47話 ダークランブル
先輩たちの設けてくれたボーナスステージのお陰でダークたちが一気に集めることに成功した。
部屋で一人の時にダーク召喚をして今何体いるのか確かめてみることにして見た。
ダーク召喚を繰り返すこと、実に26回目でようやく新しいダークが生み出されなくなった。
つまり今俺が吸収しているダークは総勢25体。
部屋を覆う大量のダークたち。
これから一雨と雷が降り注ぎそうな、まるで積乱雲に見えなくもない。
全員にそれぞれ少しずつ特徴があるのだが、いまいち把握できないし把握しようとも思わない。
『ご主人様の部屋だし、おならしちゃえムゥー』
知っている子がいた。彼には是非とも食事内容の改善を薦めたい。
『今度いつテロする?』
知らない子がいますね……。是非ともやめて頂きたい。
『ご主人様ー』
部屋の天井辺りを自由に飛び回っていたうちの一体が近づいてきて、明らかに俺へと呼びかけていた。
会話能力があるはずなのに、何対かは完全に無視の体制をとっているので彼らとのコミュニケーションは少し難しい。
歩み寄ってくるタイプはありがたい。
「どうしたの?」
『新しい魔法を覚えたムゥー?』
「そうだよ、良く知ってるね」
『ご主人様のことはなんでも知っているムゥー』
おっ、かわいいな。
こういうところに愛情を感じてしまいそうになる。
「ダークブレイドっていう魔法だ。ちょうど使ったばかり」
『それじゃないムゥー。もう一つのほうムゥー』
そうだった、もう一つ新しく覚えている。
ダークランブル Lv1 消費MP100
呪文:今こそその闇の力を解き放ち戦って見せよ
ダークフレイム、ダーク召喚、ダークブレイド、ダークランブルの順番からして、今度の魔法はダーク関連と見ていい良さそうだ。
わざわざ声をかけてきたのもそういうことだろう。
「ダークランブルって、どういう魔法なんだ?」
『使ってみると分かるムゥー』
それもそうだ。
実際に説明されても見てみないことには細かいところまで分からない。
せっかくだし使ってみようと思う。
『そうそう、ダーク召喚をしていないとダーク関連の魔法は詠唱ミス扱いとなるムゥー』
「へえー、ダーク召喚が基本となるんだな」
意外な豆知識である。
大事な場面でミスをせずにすんだ。知識をしっかり共有してくれる辺り、いい仲間たちじゃないか。
『ダーク召喚をしていれば、ダーク関連の魔法以外も強化されるムゥー。数が多いほど強化される割合が高くなるムゥー』
またまたすごい知識である。
ファンキャン本編では【黒炎使い】は選択できなかったため、覚える魔法は全て手探りとなる。
思わぬ裏技があったりするのかもしれない。
この知識も知っているのと知っていないのとでは大違いである。
ただし、あまり人目に付く場所では使えないなとも思う。
ダークマスターの存在がまだ世間で悪いと判断されたわけではないが、ダークが周りにいる時点でやばいやつ満載だ。俺ならそう判断する。
25体ものダークを召喚している状態だと、ダークブレイドの威力が凄いことになりそうだ。
ダークフレイムの狼は更にかっこよくなったりするかもしれない。
自分一人での戦闘でも、軽く支援魔法を受けているみたいな状態なのだから、すごい。
ダークマスターの無限の可能性を再度認識することができた。
間違っても変な方向にこの力を向けてはならない。
俺は清く正しくあらねば。
じゃないと本当の主人公文月大夜に討たれる日が来てしまう。
せっかく魔法耐久を選択する道を外れてちゃんと力を発揮できる位置に来たのだ、しっかり世のため人の為に使おうではないか。
使役ダークがもしも市民権を獲得する日が来たら、街の掃除にでもかりだそうと思う。
先輩方も助かるし、街のためにもなる。
みんなハッピーである。
「ま、今はそんなことより試してみるか」
『みんなー、ダークランブルが来るムゥー』
俺の意図を汲んだのか、話しかけてきていたダークが自由に浮遊する皆に声をかけ出した。
全員の視線が一斉にこちらへと向く。
なになに!?
謎のプレッシャーを感じるのだが。
少し魔法をためらってしまうではないか。
あまりこちらを見るな。視線にはそれほど耐性がないタイプです。
『早くしろよ』
キャラと語尾どこ行った!?
主従関係を今一度叩き込む必要がありそうだ。
「いいか、お前たちの主は俺。お前たちは部下だ。俺がダークマスターでお前たちはダーク。俺が吸収してやらなかったら消えていたんだぞ」
『ごめんなさいムゥー』
説教をすると素直に謝るのか。やっぱり可愛んだか、可愛くないんだか。
「気をつけ給え。じゃあダークランブルの詠唱に入りますか」
部屋で一人きりなのだ、せっかくだし声に出して言おう。
声に出して言いたい呪文、ではないが言える時には言いたい。
外じゃ絶対に言う機会がなさそうだしね。
「今こそその闇の力を解き放ち戦って見せよ!ダークランブル!」
呪文を唱え終わると、俺に変化は起きなかったが、部屋で自由に浮遊していたダークたちに変化が生じ始めた。
黒い雲状だった体から、にょきっと人間のような黒い腕が生えてきて、その先に手や指も形作られた。
『来たぜー!ランブルタイムだー!暴れるぜ、みんなー!』
『よっしゃー!クソご主人様の敵はどこだ!?』
『祭りじゃ、祭りじゃ!』
おいおい、どうした!?
逞しい腕が生えてきたのもキモイが、言葉遣いどうしたの!?
俺のことをクソご主人様とか呼んでいるし。敬ってるんだか、馬鹿にしているんだかはっきりして欲しい。
それとムゥーはしっかりとつけて頂きたい。キャラが崩壊しかねない。
全ダークに腕が生えてきて、全員がやたらとテンションが高く攻撃的な性格になってしまった。
なんだか敵を探しているようだが、そんなものはここにはいない。
壁ドンしたやつ、とりあえずやめろ。後で隣人から苦情がくるから。
『なんで敵がいねーんだよ!?カチコミに行くはずじゃねーのか!」
『田中をしめるっちゅう話やって聞いたけどのぉ』
『なんでもええわ!殴らせろ!』
総勢25体ものダークたちがそれぞれおっかない発言をしながら、壁やら家具やらを攻撃しだす。
もうそこら中めちゃくちゃである。
とうとう椅子を掴んだやつが窓ガラスをたたき割りだしてしまった。
窓はまずいって!
絶対にクリスティン先生に怒られる奴だから!
冷蔵庫あさってるやつもやめろ!
ティーカップ割ってるやつは弁償しろ!
トイレに立てこもるな!
「お前たち!いい加減にしろ!力の使いどころなんて今はない、一旦落ち着け!魔法は試してみただけだ!」
『ランブル中じゃけえのぉ、止まらんわ!』
『わりゃ!あっち行っとけや小僧!』
『おい、ブラジャーあるじゃねーか!』
それは先輩方からの褒美だ。手は出させん!
くっそ、呼びかけてもどいつもこいつも落ち着きやしない。
魔法の解除はどうすればいいんだ?
無理やりダーク吸収で落ち着かせるか。
しかし、どいつからやればいい。
頭上を飛び交って好き勝手にやっているこいつらのどこから手をうてと?
あまりの勢いに少しパニックである。
パリンっと何かが割れる音が更に響いてきた。
見ると、そこには割れ散ったマグカップが地面に無残にもたたきつけられた後だった。
あれは、毎晩俺が就寝前に白湯を飲むために使っている大事なマグカップである。
お腹の弱い俺のお腹を毎夜毎夜温めてくれる大事な大事な入れ物。
それを、こいつらは……。
俺の頭の中でぷつっと何かが切れた気がした。
右手の痣に触れながら、魔法を念じた。
ダークブレイド。
部屋の中で黒い炎の剣が俺の手の中に現れる。
一度軽く振って感触を確かめた。いい感じだ。
「……おい」
静かだが、我ながら迫力のあるどすの効いた声が出た。
「一遍、死んどくか?」
暴れ回るダークたちへと黒い炎の剣を向けた。
剣にまとわりつく黒い炎がメラメラと、今にも何かを焼きたがっているかのように熱を放ち続けていた。
『……じょ、冗談だムゥー』
『みんなー、ご主人様に注目ムゥー』
『お掃除、お掃除ムゥー』
……都合のいい態度変更だな。
だんだんとこいつらの本性が見えてきたな。
甘やかしてはならない、本質を理解したので今後の方針を決めることにした。
スパルタだ、こいつらに必要なことは間違いなくそれである。
俺が水琴春鷹の罪を背負うように、こいつらもダークとして人に憑りついて悪さした前科がある。それを継ぐわなければいけないよな。
「いいか、今から言うことは全部しっかり頭に入れておけ。おい、今はおならをするな」
『ご、ごめんなさいムゥー。我慢できなかったムゥー』
「食事を改善しろ。何を食べているかは知らんがな。お前たちはダーク、俺はダークマスター。これは絶対だ。今日は俺に迷惑をかけただけだからまだいいとしよう。しかし、今後他の人たちに迷惑をかけるようなことがあれば、分かってるよな?」
ダークブレイドを向けて、理解させてやった。
みんなコクコクと縦に揺れながら同意を示す。
「俺の言うことは絶対だ。好き勝手に遊びたいなら、決めた日時で遊ばせてやることもできる。しかし、羽目は外し過ぎるな。それと、語尾にはできるだけムゥーをつけろ。素の言葉だとちょっと気味が悪い」
『『『はいムゥー』』』
「じゃあ、理解したのなら清掃に入ろうか」
こいつらがランブルタイムで滅茶苦茶にした俺の部屋の清掃である。
流石に俺の怒りを向けた直後だったからか、全員が素直だ。
これが続けばいいのだがな。
俺も片付けながら、割れた窓などのことを報告しなきゃなと考えていた。
絶対にクリスティン先生にグチグチ言われるに決まっている。気が重い。
そんなことを考えていると、部屋の呼び鈴誰かが鳴らした。
来客である。
部屋の惨状は見せたくないが、怒った近隣に住む生徒かもしれない。
謝罪に行かねばと思い、急いで俺は玄関へと向い扉を開いた。
「よっ、また来てやったわ」
「アイヤー、部屋の中無茶苦茶アルねー」
そこにいたのは、三瀬先店子と雷さん、改造ショップの二人であった。
こんな時間に何の用だ?
外はもう薄暗い。
いや、こんな時間だからこそひっそり会いに来たのか。
要件があることは明白なので、無茶苦茶な状態の部屋へと招き入れた。
まあ、苦情じゃなくて良かったと思う。




