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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第二章・交易都市国家モーカル
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血みどろ下山

R15 微かな血糊、閲覧注意

 ジルベルトの溶解魔剣メルトが、寄せ来る魔獣の波を砕く。あらゆる魔獣の体は、切り裂く側から焼けてゆく。

 血肉は燃え尽き、生臭くはない。しかし、血で固まった毛は、焼け焦げて周囲に嫌な臭いを流す。


 メルトの熱は、魔法で調整可能である。煙を出したいとき、炎をあげたいとき、一瞬で灰にしたいとき。各々の対応が出来る。


 ただ、灰にするほどの温度にすると、魔力がそれなりに消費される。風裂魔剣カットで細切れにしてから焼く方が、効率的だ。

 今までのジルベルトは、ほぼその対処法を採用してきた。



(最近、前より調子がいいな)


 銀鬼と呼ばれる銀紐隊長ジルベルトは、妻ジンニーナと出会ってから、以前より長時間、高温モードを使える気がする。

 これは、魔法使い特有の『伴侶の魔力循環』という現象なのだが、ジルベルトは知らなかった。


 銀鬼隊長は、魔剣使いであり、広義の魔法使いだ。しかし、魔力が少なく、魔法使いとしての修行をしたことはない。魔法使い特有の現象や体質については、よく解らないのだった。



「ジルっ」


 ジンニーナが、いつになく焦った声を出す。同時に、ジルベルトの全身に魔力が漲った。


(なんだ?ジンの魔力が満ちていく)


 初めて出会って循環し始めてから、ずっと感じていた愛妻の魔力。それが、急に多く流れ込んできた。


「全力で大丈夫よ!」


 頭上から、堅い木の実や魔獣が投げ落とされる。多手猿(オオテザル)の群れだ。投げられる魔獣は、落ちながら互いに牙を剥く。そのため、木々の上からは、赤や紫色をした魔獣の血が、雨となって降り注ぐ。


 ジンニーナが水分も弾いたので、壁の内側にいたモーカル人2人は、無事でいた。壁の外で攻撃に奔走するジルベルトを守るのは、何時ものように、無害化程度の弱い壁だ。

 頭の天辺から爪先まで、魔獣の血に(ひた)されていた。



 多手猿は、青い猿だ。眼も青く充血している。血には、猛毒が含まれる。一瞬で勝負をつけないと、切りつけた傷から降り注ぐ血の毒に(おか)されてしまう。


 多手の名前通り、長い爪のある手が四対ある。細長く小回りの利く体型だ。枝々を飛び回り、死角から爪を振るう。頸や心臓、あるいは腹を抉られたら、一貫の終わりである。



 ナーゲヤリ城塞騎士団のタンツ銀紐隊長は、投げ落とされた魔獣の死骸を焼き捨て、その灰を蹴立てた。爪先に力が籠る。膝を曲げ、筋骨逞しい巨体が一旦沈む。

 思い切り地面を踏みしめて、銀髪の悪魔が飛び上がる。木の幹に足を着きながら、ジグザグに駆け昇って行く。


 今回は、カットの風が切り裂くことはない。梢に群がる猿達が、魔剣の起こす竜巻に捕まって、1ヶ所に固まる。

 多手猿が掴んでいた、氷尾長(コオリオナガ)万力蛇(マンリキダ)も、そのまま集められた。


「はっ」


 ジルベルトが息を吐くと、薄紫の眼が、凶悪な光を放つ。

 猿達は、一瞬で灰になる。灰は、風を操り、地面に落とす。軽く穴を空けて埋め、ジンニーナが水をかけた。


「今のうちに一気に降りるぞ」


 いつまた、死の平原や空から、魔獣の群れが押し寄せるとも知れない。一行は、できる限りの速度で、麓を目指すのであった。

次回、モーカル人の到着


よろしくお願い致します

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