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モブ女子、見えない想い

本編に戻らさせていただきました!


今回も読んでいただき感謝です!!



王様よりアビゲイル達へと断罪が言い渡されたその夜、ラファエルは母ーーーーアビゲイルの部屋の前に訪れていた。




「母上!!ここをお開けください!!」




ドンドンッ!!




いつもなら自分がこの扉を叩くことなく自ら開かれる扉は、今は何をしても開かない。



今夜が共に過ごせる最後の夜だというのに!



明日にはもうこの国を出て行かなくてはならない上に、罪人を見送りことは固く禁じられている。




「母上ッ!!!なぜ、なぜその声すらも聞かせてくださらないのですかっ!!」



ドンドンッ!!!



玉座の間から戻ってすぐに、アビゲイルは部屋に閉じこもり、誰1人としてその最後の声も姿も見せようとはしない。



「最後・・・・なんですよ?これが本当に、最後かもしれないのに、母上っ!!」



ドンッ!!!!



扉を何十回と叩き過ぎて、ラファエルの普段なら傷一つない真っ白な肌が赤く腫れていた。じんじんと両手のあちこちが傷むが、今はそれよりも母に会えない悲しみの方が強く心を打ち付ける。


いつの間にか流れて止まらなくなっていた涙で、目元も真っ赤に腫れていた。



「!?」



その手に、白く美しい手とともにそっと水で濡らされた白いレースのハンカチがあてられる。



「あ、あなたは・・・・・ッ」



その人は、ラファエルと目が合うとニッコリと美しい笑みをこぼした。








「あの・・・あ、ありがとうございます!」



ラファエルは初めて入った部屋と、目の前の美しい人に緊張から体を強ばせる。


王宮の中だというのにこの部屋には緑が部屋のあちこちにあり、床には水路が流れていてその中にはなんと小さな魚まで見受けられた。


きらびやかなシャンデリアを始めとする、豪華な装飾が多い自分達の部屋とは違い、ここにはロウソクやランプを使った優しい灯りに溢れている。


この場所にいるだけで、自然と心が安らいでいくのを感じた。



「自分の部屋だと思って、ゆっくりくつろいでちょうだいね?」



この部屋の主である、マーサがテーブルに入れたばかりでホカホカの湯気が出ているホットミルクをラファエルの方への差し出す。



「は、はいっ」



先ほどまで赤く腫れていた両手は、マーサの手によって丁寧に手当てされ包帯が巻かれている。


手当てやミルクもすぐ側に付き従うメイドがやろうとしたのだが、マーサは笑顔で自分にやらせてちょうだい?と笑顔で断っていた。


そんな姿にもラファエルがびっくりしてしまうのは、アビゲイルは何をするにも自分の手を使うのをすごく嫌がり、すぐさま反応しないメイドは次の日にはいなくなっているという日常があるから。



「あ、あのっ!」



ほとんど初対面に近いマーサ王妃と何を話せばいいのか分からず、モジモジしていたラファエルだったがマーサへと思いきって声をかける。



「あら・・・・なにかしら?」



深い緑と黄緑の合わさった、ドレスにその身を包んだマーサはラファエルの向かいの椅子に腰掛けると、彼を優しい眼差しで見つめた。



「どうして、母上は僕と会ってくれないのでしょうか?」



「!?」



「僕のことなんて・・・・もう嫌いになってしまったんでしょうか?」




ずっと抱えていた思いを声に出すと、再び涙が滲み出てくる。


嫌になってしまったのかもしれない。


母上に対して初めて逆らった息子を、一番大事な時に味方でいなかった僕を嫌いになってしまったのかも、と何度もそう思っては胸が痛んだ。




『ラファエル、もう大丈夫じゃ。母が治るまでずっと側におるからの』




生まれてからずっと、自分のことを何の下心もなく愛情だけで接してくれたのは母だけ。


父は国の仕事が忙しく、それ以上にその心は兄とその母であるマーサ様に深く砕かれていて、僕が熱を出しても側にいて寝ずの看病をしてくれたのは母だけだ。



その母親を、裏切ってしまった。




「うっ・・・・うぅっ」



声をあげて泣き始めたラファエルに、マーサはすぐ隣に席を移動して包帯に包まれたその手を両手で握りしめる。



「あなたを愛してるから、会えないのかもしれないわ」


「・・・・・・え?」


「母親というものはね、愛する子どもの為ならどんなことでもできるものなのよ。どんなに会いたくても、それがあなたの為にならないとお母様が判断して、心を鬼にしてそれを許さないのかもしれないわね」


「ぼくが・・・・こんなに会いたがっていてもですか?」




母に対して、こんなに自分の思いをぶつけたのは初めてだった。




「人は表に見える姿だけが全てではないわ。大事なのは、お母様ではなくあなたがどうしたいかじゃないかしら?」


「・・・・・ッ!?」


「大丈夫。あなたが心からそれを願うなら、どんな時だってそこへ繋がる道は必ずあるはずよ?」




それならば、ぼくの願いは一つだけだ。


そしてそれを叶えるための道はーーーーーマーサ様の言う通り、1つだけ残っている。




これでは、母にどうにかしてもらおうとして駄々をこねて甘えているのと一緒だっ!




「・・・・・ありがとうございます!マーサ様!おかけで、ぼくのやるべきことが分かりました!」



パアッと暗い影の落ちていたラファエルの表情が明るい笑顔に変わり、そのまま『いただきます!』とマーサの入れてくれたホットミルクを飲んでさらに頬を赤くさせた。



「フフ・・・・少しでもお役に立てたなら良かったわ」



ホットミルクには濃厚なハチミツが入っていてほんのり甘く、ラファエルはマーサから勧められるがままにおかわりまでしっかり飲ませていただいてから自室へと戻る。



自室への道の途中でアビゲイルの部屋の前を通ったが、その時にはもう何も言わずに黙ったまま強い眼差しでその扉の向こうにいるであろう母に笑いかけた。



ここに登場するのはもう1人のお嬢様と迷ったんたんですが、考えるのをやめて任せたら王妃様になりました。


王妃様からしたら、目覚めたら幼い子どものアルフレドがいきなり青年になってるんで、ラファエルにその面影を見て嬉しくなったりしてるかも?なんて

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