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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第二章・交易都市国家モーカル
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モーカル魔法守備隊との合流

 ナーゲヤリ城塞騎士団銀紐隊員達の参戦で、港の堅塩鴎(カタシオカモメ)は、かなり減ってきた。前も見えないほどだった港の空が、多少は見通しが利くようになった。


 鳥の魔獣に集中していたジルベルトだが、ふと、ジンニーナ以外の魔力を感知する。どうやら、治癒魔法を使っている人がいるようだ。

 銀紐隊長は、ちらりと妻の様子を確認し、知らない魔力の方へと足を向ける。


 双剣と鎖分銅で、魔獣の血と塩を切り分けながら、ジルベルトは、大股で歩く。特に言葉を発することは無かった。しかし、3人の部下達は、迷わず隊長に着いてゆく。



 ヴィルヘルム副隊長は、仕込み武器を使わず、腕を横に払う。白い鴎の魔獣が、数羽纏めて首を折られる。優しげな雰囲気からは、想像もつかない雑な対応だ。

 フッサール家は、妻のマリーナも豪快な土木魔法を使う。彼女は、小柄で愛らしい女性である。


 続く通信員ジークフリートも、またとない硬度を誇る籠手で、群がる堅塩鴎を打ち落として進む。

 彼等が港に着いたとき、海側から飛んでくる鴎魔獣は、きりがないようにも見えた。が、4人のナーゲヤリ騎士の活躍で、確実に数を減らしている。


 ルードヴィッヒ・シュヴァンシュタインは、飛んでくる塩の結晶を、相変わらず的確に弾き返す。堅塩鴎が繰り出す塩の(つぶて)を弾き飛ばしても、逃げ惑う人々には当たらない。


 2人の籠手使いを飛び越えて来る魔獣本体は、打ち返す塩とナイフで同時に退(しりぞ)ける。ナイフは数本あるのだが、適宜回収しつつ、まるで自分の指先であるかの如く操っている。



「デ・シーカ隊長!」


 銀鬼が、ようやく姿を捉えたモーカル魔法守備隊長に声をかける。港は、鴎の羽音と、喧しい鳴き声で、頭が割れそうな騒音に満ちている。

 普通に叫んだくらいでは、かき消されてしまいそうだ。そこで、ジルベルト・タンツ隊長は、愛妻ジンニーナに教わった、魔力を乗せた声を使う。



「タンツ隊長」


 ユリウス・デ・シーカ魔法守備隊長も、魔力を利用して声を響かせる。流石のコントロールで、落ち着いた声なのに、きちんとジルベルト達に届く。


 この技は、ひとつ間違えると轟音魔力兵器とでも言うべき事態を引き起こすのだが。デ・シーカ隊長程ではないが、ジルベルトもなかなかの仕上がりを見せた。大魔法使いジンニーナの魔力と、常に循環しあっているからかもしれない。


「ジンニーナさんは」

「治癒魔法を使ってます」

「心強いです」


 隊長始め8人の隊員が、様々な魔法を駆使して、桟橋に陣取っていた。あと2人、治癒魔法使いと水魔法使いのコンビが、港全体を駆け回っているという。


「ここを離れて、寧ろ街への出口に回りましょう」


 沖の空を見やると、ジルベルトが決断した。新手の堅塩鴎は、そろそろ尽きる気配がしたのだ。

 桟橋で全く食い止められていない8人が、これ以上この場に留まる必然性はなさそうだとの提案だった。

次回、調査は延期


よろしくお願い致します

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