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40話 二人のダークマスター

「戦争なんてしませんよ」

三瀬先店子の圧倒的な迫力の前に、俺はなるべく平静を装って述べた。

「そもそもそちらと違って俺は一人だ。やるにしても戦争という言葉は相応しくない」

「そんなことを言っとるんとちゃうわ」

「すみません。とりあえず落ち着いて欲しかったので、少し話をずらしました」

「はあ?」

先ほどまでの狂気染みた笑顔はだんだんと消え失せていく。

嚙みついたはずの俺が飄々と対応したのが良かったみたいだ。

この後の話のためにも早々に爆発してもらっては困る。


「あんたな、アホなんか、それとも相当度胸が据わっとるんか、どっちや」

「どっちでしょうね」

あくまでペースは握らせない。


「それより、わざわざこうして三瀬先店子先輩が出向いて来て下さったんだ。もっと大事な話をしたい」

「もっと大事な話やと?改造ショップとおたくがぶつかり合うよりも大事な話てなんや?」

俺は視線を雷さんに向ける。

この人がいては少し話しづらいことだ。


視線の意図に気が付いたのか、三瀬先店子はすぐさま口を開いた。

「ああ、こいつは大丈夫や。口は誰よりも堅いし、何よりあたしの男やからな。フィアンセっちゅうやつや」

へっ!?

またまた知らない情報ですよ!


ゲーム内でも二人はやたらと距離が近いなーとか思っていたけど、うそ!?

男女の関係なの!?

顔はなんとか冷静さを保てたが、内面の顔は先ほどから目玉が飛び出しそうなほど驚きの連続である。


三瀬先店子の言葉を聞いて、雷さんが真っ青な顔して顔の前で必死に手を振っているんですけど!?

まさかの意見の相違が起きていますよ!


「そういうこっちゃ。構わんで話してーな」

雷さんめっちゃ出ていきたそうですよ。

いいんですか?


「……雷さんは確かに口が堅そうなので、良しとします」

実際ゲーム内でもそういうキャラだったし、ここは信用しよう。

本人は嫌がっているけど、ボスの指示には従って貰おう。


「改造ショップのトップ、三瀬先店子先輩、俺とあなたが対立すると実はいろいろと不都合が起きるんですよ」

「あたしはそうは思わんな。これまでも邪魔してきた高等部の奴らも全部しばいてきたったし」

「今まではそれで上手くいったかもしれませんが、俺相手ではそうは行かない」

「えらい自信やな。くそったれ一年坊主が」

一旦なりを潜めた、あの狂気染みた笑顔がその顔に戻りつつある。

三瀬先店子の性格、何よりも好戦的だということがこれだけでうかがい知れる。


「悪いけどな、あんたにあたしの相手が務まるとは思えんな。凡人と天才っちゅうのは明らかな壁があるんや。どうあがいても超えられないような壁がな」

「俺が凡人に見えますか」

「はあ?」

空気が凍ったのが分かった。

流石に挑発が過ぎたかな。


ここで戦うとなると部が悪い。

俺はまだ【黒炎使い】レベル4のペーペーだ。

相手は間違いなくレベルでは格上。

相手にはまだ戦うほどの理由がないにも思われるが、ダークマスターたちは揃って少しネジの外れたところがある。

後先考えずに暴発することなんて幾らでも可能性としてはある。


「とりあえず、お互いの下部でも呼びませんか?俺たちは同種ですよ、三瀬先店子先輩」

「同種やと?」

少し恐ろしい気持ちもあるが、俺は右手の痣に触れて魔法の行使に入る。


一瞬構えた雷さんだが、普通の魔法との違いを感じた三瀬先店子に制された。


ダーク召喚!

持っているダーク6体をこの場に召喚した。


もこもこした黒い物体たちが出てくる。

「これはっ……」

「はーん」

驚いてはいるが、流石に何かはご存知な様子の二人。


三瀬先店子も俺を追随してダークを召喚した。

相手も6体。


俺の部屋に蔓延るダークたち。

俺の緩い雰囲気を纏ったダークとは違い、三瀬先店子のダークたちは凄く勝気な感じがする。

なんだかすでに負けた気分である……。


「これで俺が凡人でないことがわかりましたか?」

「ああ、結構や」

「俺たちだけに与えられたこの力を、俺はダークマスターと呼んでいます」

自分の知識っぽく披露するこの心の強さ!


「ダークマスターやと?はん、上手いこと名付けたもんやな」

……褒められると流石に心苦しいです。

「ダークマスターにはこの学園を掌握するほどの力がある。下手したら街ごと、いや国までも」

「……随分詳しいな。まあ、あたしにもその未来は見えているけどなぁ」

「そんな膨大な力を抱えた俺たちがぶつかり合えば、被害が大きくなることは間違いない。できれば、それは避けたいのですよ」

「あんたが舐めたことせん限り、それはないで。舐めたことをせんかったらの話やけどな!」

「この間雷さんを通して牽制したことなら謝ります。しかし、大きな力を持つ者は大抵それを間違った方向に使うものです。それを忠告したかっただけです」

「あんたにあたしの行動を指図されたくないわ」

「そんなことをするつもりは当然ありません。改造ショップの活動にも口を出すこともしません。しかし、出過ぎた行動、例えばダークマスターの力を使って生徒たちに危害を加えるようなことがあったら、俺は黙っていません。言いたいのはそれだけです」


言いたいことを一通り言えたので、少しホッとした。

三瀬先店子が暴走するのを防ぎたい俺としては、必要なことは告げられただろう。


「お断りや」

へっ!?

そんなハッキリと!?


「くどくど喋る男は嫌いや。雷みたいにアタシを強引に口説くような男があたしは好きやねん。言いたいことあったら、ガツンと言わんかい」

流石雷さん。そんな一面があるとは、かっこいいです。


……雷さんがまた真っ青な顔で首を振っているんですけど!?

またも相違が生じていますよ!


「ならば言わせて貰います」

少し怖いけど言っちゃおう。

攻撃魔法値最高の俺が何を恐れるか。

それに最悪清掃ロボットの先輩方は俺の味方のはず!

倉庫にもスッゲー数いるし、数じゃ負けてねーぞ!


「俺は攻撃魔法タイプのダークマスター。全てを焼きつくす黒炎使い。俺が学園にいる間、ダークマスターの力は俺が掌握する。これは個人的な償いであって、真面目に学園生活を送りたいという願いでもあります。ダークマスターの力での揉め事は許しません」

言ってしまった。

言い切ってしまった。

今日一番の、そしてこれからにも響きそうなほど大きなことを。


どういった反応が返ってくるか待った。

やたらと時間が長く感じる。


帰って来たのは、三瀬先店子からの拍手だった。

「あっぱれや。雷とあたしを前に大した度胸や。はったりやってもそういう男は好きや」

「話を聞き入れてくれるんですか?」

「まあな、改造ショップの活動は邪魔せえへんのやろ?」

「もちろんです!それどころか、常連客になりそうな勢いです」

「ならええわ。少し舐めたガキやけど、今のところは味方したる。それにしてもダークマスターだと、それも見破られているとは驚きや。他にもおんの?ダークマスター」

気になるよね、それ。


いる。けれど、どう答えるべきか。

「……まだ調査中です」

「うまいことごまかしたなぁ。そういうことで許したるわ」

許してくれるらしい。

そして三瀬先店子が手を差し出してくれる。

和解、そして協力の握手だと判断しても良いのだろうか。


雷さんを見るとニコリと頷いていた。

そう捉えていいらしい。

無事話し合いが済んで、俺と雷さんも喜びのハイタッチを交わす。


「アイヤー!良かったアルよ!ボスと上客の喧嘩なんて史上最悪アルよ!」

「俺も雷さんと敵対せずに済んで良かったです」

この二人は妨害魔法のスペシャリストだからな。本当にそう思う。


「じゃあ、いつでもまた連絡するアルよ!改造ショップは日進月歩で良いアイテムを開発中アルからね!」

2人は俺の部屋から出ていった。

嵐のように感じる二人を、俺はじっと見守った。


そして、言い忘れていたことを一つ思い出した。

「三瀬先店子先輩!」

「なんや?」

「何かあったらいつでも相談してください。ただでさえ、お互いに少ない理解者ですので」

「はんっ」

三瀬先店子は少しだけ笑ったように見えた。

「アホ、あんたと違ってあたしはフィアンセがいるから大丈夫や」

「そうですか。それなら安心です」


こうして、2人のダークマスターの初対談は無事平和的に終わった。

彼らを制御したい俺にとって、かなり有意義な時間だったといえよう。

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