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61話 圧倒的な力

いよいよ始まったダークマスター同士の戦い。


ゲーム本編では最強の呼び声高かった灰直全と、ゲーム本編ではネタキャラだったこの俺、水琴春鷹の戦いが。

しかし、現実的には同じ力を持ったもの同士だ。

大きな差はつかないと思われたのだが、そこは甘い。甘すぎるよ、灰直全。


30体召喚して強気になっていた灰直全も使役されるダークたちも、フロア内に次々と出てくる俺のダークの圧倒的な数に驚きを隠せない。

始め嚙みつきそうなほど凶悪だった灰直全のダークたちは、今じゃ圧倒的な数の俺のダークにひるんだ様子を見せている。

逆にこちらのダークたちが調子づいて、空中で相手のダークをゆすっている最中である。

金出せや、みたいなことを言っているのかもしれない。


本気を出すと決めたからな、相手が圧倒されていようと俺はダーク召還を止めなかった。

そしていよいよすべてを出し切る。


俺が用意してきたダークの数、実に700。相手の20倍にも及ぶ数だった。

ダークマスターにとって、使役するダークの数は戦力に直結する。

そんな大事な点であるにも関わらず、更に言えばこちらに喧嘩を売ってきて勢い込んでいたのに、たったの30とはお笑いだ。


「ば、馬鹿な!?どこにこんなおびただしいまでのダークが!?」

「ふっ、いるところにはいるんだよ」

例えば、先輩たちのアジトとかな。まさにここだ。

先輩たちめっちゃ悪だからね。油断したらすぐダークに憑りつかれる。


そういえば、ゲーム本編でもダークマスターたちはダークを100体ほどしか使役していなかった気がする。多い人で200体ほどか。

700か……少し気合を入れすぎたかな?


見ててください、先輩。授けていただいた力を今日ぶつける相手が出てきました。

少しくらい本気を出してもいいだろう。

相手はゲーム内最強とまで言われた男だ。すぐに倒れるんじゃないぞ。

「後悔はないよな?」

「……そりゃそうだ」


俺もこの巨大すぎる力をぶつける相手がなかなかいないが、灰直全としても全力をもってぶつかれる相手が目の前に現れたのだ。驚愕こそしたけど、当然直後には彼の異常なまでの好戦的な性格が戻ってくる。


「いくぜ!水琴!」

灰直全の魔法クラスは拳闘使いと思われる。そのダークマスターバージョンなので、『黒拳闘使い』といったところか。


拳闘使いの定石として、取り敢えず身体強化をしてくるところがある。

非常にシンプルだが、これが強い。

持っている身体能力が単純にアップされる点や、素早さなんかも上がる点が耐久の低い相手にぶっ刺さる。

俺みたいなモヤシっ子は、身体強化を見れば迷わず逃げるのが賢明だ。

今日ばかりはそうも行かないけど。


予想通り、灰直全は身体強化を使って来た。

黒いエフェクトが付いていることから、ただの身体強化でないことはわかる。


容赦のない物理攻撃が驚異の灰直全が、通常の身体強化よりも強力な黒の身体強化を使うのだ。

しかも今は召喚しているダーク30体がその力を高めている。

そりゃ強いよな、と考えながら俺も魔法の詠唱を行った。

『ダークランブル』

大人しくて緩い雰囲気を持つダークたちを好戦的にする魔法だ。


灰直全の黒の身体強化が乗っていない状態でも、その通常攻撃を受けたら俺の身なんてはじけ飛んでしまうだろう。それほどまでの俺は脆い。

ダークを誰かに憑依させて壁にして戦うにしても、憑依させる相手がいない。

まさにこういった状況下でダークランブルは使い勝手がいい。

ダーク単体で力を発揮し、灰直全の前に立ちはだかる。


しかし、これはあまり効果を発揮しなかった。

確かにそれほど期待してもいなかったが、次々と殴り飛ばされていくダークたち。

ほとんど足止めにすらなりえていなかった。


殴り飛ばされたダークは戦闘を離脱して俺の手の甲のあざへと戻ってくる。

このままでは灰直全が俺のもとに届いてしまう。

どれだけ強力な攻撃魔法を持っていても、その拳が俺に届いた時点で終了だ。


俺の物理耐久値は赤ちゃん並みである。

悪いが、このまま手を打たずに届かせるようなことはしない。


ダークたち本来の力として、ダーク同士が合体できるという特性がある。

先日倒したレベル4ダークも憑依した後で合体しているのだろうと思われる。


止まりそうにない灰直全の前に、100体合体させたダークを立たせた。

100体も合体すると、ダークのサイズもかなり大きくなり、4メートルほどの四肢を持ったダークになる。それが仁王立ちで立ちふさがった。

「なんなんだよこれ……」

見上げる灰直全の顔に何度目かの驚愕の表情が現れる。


俺も初めて見るが、流石に頼もしい。

100体でこれか……。700体合体させたらどうなるんだろうか?


灰直全の強化した拳が次々と合体ダークへと飛ぶが、新しく生えてきた腕でそれを受け止めるダーク。

どこか楽しそうに攻撃を裁いていく合体ダークから唸り声が上がる。

唸り声をあげているのはダメージからというわけではなく、むしろ相手への威圧的行動だと見て取れた。


どうやら最強の盾ができてしまった。

この水琴春鷹の前に、最強の盾ができたということは、それすなわち必勝。


もともと差があったこの戦いだったが、今まさに勝利が見えた。

右手にダークブレイドを生じさせる。


ダークを700体も召喚しているせいか、いつものサイズの三倍の長さがあった。

ほとんど太刀と化したダークブレイド構える。


合体ダークに構っている灰直全は一旦無視して、俺は空中にいるダークたちの始末から入った。

たったの30体だ。

強化されたダークブレイドの前にはなすすべがない。

助けに入りたくとも、灰直全は合体ダークから目が離せない。

というか殴り掛かった拳を腕ごと掴まれてその場から動くことすらできないでいた。


次々と切り捨てられたダークたちが灰直全のもとへと帰っていく。

30体を始末したころには、合体ダークがさらに押し込んでいる状態になっていた。

灰直全の力が弱まった証拠だ。


このまま合体ダークに任せただけでも勝てそうな気がしてきたが、手柄は渡さん!

灰直全を殴り飛ばして、合体ダークは一旦離れさせる。

凄い衝撃だったのか、床でバウンドしながら後方へと弾き飛ばされていた。


同情してやることもないだろう、むしろ追撃だ。

最近覚えたばかりの魔法、ダークスモークを放つ。

倒れこむ灰直全を包み込んだ黒い煙。


魔法の詠唱をして対処しようとしているが、どうやら灰直全は少しばかり煙を吸い込んだようだ。

拳闘使いが使う、魔法抵抗、を使ってダークスモークを吹き飛ばす。

しかし、少しでも吸ったらもうそこで終了である。


ダークスモークは妨害系の魔法に分類される。

吸ったが最後、意識が徐々に薄れていき、深い深い眠りへとついていく。


がくっと姿勢を崩す灰直全。

「何の魔法だ!?」

「もうじきお前は深い眠りにつく。それで戦闘は終了だ」

「ふざけんな、こ……こんな決着!」

「お前が寝た後は、俺の好き放題、やりたい放題だ。負けを認めろ。それとも焼かれないと気が済まないか?」

片手にダークフレイムを生じさせて、どちらで決着をつけてもいいと教えてやることにした。

もう急激な睡魔が襲っているだろうけど、それでも灰直全は何とか立ち上がろうとする。


目を開けているのももうつらいだろうに。

「大丈夫だ、俺は勝負がついたと見ている。ちょっと電流は流すけど、それ以外は何もしない」

「電流ってなんのことだ」

それは先輩方のことに触れることになるので、秘密である。


「まあもう休め。起きたら、また相手をしてやる。今度は友達としてな」

「なっ!?おまえ……」

何かを言いかけた灰直全だったが、睡魔に陥落してその場で倒れこみ、大きないびきとともに眠りについた。


あっけない幕切れだったな。

それにしても、随分と力をつけたなと自分を褒めたい。

合体ダークの強さだけでなく、自身の魔法の強さも高まっているのを実感した。


こうして初のダークマスター戦を俺は圧勝という形で終えることができた。

データのたくさん取れた先輩方も非常に有意義だったとこのこと。


約束通り灰直全には電流が浴びせられた。

器用に、アジトの位置だけ記憶を飛ばしてくれるらしい。

戦闘の記憶は残してくれるあたり、先輩たちの気づかいが素晴らしい。


意識のない灰直全は当然俺が背負って帰ることになった。

瞬間移動スポットは灰直全にIDがないので使用はできない。


ひょろい俺に力仕事をさせるんじゃない。

こういう仕事には慣れていないんだよ。


けれど、戦闘前に灰直全が言っていたことを思い出す。

友達にならないか、というあの発言。

フフフ、俺には蜜の味がするお誘いだ。


なんだか、新しい友達ができそうな気がしてきたので、我慢して背負って帰ることにした。

もちろん途中でタクシーは拾ったけどな!


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