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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第三章・銀紐隊の仲間達
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鮮血淋漓(せんけつりんり)の崖

R15 僅かに血糊、閲覧注意

 僅か遡って、海上班の山中行軍を覗いてみれば、なかなかに落ち着いた様子である。


 新しい水空籠(すいくうろう)は、前回の1人乗りよりは大きいが、やはり折り畳んで背負える。今回も、操縦者ゲルハルトが運搬担当だ。


「やっぱり、ちょいちょい居るっすねー」


 ゲルハルトは、その辺の小石を拾っては、魔法を乗せて藪から飛びだす小型魔獣に放る。他のメンバーも、適宜魔獣を討ち倒す。


「まだ、山で繁殖したわけじゃ無さそうだな」


 ジルベルト・タンツ隊長は、得意の『魔力感知能力』で判断を下す。山の中に、大規模な魔獣の巣は無いようである。



 崖より手前、森側の山腹から、籠に乗り込んだ5人が飛び立つ。中央公園や、銀紐隊の鍛練場で障害物を設置した訓練を積んできた。公園については、環境局造園技術課から、団長に抗議が来たらしいが。


 第一次を経験した籠メンバーは、陸からのサポート無しで海面を目指す。


「第一次と比べりゃ、三分の一以下だな」

「そっすねー」

「まあ、普通の群ですかね」


 ジルベルトの見解に、副隊長ヴィルヘルムと地図製作のティルが同意する。喋りながらも、襲い来る堅塩鴎を駆逐する。

 ティルの鞭で捕らえた魔獣は、ゲルハルトの投擲、ヴィルヘルムの仕込み籠手、ジークフリートの手刀で仕留められる。

 飛び散る鮮血をものともせずに、隊長ジルベルトが、溶解魔剣メルトで灰にする。



 淡々と作業しつつ海原へ降りる5人ではあるが、返り血は崖にも海面にも、また籠にも降りかかる。

 特に、ジークフリートやヴィルヘルムの体術で払われた個体は、ごつごつと尖っ岸壁に叩きつけられるのだ。


 中には、自らの地肉で、ギザギザの岩壁に張り付けられる不幸な個体もいる。岸壁には、所狭しと張り付けにされた魔獣の血が、滴り落ちて行く。鮮血淋漓(せんけつりんり)の有り様に、隊長を除く4人は思わず眼を反らす。視界に飛び交う鷗魔獣をすり抜けて、遠く水平線へと視線を投げる。逃避である。


 だが、死骸をそのまま放置すると不衛生なので、すかさずジルベルト隊長が焼き付くす。灰は、眼下の岩場に降り積もる。



 その後、特に困難もなく、一行は波間に着水する。増えた海の魔獣は、まだナーゲヤリやモーカルの近辺には到達していないようだ。荒波と岩礁は、弱々しい籠に挑みかかるが、狂暴な海の魔獣は姿を見せない。


 5人を乗せた水空籠は、安全に波を乗り越える。荒波も暗礁も、ジンニーナが施した守りの壁には、歯がたたない。


「いやあ、ジンニーナさんの守りを頂いたおかげっすね」


 ヴィルヘルムがしみじみと感謝する。


「それもあるが、魚魔獣の発生地域から外れてるのも原因じゃないか?鷗は、沖合いでたらふく喰って、安全な崖で繁殖してんだろ」


 現に、襲ってこないのは、魚魔獣だけだ。堅塩鷗の繰り出す塩の結晶は、絶え間なく水空籠を狙い打つ。

次回、卵を残すな


よろしくお願い致します

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