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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第三章・銀紐隊の仲間達
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巣を確認

 5人の連携で、堅塩鷗は3分の2位退治された。眼下の荒波に、無惨な残骸が浮き沈みしている。


「ふんっ」


 ジルベルトのひと振りで、炎が遥か崖下に飛んで行く。続けて風裂魔剣カットを振るい、風で炎を操る。

 海面を漂う死骸と、岩場に打ち上げられた、血と海水で濡れそぼった瀕死の魔獣を、一気に焼いてしまう。



「ヴォルフィ」

「はい。そろそろ降ります」


 ヴォルフガング・シューマンは、ブーメランを片付けて崖(はな)に向かう。短い赤毛が、滑るように動く。足場の悪い山の中でも、抜群のバランス感覚だ。

 ほんの爪先、指先だけでも、危なげなく体を支える技術を持っている。



 それを見て、ゲルハルト・コールは、毛むくじゃらの手を器用に動かして、折り畳み式の『飛空籠(ヒクウロウ)』をセットする。四角い箱のような状態から、先ずは横に広げ、そのあとで上に引き揚げる。飾り気の無い、シンプルな編み籠だ。


 この素材は、浮遊する性質がある。浮遊木(ふゆうぼく)と言われる、死の平原に生える妖木だ。からくり技師ヴィルヘルムの操縦装置によって、魔力の無い者でも動かせる。


 乗り物マスターゲルハルトは、強い魔法を使えない。魔法使い専用の、大きな魔力が必要とされる乗り物だけは、操縦出来なかった。銀紐隊に配属されるまでは、そこを悔しく思っていた。

 しかし、銀紐隊で、ヴィルヘルム副隊長と組むことによって、魔力駆動の『魔動式』乗り物も自由に動かせるようになった。



「ゲルト、先に行け」

「はい」


 ティルが振り回す魔法の鞭と、ジルベルトの双剣に守られ、ゲルハルトは、空飛ぶ籠に乗り込んだ。恰幅のよい騎士が1人、立ち乗り出来る大きさである。縁の高さは、ジルベルトなら肩から上が出るくらい。ゲルハルトの場合は、頭がちょうど覗く程だ。


 山賊みたいな髭男が、籠に取り付けられた魔力タンクのレバーに手をかける。籠は、まるで重みが無いみたいに、ふわりと浮いた。木の根が蔓延る地面から、拳1つ分浮き上がると、崖の方へ水平移動する。

 籠の形状から予想された不規則な揺れは無い。安定した飛行で、地面の終点を後にする。


 籠の縁にぐるりと取り付けられた、空気弾射出装置は、自動にしておく。空気は自動で全方位に打ち出される。そこへ、後付けの魔力を、ゲルハルトが乗せる。


 山賊風騎士が、空から開いた道を、すかさず赤毛が降りて行く。時折、片手を離してブーメランを操りながら、ほぼ垂直な崖を這い回る。眼にした状況は、小型の『魔法会話装置』で知らせてきた。大型の物は普及しているが、小型化したのは、銀紐副隊長ヴィルヘルム・フッサールだ。


 ヴォルフガングは、ゲルハルトの籠では近付けない、崖に空いた洞窟にも侵入する。

 通信を聞いて、麦藁色のお河童頭、ずんぐりむっくりな、地図作りのティル・シュトラウスは、紙にペンを走らせるのだった。

次回、船を造る


よろしくお願い致します

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