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49話 最強のダークマスター

「思っているよりも状況は深刻かもしれません」

知っている情報を二人にも共有しようと話し始めたのだが、それを三瀬先店子に制された。


「やっぱり情報あるんやな。それよか、敵よりも、まず味方を知りたいんやが?」

そう言って三瀬先店子の視線が足の折れたテーブル、割れた窓、散っているマグカップの破片へと移った。

そうだった、まだこの惨劇の説明をしていない。


二人はまだ俺が癇癪持ちのやばいやつに見えていることだろう。

そんな奴を味方に引き入れれば、勝てる戦いもどこかへ吹き飛んでいってしまうことだろう。


俺は自分の潔白を証明するために説明をした。

「これはダークたちを掌握しきれなかった結果です。新しく覚えたダークマスター専用魔法ダークランブルを使用したところ、ダークたちの性格が凶暴化して手に負えないうちにこんな感じになってしまいました」

「自分のダークを掌握しきれてないって大丈夫かないな?」

三瀬先店子の懸念は当然である。

ダークマスターとして未熟とみられてもおかしくはない失態である。


しかし、その問題は既に解決してはいる。

「少し心配させましたね。ダークとの関係性については改善しました。次、このようなことをした暁には死んでもらうことを言い聞かせておきましのたで」

「ほー、意外と過激なことを言うな」

「優先順位ですよ。前にも言いましたが、俺はこの学園の平和を守るつもりでいます。ダークたちはそのために働いてもらう。しかし、彼らが今日のように暴れて生徒に危害でも加えようものなら俺は容赦しません」

三瀬先店子が雷さんと視線を交える。

何か二人だけに伝わるような意思疎通が行われて、二人同時に頷いた。

合意に至ったと見える。


「よっしゃ、あんたを正式に改造ショップのメンバーに加えるわ。よろしくな」

差し出された手。

素直に俺も手を差し出して握手を交わした。

まさか俺が5人のボスである三瀬先店子と正式に手を結ぶことになるとは思っていなかった。

いや、俺は対等なダークマスターになったのだからそうおかしなことでもないのかもしれない。

とにかく、ストーリーは間違いなくずれが生じ始めている。

否定はしてみたいが、間違いなく変化の中心にいるのはこの水琴春鷹、つまり俺である。


しかし、俺だって黙ってゲーム通りの水琴春鷹になるわけにもいかない。

この変化は正しい道を行ったが故の障害だ。むしろ、こちらこそがゲーム本編通りの内容かもしれない。


「それにしてもあたしのダークたちはダークランブルなんて魔法を覚えないけどな」

「あら?どうやらお互いの知識をまだ少しばかりすり合わせる必要がありそうですね」

「そうやな。でも、多分これは同じや。ダークたちやけどな、あいつらMP回復薬めっちゃ好きやで。あたしのは何か手伝ってもらった時にあげるようにしとるわ」

お?そんなことがあるのか。

これは思わぬMP回復薬の使い道である。

掴まされた不良品200本を上手に使いきれるかもしれない。


試しにダークを召喚してみる。

俺特有の緩い雰囲気をもったダークが一体出てくる。


早速買ったMP回復薬を手にして、ダークに差し出す。

「よかったらどうだ?」

『なにムゥー?』

「MP回復薬だ。飲んでみろ」

『腹に入るなら何でも食べる派ムゥー』

そういってMP回復薬をぐいっと一気飲みしたダーク。


『キョピピピピピ、オイピームゥー』

あからさまにテンションが上がったのがわかる。

部屋中を高速で飛び回り、MP回復薬の入った瓶から残り数滴も飲もうとしているくらいだ。


「しっかりと働けばこれからも安定して供給してやる。仲間たちにも伝えるんだな」

『ご主人様に一生ついていくムゥー』

ダークを吸収して元に戻した。


「MP回復薬の生産はあんたにも教えるし、安定した供給が行えると思うで」

「本当に助かります。支えるつもりでいたのに、先にダークマスターとして助けられましたね」

「こんなん気にせんでええで。それよか、あんたのこと信頼できそうやし、さっき言いかけたおもろそうな話の続きを頼むわ」

面白そうな話と来たか。

やはり改造ショップの連中は好戦的である。


俺はできれば避けたいと思っている争いではあるが、相手も相手だ。

質の悪い二人のダークマスターが最も好戦的なダークマスター三瀬先店子に正面切って喧嘩を売ったのだ。俺の一言二言で収まるようなことではない。


ならば、俺は改造ショップ、三瀬先店子と雷さんの味方に付くまでだ。

今のところ、二人の方が話が分かるし学園を乱すようなこともしていない。


しかし、筒抜黒波は別である。

奴だけは性根が腐っている。

趣味が人の隠していることの暴露である。碌な性格ではない。


ゲーム本編でも、三瀬先店子が闇落ちするような驚愕のイベントがある。

それがあるまで、三瀬先店子は本当に真面目にせっせと改造ショップを盛り上げているだけの少し校則違反している生徒なだけである。


その点、筒抜黒波は違う。

彼はなんの転機もなくもとからあくどい。ダークマスターの力が日に日に増していったため、それを使って自分の趣味を過激にしていっただけなのだ。


三瀬先店子が白から黒に染まったのに比べて、筒抜黒波は黒が真っ黒になっただけである。

スカイフットボールのメンバーである守君がゲーム内でクズだったのだが、現実でも少しクズな匂いがするように、きっと筒抜黒波もゲーム内通りの人物である。

この世界は思えば思うほどファンキャン内の世界を現実にしただけなのだ。


改造ショップは現時点で学園の許可はとっていないものの、叩き潰されるほど悪いことはしていない。

むしろ、自由性を重んじる学園側としては気が付いても良しとするかもしれないような存在である。


三瀬先店子は俺の思惑通り闇落ちを回避し、いまのところ掌握できている。

彼女と手を組んで、筒抜黒波を叩いておくのは学園の平和な生活にプラスかもしれない。


「おそらくですが、俺たち以外のダークマスターが手を組みました。一人は筒抜黒波」

名前を挙げた途端、雷さんがそれをメモした。

もう後には引けないようだ。


「改造ショップの情報を暴けるとしたら彼くらいしかいません。そして、ランカーを現時点で潰せるほどの実力者となると、彼一人では少し危うい。ランカーを病院贈りにした後、たいして期間を開けずに改造ショップに喧嘩を売って来たあたり、大した傷は追っていないと見るのがいいでしょう」

「ランカーはヒールでも間に合わんくらい痛めつけられたって言ってたしな。ダークマスターが手を組んだっちゅうのは正しいかもな」

三瀬先店子の実力、そして俺がランカーになった点からしてもダークマスターに弱者はいない。二人もすぐにその点を理解していた。


「もう一人は?」

「これもおそらくですが、灰直全。かなり頭のネジの外れた男です」


ファンキャンのファンサイトで一度ファン投票が行われたことがある。

その際に主人公文月大夜を抑えて、圧倒的な人気投票数を得て一位になったのがこの男、灰直全である。

かなり異常な性格なくせになぜかモテる設定だし、実際女性ファンがかなり多い。めっちゃむかつく。


水琴春鷹なんか、その人気投票のついでに行われた嫌いなキャラランキングで、灰直全への投票数を上回る嫌い票を得て一位を獲得したんだぞ。

どうなってんだ。

ちなみに、2位が筒抜黒波。3位には守君が入る。


ランカーが病院送りにされたと聞いたとき、俺の頭の中にまず出てきたのが、灰直全の顔だった。

あの暴力性、圧倒的な強さ。そして度が過ぎている熱中しやすい性格。

そして、物理攻撃型のダークマスターである。

何から何までランカー潰しの印象とかぶる。

しかし、灰直全は正面からぶつかるだけで、裏工作をするような人間じゃない。


相手の隠している情報を暴露して退学に追い込むようなことはしないし、できない。

もちろん改造ショップのボスの正体も、むしろ存在すら知らない可能性もある。


だから、裏で操っているやつがいる。

どう考えても、そちらが筒抜黒波である。


二人がどのようにして手を組んだか。

おそらく灰直全の暴力性を筒抜黒波が上手に利用したのだろう。

しかし、なぜ利用したのかという話になる。


そこには、やはり俺の存在がある気がしてならない。

俺と三瀬先店子の接近が、筒抜黒波に知られて、ダークマスター同士の結びつきを強めたか?

いまのところ、考えうるのはそんなところか。


「二人とも聞いた名前やわ。ほんま、舐めたことしてくれるで。正体が分かったからには、もうこっちのもんや」

「正面から当たるのはまずいですよ。下手したらこちらが退学だ」

「そんなことわかっとる。搦手は改造ショップの十八番や」

そうだったなと今更ながらに思う。

ゲーム内で改造ショップへの支払いを滞らせたときの彼らは本当に怖い。

その恐怖を思い出して、俺は今一度ブルりと震えた。


とにかく改造ショップの連中は筒抜黒波と相性が良さそうだった。

しかし、灰直全とはどうなのか?と思ってしまう。


灰直全というのは、色で例えるならば無色透明。

周りの環境で幾らでも姿を変える可能性のある男だ。

今は上手に筒抜黒波に操作されている感が否めない。しかし、あいつはまだ黒に染まり切っていないはず。

きっと引き戻せるはずだ。


俺はちょうどいいことを思い出していた。

灰直全がゲーム内で発言していた内容だ。

彼はこう言っている。

『とにかく強いやつが好きだ』

おそらくその後に、自分と同じくらいというのが続くだろう。

対等な存在が欲しいという気持ちがあるのだ。

周りと比べると、どうしても彼の強さは飛びぬけてしまう。

そういった点で、筒抜黒波は適任だ。

灰直全ほどではないが、他の生徒とは比べものにならない力を有している。間違いなく今現在灰直全に最も近い男である。


しかし、俺はそこに割って入る力がある。

水琴春鷹が本来の道を行った時の恐ろしさをこの世界の連中に教えてやらねばならんな。

灰直全、ゲーム内最強と呼ばれたお前だが、果たして黒炎使いの俺とどちらが強いのだろう。自信は結構あるとだけ言っておこう。


とにかく、レベル上げが必要だな。

荒波も来そうなことだし、しばらく頑張ってみるとしよう。

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