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〜5年前〜side圭吾

この章はケイゴ視点で書いています。2人が初めて出会った頃の話です。


 「ハァッ・・ハァッ・・痛ってぇ、チキショウ・・三浦高の奴等今度会ったら・・マジ殺す!」

 さすがに3対1では負けてしまうな・・イテテ・・周りの奴等がじろじろと俺の方を見てやがる・・。クソッ!

 俺は仕方なく、殴られた所をおさえながら、路地裏の方に歩いていった。

だが、そこで俺は思わず目を疑ってしまった。

 俺なんかとは、全く世界が違うとも言ってしまってもいい位の名門藤宮学園の制服を着た奴が、地面に座り込み煙草を吸っていたからだ。

 藤宮学園といえば、1・2位を争うトップクラスの学校だぞ・・そんなお坊ちゃんが・・。

フンっどうせ中身はただの弱虫だ。金でもまきあげてやろうか・・ちょっと脅したら、だまって財布でも置いていくだろう。

 そう思いながら近付こうとした時、目の前で起こった光景を目の当たりにして俺はギクッとし、足がそこから動かなくなった。

 “奴”は持っていた針を突然自分の耳に刺したのだ。ピアスを開けているのではない・・何回も何回も手が血で赤く染まるまで刺していた。

その時の奴は無表情だったが、なぜか怒りが感じられていた。俺はただ、その様子をじっと見ているだけだった。

 その時、自分の耳を刺していた奴の手が止まったかと思うと、奴はこっちを見ていた。

そして、冷めたような目付きで、

 「何ジロジロ見てんだよ・・バカか?テメーわ」

そう言ってきた。俺はやっと我に返ると

 「名門藤宮学園のお坊ちゃんが煙草なんて吸ってもいいのかなァ?黙っていて欲しけりゃここに財布置いて去れや!」

 逆に睨み返し、脅迫したが奴はこれに対して

 「言いたけりゃあ言えよ。別にどうって事ねぇよ」

その時の奴の余裕のある笑顔にまた怯んでしまった。

まるで、怖いものなど何もねぇよという顔だったからだ。

 「このヤロー!生意気な事言いやがって・・」

奴の顔に1発殴ろうとしたが、その前に奴の足が俺の腹に蹴りを入れていた・・。

 「ゲホッ・・痛ってぇ・・」

ケンカでやられた腹にさらに奴が蹴りを入れてきたので、あまりの痛さに思わずしゃがんでしまった。

 そして、奴は俺の前に来て同じ様にしゃがみ込んでくると、

 「言いたけりゃ、言えよ。どうでもいいからさ・・」

そう言い残し、奴は俺の前から姿を消した。

 「何なんだ・・あいつは・・」

タダ者じゃねぇ・・そう思った。

  −言いたけりゃ、言えよ−

そんな事出来なかった。してはいけないとすら思ったくらいだ。

 「あぁ・・痛ってぇ・・あいつとは2度と会いたくないな。次は殺されるかも・・」

そんな恐怖心もあった・・が、そうはいかなかった。

 翌日の夕方、俺はまた奴と出会ってしまった。

しかし、今度は昨日とは比べ物にならないほど、人格が変わっていた。

 「相田くーん!中間考査また1位だったんだって?すごいなぁ、どうしたらそんな風にできるの?」

 「う〜ん、どうって言われてもなぁ・・ただ毎日予習・復習しているだけだよ・・」

この会話を陰で聞いていたが、ただ驚くだけだった。昨日とは全く違っていた。

 制服は、シャツの1番上のボタンを外し、ネクタイもしていなくて、シャツもズボンから出していて、持っていたのは煙草・・そして血だらけだった昨日の奴は、今日は整った制服(昨日の血の付いた制服は?)に眼鏡もかけ、また優秀そうなお坊ちゃん・お嬢ちゃんにちやほやされ、手に持っていたのはぶ厚い辞書だった。

 「何なんだ・・あれは・・」

俺が呟いた時、ふと奴と目が合ってしまった。

 一瞬、ギクっとしたが、奴はそのまま目を反らした・。

何となくホッとしたが、気が付くと奴は再びこっちを見ていた・・。その時の奴の顔は昨日と同じ、冷めた表情で・・俺に笑みを浮かべていた・・。

 奴はそのまま去っていったが、俺はその場から動けなかった。

あいつを本当に怖いと思ってしまった・・。


 それからも・・どんなに奴に会わないようにしても、なぜか奴は俺の前に現れてきた・・。

次回からまた現在に戻ります。今回は真夜の正体を全て描かないで、1部だけ明かしました。真夜はどういった家庭で育ったのかは、後に書きますので楽しみにして頂けると嬉しいです。

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