第10話 ガクブセイは最強か
国立防衛研究所内では、5人のポスドク戦士が実験に精を出していた。
「しかしさぁ、実験をやれども、やれども出るのはネガティブな結果ばかり、いつになったらいい結果が出るんだぁ」
と、嘆いているのは、蒼星。
「でも、蒼星くんはまだマシだよ、まだ一年目でしょ。俺なんて、4年目なのに、まだ論文になりそうな気配がないよ」
と、さらに嘆く、白妻。
「大丈夫かなぁ、俺たち。将来が不安で仕方ないよ。
と、さらに被せて嘆くのは、赤星だ。
「ちょっと、ちょっと、先輩方、落ち着いてください。大丈夫っす。なんとかなりますって。ポジティブシンキングっす」
と、ガイア。
「なんで、お前はそんなにいつも、ポジティブシンキングなんだ?」
と、赤星が聞く。
「筋トレしているからじゃないですか? なんか、筋肉がつくと、自信がつきます。筋肉はいいですよ。裏切らないですし」
と、ガイアは胸を張る。
「そうか」と頷く、3人。
ウウゥゥゥ!
サイレンが鳴った。
教授と緑山が大急ぎで、実験室にかけつける。
「よし、お前たち、出動じゃ! 早く、現場に向かってくれたまえ。怪人は、研究室にいるんじゃない、現場にいるんだ!」
5人のポスドク戦士は、大急ぎで現場に向かった。
「ここだな」と白妻。
「あ、みんな! あそこだ!」
赤星が叫ぶ。
5人の目の先には、『怪人ガクブセイ』がいた。
怪人ガクブセイは、サイ○リアでドリンクバーを注文し、テーブルの上で、『細○の分子生物学』を読んでいた。
(作者注; 縦30cm横20cmくらいで、厚さ6cmくらいの大きな教科書です)
「うわぁ。引くわぁ。まぁ、とりあえず、変身だ!」
赤星が言う。
「オッケー」と白妻。
「わかりました」と蒼星。
「はい」と緑山。
「おっす」とガイア。
「よーし、みんな! 行くぞ!」
「えーーーん、しん!」
カチッ!
ギュルルルルル〜。
5人のポスドク戦士は、『超遠心!スクロース!』に変身した。
「培地の赤色は、フェノールレッド! レッドスクロー!」
レッドスクローこと赤星が叫ぶ。
「青い組織染色、トリパンブルー! ブルースクロー!」
ブルースクローこと蒼星が叫ぶ。
「いつか雇われたい、ホワイト研究室! ホワイトスクロー!」
ホワイトスクローこと白妻が叫ぶ。
「緑の蛍光、グリーンフルオロセントプロテイン! グリーンスクロー!」
グリーンスクローこと緑山が叫ぶ。
「心を壊してからがポスドク、ブラック研究室! ブラックスクロー!」
ブラックスクローことガイアが叫ぶ。
「5人揃って、超遠心! スクロース!」
ドガガガーーーン!(効果音)
「さぁ、怪人ガクブセイ。俺たちが相手だ」
レッドスクローが叫ぶ。
「先輩すみません、迷惑かけてすみません」
怪人ガクブセイは、へこへことしている。
「やってやるぜ」
ホワイトスクローが怪人に飛びかかる。
ボゴッツ!
ホワイトスクローの右ストレートが怪人ガクブセイを捉える。
「ちょっと、先輩ひどいですね。パワハラですよ。アカハラですよ。訴えますよ」
怪人ガクブセイは言う。
「ぐっ」
ホワイトスクローはたじろぐ。ポスドク戦士は、パワハラやアカハラなどの言葉に敏感なのだ。
「冗談です、先輩。すみません。あ、実験のやり方、教えてもらっていいですか?」
怪人ガクブセイは、レッドスクローを凝視する。怪人ガクブセイの必殺技『技術を盗む(スキルハンター)』だ。
「なるほど、こうですね。レッドフルオロセントプロテインパンチ!」
怪人ガクブセイは、技を繰り出した。
ボゴッツ!
怪人ガクブセイのパンチは、ブルースクローに当たる。
「うぐっ。こいつ、技を盗むぞ」
ブルースクローはよろめく。
「長期戦は不利だ、一気に決めるぞ! みんな! 必殺武器だ」と、レッドスクロー。
5人は、腰につけていたメスシリンダーキャノンを構えた。
「非密封線源ラジオアイソトープ!」
5人のメスシリンダーキャノンから白色の個体が発射される。
ドギャギャギャギャギャギャギャーーーー!
怪人ガクブセイは、その場で倒れた。
「酸性! 粛清! アルカリ性!」
5人は決めポーズをする。
「まだ、まだですぅ」
怪人ガクブセイはフラフラになりながらも、立ち上がった。
「私は、ガクブセイへの煩わしさの力で巨大化できます。この世のポスドクさんたち、私に、ガクブセイへの煩わしさを分けてください!」
怪人ガクブセイは、どんどんと体を膨らませ、巨大化する。
(ナレーション)
怪人ガクブセイは、ポスドクが持つガクブセイへの煩わしさをエネルギーとして吸収して巨大化する。ポスドク戦士は、このガクブセイへの煩わしさがどれほどのものか、身にしみてわかっている。果たして、『超遠心!スクロース!』は、怪人ガクブセイを倒すことができるのか。次回へ続く!
遠心チューブ、セーーーット、オン!




