表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第三章・銀紐隊の仲間達
76/110

海を取り戻せ

 ジルベルトが、珍しく隊長室で決済仕事に勤しんでいる。お使いばかりで、溜まりに溜まった隊長決済が必須な案件に取り組めて、いささか機嫌がよろしい様子。


 隊員達は、現場は勿論、書類仕事も得意なタンツ隊長に、全幅の信頼を置く。彼の弱点は、政治的手腕だけ。偉い人とのやり取りが、壊滅的にヘタクソなのだ。


 銀紐隊員が気を使って、隊長室には入ってこない。ジルベルトは、一心不乱に書頼仕事を片付け、提案書の確認もしている。



 そこへ、ひょっこりとロベルト・ヘンデルが顔を出す。いつものごとく、開けっぱなしの隊長室扉から、遠慮がちに覗き込む。

 ジルベルトは、気配と魔力の動きを察知して、今処理中の書類から顔を上げる。



「ロベルト。帰ったか」


 待ちかねた情報である。世界魔獣討伐会議定例会の報告は、当然、ナーゲヤリ城塞都市国家中央議会で報告される。今回、騎士団長ハインリッヒ・ハインツも出席したので、団長への報告は、省略された。


 帰還から中央議会への招聘への、わずかな暇に、ロベルトは、愛する銀紐隊に寄ったのだ。

 団長の手に負えなそうな、イレギュラー案件は、昔から結局、銀紐隊に降りてくる。今回もどうせ、遠征担当は、銀紐隊になるだろう。


 だから、多少途中のプロセスを省略しても、良かろう。

 ロベルトは、中央議会での決定を待たずに、凡その見通しをタンツ隊長に伝えることにしたのである。



「隊長、ちょっといいすか」


 顔を覗かせたロベルト・ヘンデルは、銀紐隊長ジルベルト・タンツに話しかける。ジルベルトから先に声を掛けられたので、堂々と、隊長室に入ってきた。


「これから会議か?」

「いえ、明日っす」

「そうか。ゆっくり休んでおけよ」

「ありがとうございます」


 ジルベルトは、一度顔は上げたものの、手を止めずにロベルトを労う。



「今、世界中で起こっている現象は、同時多発大増殖って名前が決まったっす」

「そうか」


 名前は別に、どうでもよい。


「各地で近い国同士が協力しあって討伐するんすけど、」

「うん、そうだろうな」

「うちは、モーカル港再開の協力だけじゃ無いみたいっす」

「と言うと?森か?」

「いえ、そっちは、森向こうが、コカゲー説得を目指して、何とかするらしいっす」

「じゃあ、岸壁か?」

「それは、モーカル港再開に含まれますね」

「それで?」

「仮作戦名は、モーカル海域奪還遠征とのこと」


 ジルベルトは、少し苛立って、手を止めた。

 冷酷そうな薄紫の瞳が、厳しくロベルトを見詰める。深い眼窩の底から光る眼は、慣れていても、背筋を伸ばさせるだけの迫力を持つ。


 ロベルト・ヘンデルは、ひとつ大きく深呼吸をしてから、徐に口を開いた。


「死の平原は、ナーゲヤリ単独で担当っす」

次回、薬屋ブレンターノ

よろしくお願い致します。


次回から、最終章『死の平原を越えろ』です。

章分けは、元からあったものではなく、加筆で増えて目次が見にくくなった為に作りました。

そのため、分け方は単純に話数です。

分け方のアドバイスがあれば、教えてくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈i500805|29410〉 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ