表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第三章・銀紐隊の仲間達
68/110

卵を残すな

R15 ほんのり血糊 閲覧注意

 堅塩鷗のコロニーがある崖下に上陸したジルベルト達一行は、小型通信装置で山中班と連絡をとる。


「こちら、水上班」


 ジルベルト隊長の呼び掛けに応じるのは、ナイフ遣いルードヴィッヒ・シュヴァンシュタインだ。


「こちら、山中班」

「崖下に到着した」

「こちらも、崖上に到着しました」

「只今より、崖の登攀を開始する」

「了解致しました。援護します」


 山中班が、鷗の魔獣を狩り始めた。崖下に死骸や岩の欠片が落ちないよう気を使う。



 ジルベルトは、風裂魔剣カットを操り、風の加速で崖を駆け登る。ゴツゴツ尖った出っ張りがあるが、頑丈な靴底と愛妻の魔法で守られた足は、平地を走るように崖を蹴る。

 ほとんど垂直に切り立つ岩壁とは思えない自在さで、堅塩鷗を蹴散らしながら駆け回る。



「え~と」

「むう」

「あー」

「うん」


 ジルベルト以外の水上班は、岸に殺到する鷗の塩弾を適当に弾き返しながら、上を向く。4人とも、銀髪を靡かせる鬼人が、全身を血で染め上げる様を、ただ呆然と眺めていた。



 山中班も、上から眺め下ろしながら、隊長の様子を見学している。多少の塩塊を迎撃しながら、ほとんど物見遊山である。


「生態とか、全く関係ないよな」


 細かく情報を集めて翻訳した、多言語マスターロベルト・ヘンデルが、嘆く。


「登攀……???」


 烏遣いヨハン・レーベンが、首を傾げる。山の中に生き残った烏や鳶を従えて、少し離れた場所に立っている。


「あ、巣穴に入った」


 ハンマー遣いミヒャエル・ディートリッヒが、身を乗り出す。



「海から近付く必要あったかな」


 崖下でも、ヴィルヘルムが、隊長の移動方法を疑問視している。


「上から駆け降りても一緒ですよね」


 地図を作ったティルも、閉口した。彼は今、海図の勉強もしている。今回は、海岸線の水深等を記録しただけなのだが、そのうち沖合いまで遠征するかも知れない。


 内陸部に立国されたナーゲヤリは、海の知識と経験が極端に少ない。最近の同時多発魔獣災害は、世界的な共同作戦が準備されている。まだ正式な要請は無いのだが、いずれ大規模な出動があるだろう。

 その時に備えて、海について学んでいるのだ。


 作図の練習という意味では、今回の水上班は、有意義だった。しかし、今回の移動手段について必要性を問われれば、疑問が残る。



「何してるっ!巣は沢山あるぞっ」


 珍しく語気を荒らげた銀鬼隊長から、崖下に通信が飛ぶ。

 第一次調査班では、ヴォルフガング・シューマンが巣穴を調べた。しかし、調査がメインだったので、かなり残したまま。

 第二次では、崖を降りずに周辺の山中を調査した。

 巣穴の掃討作戦は、今回に譲られていた。


「いくら成体を潰しても、卵が残ったら意味がない!」


 ジルベルト・タンツが魔力を乗せた大声で吼える。

 通信機からは、ぐしゃっばりっびしゃっ、という音が漏れ聞こえてきた。


 魔獣の卵は、親が暖めなくても勝手に孵るものが多い。放置したら、危険なのだ。見つけ次第処分するのが妥当である。

次回、飛来


よろしくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈i500805|29410〉 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ