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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第三章・銀紐隊の仲間達
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第一次堅塩鷗調査班

 その夜、ジルベルトは、赤毛の妻を前にして、決まり悪そうに巨体を縮める。一応は、団長の身勝手な協力要請を拒否したと伝えたのだが。



「ふうん。でも、ジルは最初の班で崖に行くんでしょ」


 ジンニーナは、大変不服従そうだ。


「まあ、仕事だからな」

「少しは休んだらどうなの?」

「状況を確かめておきたいんだ」

「報告聞くだけじゃダメなの?」

「第2班からは、それでもいいんだが」



 ジルベルトは、むしろ隊長だけの調査班を組む方がよいとすら考えていた。折角の隊長会議が、単なる銀紐隊の派遣決議に終わった事を悔しく思う。


「今後の対応を考える為にも、最初は隊長クラスが調査に行く方がいいんだよ」

「そうなの?」


 ジンニーナは、疑わしそうだ。

 ジルベルトは、生まれた国の公共団体に所属している。常に、団体としての行動を視野に入れつつ、真面目な組織的行動をとる。

 個人で活動してきた、放浪の魔女ジンニーナには、その辺りの感覚が理解出来ないのだ。


「悠長に様子見している段階じゃなさそうだからな」

「群れが出る度に、ジルだけが出掛けるなんて、不公平よ」


 今までは、お人好しに協力出動していたジンニーナだが、短期間に繰り返される対応要請で、気持ちが変わったようだ。


「まあ、銀紐はもともと、そういう隊だから」

「へええ」


 食後のお茶を飲みながら、夫婦の食卓に気まずい沈黙が落ちる。




 崖の調査班が組まれると決まった後、銀紐隊長室には、ロベルトからの最新情報がもたらされていた。

 集められた副隊長2名とナンバー4のゲオルクが、険しい顔で報告を聞く。


「広域での多発的大量発生、終息の兆しが見えず」


 国外の通信メディアから、翻訳してロベルトが読み上げた。


「東の大陸では、海岸地方を中心に、魔獣被害が増加の一途を辿っている」


 東の大陸といえば、海の道の起点となる湾岸都市国家ハンセーンが有名だ。他にも、長く穏やかな海岸線に沿って、幾つかの都市国家が存在している。


「また、内陸部にも、大型魔獣が大群を成して現れる、と言う報告が後を経たない」


 海岸地方より頻度は落ちるが、それでも異常な程に短い間隔で、群れが発生しているようだ。しかも、通常は大きな群れなど作らないような種類の魔獣が。



「領海の調査によると、やや水温が高くなっているという」


 ロベルトは、また別の国の報道記事を読み上げる。魔の海域を擁する、南方大陸では、水温上昇に伴い、海の魔獣が増殖しているらしい。それを狙う海鳥の魔獣も、豊富な餌で大繁殖してしまう。


 その一方で、普通の魚介類は激減し、海産資源に頼った国々が大打撃を被っている。


「海で魚魔獣が繁殖し、失業する漁師達は、出稼ぎ労働を余儀なくされている」


 だが、特産物の流通が止まった街でも、関連産業が影響を受けた。海の恵みを受けたおおらかな国々に、恐慌の嵐が吹き荒れている。

次回、断崖の銀紐隊


よろしくお願い致します

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