ヨハン・レーベンの真価は
誤記を修正しました
ごっそり消してしまっていた部分を復元しました
最終章が下書きより増量してしまい、章を分けました。
今回からが、新しい最終章に変更ですが、内容に変更はありません。
水空籠は沼の上を突っ切る。遠隔班が沼の平原側を回る。一番外を近接班が行く。
彼等の故郷、城塞都市国家ナーゲヤリの城壁を離れた時から、三列横隊は崩さず進む。
水空籠を操る班は、僅か三機である。折角七機あるのに、何でかと思うだろう。
彼等は、毒沼の上を渡るのだ。左手からやって来る森の魔獣を処理する間には、正面や後方、更に沼の中から平原の魔獣が襲う。水空籠の的確な操作、それと平行して四方八方からの魔獣の迎撃。それが可能なのは、三名だけだったのだ。
もうお分かりかとは思うか、万能パイロットのゲルハルト・コールが真っ先に選ばれたメンバーだ。魔法を乗せた空気泡を籠から連射する。
彼もジルベルト同様、自身の魔力は少ない。しかし、ヴィルヘルム・フッサール銀紐副隊長の空気泡連射装置には、魔力増幅機能も搭載されているのだ。
彼は、唯一運転しながら、ベストパフォーマンスで迎撃可能な隊員だった。
他の隊員は、運転している間は、能力の半分程度しか活かせない。
「ゲルト、独り乗りで行けるな?」
ジルベルト隊長の打診に、ゲルハルトは二つ返事で引き受けた。
「はい。鴎の崖で実証済みです」
「今回は、機材もグレードアップしてますしね」
水空籠開発者のヴィルヘルムも太鼓判を押す。
あとの2機はどうかというと、それぞれに二名ずつが乗っている。五名ずつの三班体制は維持されたのだ。
「ヴォルフィ、操縦頼む」
「はい」
二人目は、ヴォルフガング・シュリーマンだ。崖登りの驚異的バランス感覚については、今回関係がない。ブーメランは、片手でも扱える。三本を有機的に操るには両手が欲しい所だが。
「同乗はフリッツ。班長頼むな」
「へーい」
薬品マスターで弓の名手である、副隊長フリードリヒ・ブレンターノならば、解毒、魔獣避け、迎撃、先制、なんでもござれの頼れる班長だ。
「最後、ロベルト」
「うす」
操縦者最後の一人は、ロベルト・ヘンデルに決まった。本職の多言語能力は関係ないが、彼は華麗なる短槍遣いなのである。
狭い籠から、片手で繰り出す身の丈程の槍で四方の魔獣を討つ。
「同乗はヨハン」
「了解」
壁の調査では操縦担当であったヨハン。水空籠に自作の笛を固定して、鳥たちを操ることは出来た。しかし、鳥はあくまでも手助けである。ヨハン・レーベンの真価は、変幻自在の棍術にある。
下方の沼から飛び出す刃牙丁班魚を、群ごと沼に叩き返す。森から飛び出してくる、鉄爪猪や鋼刺鼠その他の魔獣は、素早い突きで次々と仕留める。
鳥を遣う姿に気を取られていると、予想もつかない一撃を受けるのだ。鳥を呼ぶ力は異能とも取れるレベルだ。しかし、あくまでも補助と撹乱に使用される事は、銀紐隊内部で自明の理とされていた。
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