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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第三章・銀紐隊の仲間達
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土木魔法使いマリーナ

 青紐隊は、魔法使いの部隊である。ジンニーナには劣るものの、各種魔法の使い手が揃っている。中でも、土木魔法を得意とする3名は、ナーゲヤリ国民から人気があった。


 日常のちょっとした魔獣駆除で、建物や庭が荒れることは多い。瓦礫の撤去やら地ならしやらは、騎士団に依頼するのが一般的だ。その時請け負うのが、青紐隊土木班の3名である。


 道路や公園等の公共施設の場合には、専門部署が派遣される。しかし、個人宅や商業施設は、公共団体が引き受けることがない。工務店が存在してはいるが、才能ある者は、公共団体か騎士団に入る。


 小さな城塞都市国家ナーゲヤリの人材は有限だ。結果、日常の工事は、騎士団に依頼される。それで、青紐隊土木班は、ナーゲヤリ国民にとって、とても身近な存在なのだ。



 今回の崖へ山道を拓く作業員も、この3名だ。銀紐副隊長の妻マリーナ・フッサールを除く2人は男性である。同じ土を操る魔法でも、土木魔法は、男女ともに人気が無い。街の人々から頼りにされているのに、成り手は少ないのだ。


 特に女性には、薬草園業務などが人気だ。造園も本格的なものは敬遠されがち。初めてマリーナを山で見た時、ヴィルヘルムは驚きよりも先に感動を覚えた。


 マリーナは、小柄ではあるが、極端に華奢ではない。女性らしい細身の、溌剌とした容姿だ。青紐隊も、銀紐隊と同様に、行動服は自由だった。山での作業に、マリーナは、丈夫な革鎧に登山靴を履いていた。靴は、ただの登山靴ではない。守りの魔法をかけた、安全靴である。甲には軽くて丈夫な魔法金属が仕込まれているのだ。



 なによりマリーナには、流血耐性があった。魔獣駆除が国民の義務とされるナーゲヤリでも、群れの一斉駆除は、忌避される。見た目も臭いも、一般国民には耐えがたいのだ。

 中でも、巣を殲滅するジルベルトの行動には、精鋭である銀紐隊員達までもが目をそらす。


 ある時、山裾の森林地帯にて、鉄爪猪(テッソウチョ)が暴れまわった。その年は豊作で、山の食べ物も食べ放題であった。食物が行き渡れば、魔獣も増える。もともと狂暴な鉄爪猪が、山を荒し、商人の往来を妨げた。


 通常は、討伐隊が行動終了してから、土木作業班が派遣される。しかし、この時は、モーカル商業組合からの要請と、ナーゲヤリ商店組合からの要望が同時に上がってきたのだ。曰く、


「野菜が痛む前に取引がしたい」

「今年は豊作なので、1往復では無理」

「数回往き来するうちに、作物が痛む」

「早くしてくれ」


 そんなわけで、討伐目的の銀紐隊が殲滅する側から、青紐隊土木班が、山道整備を行う運びとなったのである。

次回、ヴィルヘルムとマリーナ

よろしくお願い致します

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