隊長会議
城塞都市国家ナーゲヤリは、死の平原から人界を守る魔獣防衛最前線である。
国民は、魔獣討伐の義務を負う。その中でも特に能力が高い者達が、城塞騎士団を形成する。志願した隊員もいれば、スカウトされて入団した騎士もいる。
今日は、突然の召集にも関わらず、6つの隊の隊長達が勢揃いした。ハインツ団長の隣には、副団長レオンハルト・ハイネ。それぞれの脇に、新しく任命された副官3名と副団長に付く副官1名が着席した。
幹部6名と向き合うように、殺風景な長机が並ぶ。ナーゲヤリ城塞騎士団の6つある隊の、6人いる隊長が座っている。
赤紐隊は、武器特化。隊員は何かひとつの武器に精通している。
青紐は、魔法特化。銀紐副隊長夫人、マリーナ・フッサールが所属する隊だ。
黄紐隊は、医療部隊である。他の隊と多少は趣が違う。だが、優しいとか、真面目とか、そういった方面で異質な訳ではない。青紐隊と、せっせと共同研究をしているのだ。
今のところは、健康被害も報告されないし、改造魔獣も作っていないらしい。
緑紐隊は、情報特化部隊である。
剛剣遣いゲオルク・カントの恋人、シャルロッテ・ハイムが所属する隊だ。緑紐隊長は、フランツ・プファルツ。騎士団中枢部の腐敗を一掃した立役者である。
紫紐は、体術特化。様々な武術に長けた騎士達が所属する。鉄爪猪に組付く強者達だ。
しかし、そのどの隊を眺めてみても、銀色の胸紐を提げた精鋭達の足元にも及ばない。
ジルベルト、ヴィルヘルム、フリードリヒ、そしてゲオルクの4人は別格だとしても、残る11人もいずれ劣らぬ猛者ばかり。
モーカルとの海上調査に同行した、体術使いジークフリート・エルンスト。ナーゲヤリが世界に誇る、一流の通信員である。
ルードヴィッヒ・シュヴァンシュタインは、数本のナイフを器用に操る。彼の仕事は、書記だ。神速報告書ライターと呼ばれる。
多言語マスター、ロベルト・ヘンデル、華麗なる短槍遣い。国際的にも知られた、語学の天才だ。
鍛冶屋ミヒャエル・ディートリッヒは、ハンマー遣い。大小様々な槌を駆使して、あらゆるものを叩き壊す。通称『解体業者』。本職は、刀鍛冶なのだが。
裁縫屋と渾名される、マックス・ラインラントは、装備品を作らせたら天下一。吹き矢を持たせれば、飛ぶ鳥など敵ではない。
乗り物マスター、ゲルハルト・コール。どんな乗り物も、彼にかかれば、幼児の木馬同然だ。しかも、ゲルハルトが放る投石には、弱いがあらゆる魔法を乗せられる。青紐隊にも、そんな万能魔法使いなぞ存在しない。
烏遣いヨハン・レーベン、幻術かと思う程に変幻自在な棍術を繰り出す。手作りの楽器で、普通の烏や雀の群れを操り、魔獣にぶつけて勝利する。少し不気味な存在だ。
軽業師とあだ名される、ヘルムート・エアハルトは、爆弾投擲が得意だ。ルードヴィッヒの軽やかな投げナイフと違い、豪快に遠投する。強靭な背中から産み出される投擲の威力は、計り知れない。
治癒魔法使いもいる。名前は、カール・ヘーゲル。彼の特技は刺突剣だ。突きの鋭さと手数は、赤紐のレイピア遣いよりも、遥かな高みに居る。
料理人と謡われる、地図職人のティル・シュトラウス。獲物は鞭だ。地図の正確さ、記憶力の確かさは、騎士団のみならず、この大陸随一だろう。
あらゆる段差や垂直な崖を登り、ブーメランで遠近の魔獣を屠るのは、ヴォルフガング・シューマンだ。死の平原と海を隔てる山の、切り立った断崖すら、彼には散歩道に過ぎない。
この銀紐隊15人が集まれば、出来ないことは無いと言われている。彼等には、主要な武器と特技の他にも、様々な技術があると言う。
次回、討伐隊の編成
よろしくお願い致します




