次へと乱入者の入るエリザベスの部屋ですが、そのメイドさん達が動じてないのがさすがですね!



これはいったい、なんなんでしょうか?




さっきまでアルフレド王子の顔が至近距離にあったと思ったら、今度は超絶美形の顔だけは美術品レベルなルークの顔が目の前にある。


あぁーーーなんで、君たちはそんなにも睫毛がバサバサで、端整な顔立ちなんでしょうか?


なんだその透明感しかないシミもニキビもない、うるツヤ肌はっ!?



「久しぶりの逢瀬なのに、なんでそんなに不機嫌なのかな?」


「・・・・・・」



できることなら、その真っ白な頰を思いっきり横に引っ張ってやりたい。



「それだけ、ぼくに会えなくて寂しかった?」


「・・・・んなわけあるかっ!!」



妖しい雰囲気で近づいてくる顔を手で押しやって腕の中から降りようとするが、ここが空中と知りすぐさまルークの体にしがみつく。


下にいるアルフレドは、悔しそうに唇をきつく噛み締めていた。



「なっ、なっ、なにこれっ!!!」


「嬉しいなぁ〜こんなにしっかりくっついてくれて♪」


「ふ、不可抗力だバカっ!!は、早く下に下ろして!」



残念ながら今の私に空を飛ぶ能力はない。


赤い魔女さま、もう一度私に飛行能力をください!!




「それは叶えられないな〜〜」


「?!」


「それじゃあ皆さん、ぼくとクローディアはこれからデートなんで御前を失礼しますね♪」


「る、ルークちょっ・・・・!!」



私が止める間もなく、私とルークは歪んだ空間に吸い込まれるようにその場から姿を消した。






「る、ルーク=サクリファイスめっ!!いつか来るとは思ってたが、くそっ!!エリザベス、用はすんだから俺は帰るぞ!!」



舌打ちをしたアルフレドが、来た時と同様にズカズカと苛立ちを隠さずにドアへと向かっていく。



「どうぞ、勝手になさいませ」



エリザベスは、すっかり冷めてしまった紅茶の入れなおしと、クローディアの分の茶器を下げることをメイドに指示すると、ため息とともに椅子に座り直した。



「ルーク=サクリファイスが行くとするなら魔法院か。バーチ!今すぐ魔法院へ行くぞっ!!」



いつの間に部屋にいたのか、扉の脇で膝をおって控えていたバーチが、エリザベスとグレンに向かって一礼した後で扉を閉め、静かにその後ろからアルフレドに付き従う。



「・・・・アルフレド様、この後は王様との謁見の時間です」


「くっ!ならばその後は?!」


「その後は、我が国と城を守る軍の最高司令官である、サルダートス将軍と会うことになっております」



同じこの国の武力の要となる、騎士院はどちらかといえば国の民を守る為の機関であり、サルダートス将軍率いる兵は城と王族を守ることが第一の機関だ。




「くそっ!誰だこんなスケジュールを組んだのはっ!?」


「・・・・マーサ様です」


「!!??」



王妃が組んだとすれば決して文句を言えまいと仕組んだのは王であるが、王妃も彼が自分には逆らえないのを分かった上でかなり無茶なスケジュールを楽しそうに組んでいたという。


王子としての勉強や仕事をこれまで散々放棄してサボっていたのだからというのが、その理由らしいが確かに王子自身の自由な時間はほとんどない状態だ。


それでも、それを文句は言えども以前のように投げ出すことなく真面目に努める姿に、王と王妃様が喜ばれているのを王子自身も感じているのかもしれない。


そして敬愛している兄の為ならと、第二王子のラファエル様も王子の勉強の為に協力する時間を惜しまない。



彼の、とても10歳そこらとは思えない博識で深い知識には、専門家の先生たちも絶賛の嵐だ。



「またしばらく、あいつには会えないな」


「・・・・空き時間ができましたら、すぐにお知らせいたします」


「あぁ、頼んだぞ」



会いたい人ができた途端に、自分にその時間がなくなるとは。


だが、その間に自分を鍛え上げておかなくては彼女の周りにいる男どもに勝てはしない。


先ほどエリザベスの部屋で彼女のそばにいたあの男もそうだろう。


気合いを入れて磨きあげなければ、彼女に男としてすらも見てはもらえない。


何せ、最大の敵はあの国の英雄である『ジークフリート=ウルンリヒ』だ。




「・・・・それにしても、さっきの顔は傑作だな!」



自分の言葉と行動に心から驚いた彼女の様々な顔が頭に蘇り、アルフレドは口を手で覆いながら笑いをこらえきれずに吹き出す。


自分に言い寄ってくる貴族の娘はあんな顔は決してしない。


礼儀正しい淑女として教育され、育てられた彼女達は人前で感情をむき出しにするようなことは決してせず、人形のように静かに品良く佇むのが役目だ。


そんな娘達とは比べものにならない嵐のような勢いで自分の中に入ってきて、目に映る全ての感じ方・見方を一気に変えられてしまった。


そんな女は、この先再び出会うのは難しいだろうというぐらい世間知らずだった俺にもわかる。


あんな変わった女は、そうそういない。



「バーチ!父上のところへ急ぐぞ!さっさと終わらせて、空き時間などこの俺が自分で作ってやるっ!!」


「はっ!!」



胸をはった堂々とした姿で、その目をキラキラさせながら、マントをばさっと風にたなびかせてこの国の次期王は玉座の間へとその足を速めた。




王子はよりいい男になって、また登場させられたらと思います!


個人的にはツンプリ王子も好きなんですけどね

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