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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第二章・交易都市国家モーカル
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群れ発生の対策を練る

 このところ、群れ発生の間隔が短く、ジルベルトは疲労を感じ始めている。


 都市国家内の群れも、本来なら5~10人で当たる案件だ。銀紐は精鋭なので、3~4人でこなしてしまう。それで、余計に『雑用』として回されてくるのだ。


 効率的に魔法や魔剣で対処する事自体に、ジルベルトは異議を唱えるつもりはない。『魔法のお使い』と称して単独で対処させられても、特別手当てがつかない点しか、疑問はなかった。

 それをいいことに、何でもかんでも押し付けてこられるので、時折、ハインツ城塞騎士団長に不満をぶつける事はあるが。


 だが、今のペースで群れが発生し続けると、近い将来、ジルベルトもジンニーナも、対応しきれなくなるだろう。



「魔獣討伐本舗にも、一般の依頼が増えてきたしね」

「城壁近辺の店からの、壁設置依頼が多いよな」

「うん。定期的に点検すればいいから、楽ではあるけど」


 死の平原側にある城壁近辺には、民家がない。しかし、店はある。全国民に魔獣討伐を義務付けるナーゲヤリでは、武器や防具、解毒剤等の専門店がいくつもあった。

 特に、壁を越えて鳥の魔獣が襲う城壁付近は、咄嗟の需要があるのだ。



「銀紐全体も、相変わらず面倒な案件ばかりだしな」


 別段、他の隊がサボっている訳ではない。ハインツ団長浮気騒動の時には、本部の腐敗が炙り出された。しかし、怠けていたのは本部の事務仕事担当者だけ。

 それだって、現場には影響を与えるのだが。現場の隊員達は目一杯働いているので、文句は言えない。



(帰ったら、団長と話さないとな)


 ジルベルト銀紐隊長は、ナーゲヤリに帰国後、報告する時は、勤務体制の見直しを提言することにした。



「確かに、群の発生頻度が高すぎるな」


 珍しく、ハインツ団長はジルベルトの主張を認めた。


「海からも平原からも来るんじゃ、人手が足りない」

「緑紐の報告はどんなです」

「明日、隊長会議を開くか」


 なかなかに唐突な発言である。

 現場で見せるハインツ団長の『采配』が発揮された。それほどに差し迫った状況だと言うことだ。


 主に、ナーゲヤリ城塞騎士団長ハインリッヒ・ハインツの婚約者、クララ・シュタインベルクの安寧な生活が脅かされる、という意味に於いて。


 何しろ、ハインツ団長の行動は、クララ・シュタインベルクが安全に暮らせるかどうかを唯一の指針としている。クララの平和の為だけに生きていると言っても、過言ではない。


 大抵の案件は、ジルベルトに振って終了だが、手が回らないとなれば、クララの危険が増すのは必至。

 早急な対策を取りたい団長であった。

次回、第3章 銀紐隊の仲間達

隊長会議


よろしくお願い致します



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