第11話 ポスドク戦士よ永遠に!
「見ろ! 怪人が大きくなっていく」
巨大化した怪人ガクブセイの足元で、『超遠心!スクロース!』の5人が叫ぶ。
「よし、俺らも、巨大ロボで対抗だ。ホワイト、申請書の準備を急げ!」
「任せて!」
ホワイトは大急ぎで申請書の作成に取り掛かる。
「教授! 申請書の受け取りをお願いします!」
ホワイトスクローは教授に、メール添付で申請書を送りつけた。
「よぉし! しかと受け取ったぞ。いくぞぉぉ! スーパーセントリフージ発進申請書! さいたぁぁぁぁくぅっ!」
バンッ!
教授は、送られてきた申請書に、採択のハンコを押した。
神岡町にある山奥から5台の大きな『専用マシン』が射出される。
レッドスクロー用の『レッドセントリフージ』。
ブルースクロー用の『ブルーインキュベーター』。
ホワイトスクロー用の『ホワイトボルテックス』。
グリーンスクロー用の『グリーンサーマルサイクラー』。
ブラックスクロー用の『ブラックセルソーター』。
この5台だ!
「よしっ! 遠心チューブ。セーーーーット、オン!」
掛け声とともに、5人は、ベルトにはめてあるチビタン(卓上小型遠心機)から遠心チューブを取り出し、天高く、それを掲げた。
すると、5人は透明で巨大な遠心チューブに包まれた。
5本の巨大な遠心チューブは空高く飛び上がる。
「遠心! 合体!」
それぞれが乗った遠心チューブは、『専用マシン』に搭載された。
「よし、いくぞ!」
5人が、息を合わせて、叫ぶ。
「すみません、先輩。お手柔らかにお願いします。すみません」
巨大化した怪人ガクブセイは、へこへこしている。
「あいつは技を盗む。一気に行くぞ」と、レッドスクロー。
「オッケー」とホワイトスクロー。
「わかりました」とブルースクロー。
「はい」とグリーンスクロー。
「おっす」とブラックスクロー。
「よし! 超遠心ハンマーだ! 教授、お願いします」と、レッドスクロー。
「よぉぉし!わかったぁ! 超遠心ハンマー! はぁぁっしん!」
教授は、教授室にあるボタンを押す。
神岡町にある山奥から、大きな『超遠心ハンマー』が射出される。
説明しよう!
『超遠心ハンマー』とは、直径100メートルの超巨大遠心機ローターが、ヘッドの部分についたハンマーである。そのローターは、150000rpm(rotations per minute;1分あたりの回転数)で回転し、計算上2億5千Gの力が加わる。
「来たぜ! 超遠心ハンマー!」
スーパーセントリフージは、自身の5倍くらいはある大きなハンマーを掲げる。超遠心ハンマーは、キュィィーン、と静かな音をたて、瞬時に最高速度に達した。
「光にぃ、なぁれぇぇぇ!」
スーパーセントリフージは、超遠心ハンマーを振り下ろす。
「あ、ちょっと、待ってください。すみません、バランス取るの忘れていました」
怪人ガクブセイの必殺技『遠心機のバランス取るの忘れました』だ。怪人ガクブセイの放つビームが、超遠心ハンマーに当たる。
「なんだ、と!? バランスを取らずに、超遠心だと!? 指導者は誰だ!?」
『超遠心!スクロース!』の5人は、みんな、目を丸くした。
ドガガガガガガガガガガガガ!
超遠心ハンマーが、大きな音をあげ、暴走する。
スーパーセントリフージは、超遠心ハンマーを制御できない。
「うわぁぁぁぁ」
『超遠心!スクロース!』たちの悲鳴は、鈍い振動音に、虚しく打ち消される。
ドガガガガガーン!
超巨大ロボスーパーセントリフージは、粉々に砕け散った。
粉々になったかけらが、風でスッと消える。
「あぁぁぁ。お前たち!」
教授は、教授室で叫び、膝から崩れ落ちる。
(ナレーション)
その後、巨大化した怪人ガクブセイは、放射能(巨大化する前に食らったラジオアイソトープ)の影響で死に至った。なんとか平和は守られた。しかし、5人のポスドク戦士の尊い犠牲があったことを忘れてはならない。
『超遠心!スクロース!』は身をもって、遠心機のバランスの大切さを教えてくれた。
みんな、気をつけてほしい。遠心する際には、きちんとバランスをとって、『遠心チューブ、セーーーット、オン!』だ。
(完)
やはり、学部生が最強ですよ。色んな意味で。
実験器具は正しく使いましょう。
応援ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
幸田遥




