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ガラクタピエロと裸足の人魚姫  作者: 刺草イウ
第二章 『ガラクタピエロと猛毒赤ずきん』 
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第6話 仲良しこよし作戦

 辺りに散らばっている落ち葉はカサカサと音を立てながら飛んでいく。吐く息は全然白くならないが、時折吹いてくる強めの風は、僕の体を縮こませるには十分だった。

 クローゼットの奥にしまってあるコートを出すにはまだ早いけど、今日みたいに帰りが遅くなると冬の制服だけじゃ心許ない。なんともまあ、中々気難しい季節だ。


「それでノッキーに頼みなんだけどさ」

「え……」


 校舎を出て早々に橋田が話を切り出してきた。まるでこのタイミングを見計らっていたかのようだ。

 置いてけぼりにされて心が折れているみたいなので、お情けでここまで付き添ったけど、どうやら僕のこの気遣いは良い方には働かなかったようだ。親切というのは必ずしも自分にとってプラスで返ってくるわけではない。


「ハニーともっと仲良くなりたいんだ」

「すればいいじゃん」

「待て待て待て待て! 帰んな帰んな」


 嫌な予感は的中。僕としては捨て台詞のつもりでよーいドンで帰るつもりだったんだけど、流石はサッカー部の主力だけあって反応が早い。


「なぁんだよ?」

「ハニーともっと仲良くできるよう協力してくれって頼んでんだろ?」

「なんで僕が……」


 これっぽっちも頼まれてないんだが?


「な? いいだろ?」

「僕より頼りになる奴なら他にいくらでもいるだろ。仲の良いグループとか野上君とか」

「いーや違うね。それと野上だけは絶対に嫌だ」


 橋田は何かと野上君に対し反応が良くない。

 喋っているとこは見たことないけど、相性が悪いのかな? あまり想像がつかないな……。

 野上君はたまにチクリと刺す時があるけど、基本物腰柔らかで温厚な性格だ。橋田は橋田でコミュニケーション強者だ。最近はウザさが勝っているけど……。


「だからって僕に頼むのは絶対間違ってる。僕と違ってモテる人に頼んだ方がいいよ絶対」

「そんなことねーって! ノッキー以外の適任はいないね!」

「いや僕モテないし」


 橋田を押しのける。


「あん? そうなん?」

「橋田も言ってたろ」

「オレそんなこと言ったっけ?」

「二回は言った」

「ノッキー案外根に持つんだな……」


 余計なお世話だ。全く関わりの無い女子のことなら話くらい聞くかもしれないが、相手はあの麻央だ。これがきっかけで幼馴染と知られでもしたら面倒事になるに決まってる。そうなったら橋田だって良い気分はしないだろうし、この頼みはキッパリ断らせてもらう。

 僕モテないし、女心わかんないし、ノンデリカシーだし……なんだか自分でも悲しくなってきた。


「とにかくやらない絶対やらない」

「そこを頼むよノッキー。マジでハニーのことに関してはノッキーさんが一番適任だって!」

「いーやーだ!」

「今日委員会終わるの待ってあげただろ? ガチのダチを見捨てるのか?」

「ま……小鳥遊を待ってただけだろ」


 一体いつガチのダチになったんだよ。勝手にダチのランクを作るな。そして妙に高いとこに僕を入れようとするな。


「でもそのおかげで一人寂しい思いをしないで済んだろ」

「誰がだ!」


 どちらかというと、彼女に置いてけぼりにされてダメージ受けてるのは橋田だろうに。それと橋田の奴、だんだん上から目線になってきてるのは気のせいか?


「はい決まり。ノッキーはオレとハニーの仲良しこよし作戦を手伝う」

「うるさい。うるさいったらうるさい。僕は絶対やらない!」

「子供みたいこと言うな!」

「うるさいったらうるさーい!」


 どっちがだ。こうなったら僕も何がなんでも引き受けない聞き入れない。我儘だ子供だと滅茶苦茶なことを言われようと、橋田と麻央にはノータッチ。それが最適解なんだ。


「なあノッキー、ハニーの用事って結局何だったんだろうな?」


 こいつ……強引に話題を捩じ込んできやがった……。


「知るか。なんで僕がま……小鳥遊のこと知ってると思うんだよ」


 いちいち『麻央』って口を滑らせてしまいそうなのも面倒くさい。


「なあ……前から気になってたんだけど、なんでノッキーは『小鳥遊』って言い直してんだ? 幼馴染なんだろ?」

「あのさ、女子を名前で呼ぶのは……は?」


 え? 今、なんて言った?


「おーい? どしたノッキー」

「橋田……今僕が幼馴染って……」

「おう、ハニーから聞いてる。家が隣同士の幼馴染なんだろ?」

「はああ!?」


 麻央の奴、なんで彼氏にそんなことバラすんだよ!


「いきなりでけえ声出すなって」

「ご、ごめん……」


 気まずい気まずい気まずい……。


「な? ノッキー以上の適任はいねえって」

「……いつぐらいから知ってたんだよ?」

「ゴールデンウィーク明けくらい」

「結構前だ!」


 じゃあ僕があれやこれ橋田を気遣って隠していたのも、麻央のせいで無意味だったってわけか?


「んで、なんで小鳥遊呼びなんだ? あれか? 幼馴染って知られるのが恥ずかしいとか?」

「ぐぬぬ……」


 この男……僕の気苦労を知りもせず、呑気に勝手なこと言いやがって。

 やはり思いやりや親切は必ずしも良い方向に働くとは限らないんだな。


「ま、いいや。これで心置きなくオレ達を手伝えるってわけだ。幼稚園入る前からの幼馴染って聞いてるからな! ハニーのこと色々教えてもらうぜ〜」


「……橋田はそれでいいのか?」


 僕は気まずいったらない。幼馴染の彼氏の相談相手だなんて。

 それにまだ巨大な爆弾が残っている。麻央が毎日のように部屋に入り浸っているのは絶対に隠し通さないといけない。ただでさえ受験勉強で忙しいのに、こんな綱渡りのような毎日を送らされてたまるか。


「あん? 良いに決まってんじゃん」

「……あっそう」

 このなんの疑いも持ってない顔が腹たつ。


「じゃあよろしくな。まずはオレと連絡先交換しようぜ」


 かくなるうえは……。


「えっと……オレのサインアカウントなんだけど……あ!? ノッキー!?」


 僕はすたこらと逃げ出した。

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