モブ女子、リアル恋愛ゲームが始まっちゃう?
お読み頂き、ありがとうございます!
お茶会の続きですが、もう誰もお茶を飲んでませんね。
アルフレド王子は赤い顔のまま、グレイの目の前までズカズカと歩いてくるとギロッと強い目線で見下ろす。
「お前は、確か騎士院のところの・・・・・ッ!」
「ーーーーー騎士院で副団長を務めさせて頂いております、グレイ・コンソラータと申します」
アルフレドの登場に、グレイは慌てることなくすぐさま椅子から降りると膝を床につき臣下の礼を取った。
「フン!ジークフリートの部下か」
「ーーーーーはい」
「いいか、あいつは俺の婚約者だ!気安く触れるな!」
「!?」
「・・・・・??」
婚約者?
あぁ、そうだ!
アルフレドの婚約者はエリザベスだ。
この反応はまさか、アルフレドがエリザベスを?
「あっ・・・・!!」
えぇ?!すごい!エリザベスったら!!
グレイさんにラファエル王子に、ま・・・まさかアルフレド王子までーーーーーーッ!?!?
『ーーーーーエリザベス殿』
『え、エリザベート様!ずっと前からあなたをお慕いしておりました!』
『ふざけるな!こいつは俺の婚約者だ!!』
背景として、背中に薔薇を背負った麗しい姿で椅子に腰掛けるエリザベスの後ろに佇む、煌びやかな2人の王子と凛々しい1人の騎士。
すごくいい!!
美形4人の、なんて絵になることっ!!
「・・・・ちょっとクロエ?あなた、なんて顔をしていますの?」
「へ??」
目の前で始まろうとしている、リアル恋愛ゲームのドキドキな予感に全身でときめいていると、隣から呆れ顔のエリザベスと目が合う。
あら?
ヒロインがなぜかご機嫌ななめ?
「あなた、何か勘違いしてるようですけれど、わたくしたちは」
「そうだクローディア!!俺はエリザベスに先日婚約破棄の宣言をして、すでにそれは成立しているっ!!」
「・・・・・・・・・はぁっ?!」
婚約、破棄?
いやいやいや、それ別物語になっちゃうから!
うちはモブだから、悪役令嬢が婚約破棄されて人生を生きなおすのは別のお宅の子ですからっ!!
それとも、ここからはエリザベスの婚約破棄されましたが何か?って別のストーリーのスタートですか?
それも面白そうだけど、主人公のローズがまだ出てもいないのに??
「・・・・・・・エリザベス、さん?」
ど、どういうことですか?!
「アルフレドの言う通りよ。わたくしはすでに彼の婚約者でもなければ、聖女でもないわ」
「はあっ!!??」
ガタンッ!!!
思わず椅子から勢いよく立ち上がってエリザベスに詰め寄ると、エリザベスはその美しい手の甲を静かに私に見せた。
「な、ないっ!!??せ、聖女の印がどこにもないっ!!!」
そんな設定があったことに私自身もだいぶうっかり記憶のかなたに忘れていたが、一番ゲームで大事な根幹だった聖女の証であるその印が彼女の手の甲からきれいさっぱり消えている。
彼女の手を握りあらゆる方向からその手の甲を見つめてその印を探すか、光の加減をどれだけ変えても見つけることができなかった。
「なんでっ?!こ、これって消えるモノなのっ!!??」
「ある朝目覚めたら、突然消えてましたのよ」
「そんなっ?!」
聖女の印があることで、エリザベスは聖女候補として幼い頃からアルフレド王子の婚約者だったのだ。
ものすごく今さらかもしれないが、ゲームの設定がなぜかどんどん壊されていく。
え?なにこれ?
まさかコレ、私のせい??
「だ、だってまだローズ出てないのにっ!!」
「ローズ?あなた、誰のことを言ってますの?」
「いや、あなたの真のライバルにして・・・・・って」
「そうだ!!ローズなんて女は関係ない!!」
「!?」
「これは俺とエリザベス、そしてお前の問題だっ!!」
ぐいっ!!と強く腕を引かれたかと思うと、目の前にはキレイな深いブルーの光が目の前に映る。
アルフレドが私の手を引きながら、腰に反対側の手を当てて自分の方へと引き寄せたのだ。
「・・・・・ど、どういうこと??」
「フン!お前はまだわからないのか?」
アルフレド王子は初めて見るような堂々とした不敵な笑みを浮かべると、私の手をその手に握ったままその場に座り込み、私の手の甲に自分の唇を沿わせる。
「クローディア=シャーロット!アレキサンダー王とその王妃マーサの息子である、アルフレド・ルカ・ド・オーギュストはこの場において、正式にお前に結婚を申し込む!!」
「!!??」
「俺はもう怯えることも逃げることもしない!欲しいものは全力で取りに行くっ!!」
力強い目が、クローディアをまっすぐに見つめた。
な、な、なんだこれはっ?!
目の前にいるのは、本当にあのアルフレド王子なんですかっ?!
驚愕の表情のまま黙りこんだ私を見て口元に笑みを浮かべると、アルフレドはそのままクローディアの体を自分の方に引っ張り、その顔に自分の顔を近づける。
ドンッ!!!
「ちょ、ちょっと!!な、な、なにをしようとしてくれちゃってんですかっ!?」
全力でその体を押しやるクローディアと、それでもさらに近づこうとその体を抱き寄せる為に力を入れるアルフレド王子との攻防が始まった。
「この俺様が求婚してやってるんだ!ありがたく受け取れ!!」
「全力で今すぐお返ししますっ!!」
くそっ!!
なんなんだこれはっ!!
あの、まだ可愛らしさのあったツンツンプリプリ王子はどこへ行ったっ!?
わけのわからない俺様に乗っ取られてないで、今すぐに出てこい!!
「な、なんでいきなりこんな自体になってんのっ!?私のことは庶民だってバカにして、嫌いだったでしょうがっ!!」
「フン、最初はな!だけど、俺はお前のおかげで色んな大切なことに気づかされた!俺が何も見えてなかったことも、本当に大事なことにも!」
「!!??」
ギリギリとお互い?が全力で力を込めながら、アルフレドは熱い眼差しをクローディアに向けてそそいでくる。
ついこの間まで目が合うだけですぐにそらされた状態だったのに、今はこちらがそれをしたくとも強い引力で引き込まれてなぜか離せない。
しかもこの王子、森ではもっぱら私達に守られてばかりで気づかなかったが、自衛の為とかなり鍛えてあることもあって実はかなり力が強い。
その証拠に、どんどんその距離がさっきから縮まってきている。
「そして気づいたんだ。俺は、お前が・・・・・ッ!!」
「!!??」
ぐいっ!!!っとひときわ強く腕を引かれてその距離が一気に縮まり、もうダメだ!!とクローディアが目を強くつむって顔を伏せたその時ーーーーーーー。
「王子といえども、人のモノに手を出すと・・・・・馬に蹴られて死にますよ?」
そばで控えていた、こぶしを強く握りしめていたグレイが動き出したのとほぼ同時に、その声は部屋に響き渡った。
「!!??」
アルフレドの、先ほどまで強く抱きしめていた温もりと存在が腕の中から一瞬で消える。
「こ、これはっ?!」
声のした方に勢いよく振り返れば、そこにはとても見覚えのある姿が彼女を横抱きにしながら部屋の空中にふわふわと浮いていた。
「る、ルーク=サクリファイスッ!!」
「フフ・・・・こんにちは、クローディア?」
紺のローブに全身が包まれたその青年は、自分に向かって大声をあげるアルフレド王子には目もくれず、自分の腕の中であっけにとられた彼女に向かってそれはそれは美しぎる笑顔でもって笑いかけた。
久しぶりに魔導師様が登場しました。
これまでは小出しだった分、これからはがっつり登場していく予定?です




