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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第四章・死の平原を越えろ
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里帰りは致しません

 フリードリヒ・ブレンターノの妻は、薬屋である。城塞都市国家ナーゲヤリの中心街で、小さな店を営んでいる。2階が住居になっていて、3人の子供達が時折歓声を上げている。


 森の加護が無くなっても、知識は失っていない。それどころか、子供の頃からフリードリヒと共に培った、ナーゲヤリ周辺の薬品材料知識は、年々増える一方だ。


 フリードリヒが、魔物討伐に役立つ薬品知識を中心に探求すれば、妻アイニは、病気や傷口消毒等の日常生活に役立つ知識を研鑽する。

 勿論、夫婦は研究成果の交換もしている。



 アイニは、ナーゲヤリ城塞都市国家医局からも、一目置かれている民間研究者である。コカゲー出身ということで、本人が遠慮して国家資格を受験しないのだ。


 フリードリヒの方は、国家資格保有の公務員だが、所属は医局でもなければ、植物園でもない。城塞騎士団銀紐隊副団長である。

 メインは騎士団員だ。



 実は妻も、フリードリヒ同様闘える。それどころか、夫と組めば無敵の強さを誇るコンビである。薬品を駆使したトリッキーな戦法で、魔獣を一網打尽にするのだ。


 2人揃えば、ジルベルトとジンニーナのタンツ夫妻や、ヴィルヘルムとマリーナのフッサール夫妻にも劣らぬ戦力になる。

 ジルベルトとジンニーナの場合は、単独で他のカップル達の一組分であり、2人揃うと常に過剰戦力の疑いがあるのだが。


 ゲオルク・カントとシャルロット・ハイムのカップルは、シャルロットが情報分析特化の為、やや異なる様相を見せる。シャルロットが前線に出ることは無いだろう。



 さて、ナーゲヤリの港を奪還する為の『モーカル海域奪還遠征』は、青紐隊に任された。

 調査遠征がなし崩しに中止になってしまい、ナーゲヤリ城塞騎士団は、海上討伐のノウハウを得損ねた。ただし、海上討伐に慣れたモーカル魔法守備隊と連携するので、主にそちらの指示に従う事で合意した。


 今回、銀紐隊が完全に海上討伐から外されたのには、理由があった。前回ジルベルトとジンニーナがやや摩擦を起こしたからではない。

 騎士団にとって、より銀紐隊を派遣したい案件が存在したからだ。最早、お使いなどとは言っていられない規模の『雑用』である。


 それは、死の平原横断調査だった。



「アイニ、遠征が決まりそうだ」


 フリードリヒは、子供たちを寝かしつけた後、妻に打ち明けた。


「気をつけて」

「アイニ、子供達を連れて、コカゲーに避難した方がいいんじゃねえかな?」

「いつ町に魔獣がなだれ込むかわかんない状況で、薬屋が逃げるわけにはいかない」


 既に、街の魔獣被害は増加傾向にある。怪我人や、魔獣避けの薬剤を求めるナーゲヤリ住民が、ブレンターノ夫妻が営む薬品店を訪れる頻度は上がった。


「そうは言ってもなあ」

「森の加護は無いけど、薬品散布効率をあげる道具は、ずっと改良を続けてるもの」

「子供たちだけでも」

「バカね。今の山を子供連れて越えられるわけ無いでしょ」


 魔獣が多すぎるのだ。討伐しても、すぐに増える。何処かからやって来る。


「ナーゲヤリで踏ん張るしか無いわよ」

お読みくださりありがとうございます。

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