血染めの土嚢袋
R15 血糊少なめ、うじゃうじゃ注意
今回は2話です
R2/9/10 23:10, 9/11 0:00
水場の近くにある用具倉庫から、園長が走ってきた。猫車に乗せた土嚢袋の束は、倉庫の入口に放り出したようだ。
「ああ~、処分は植物園の外でして下さるんじゃ」
水場と謂えども、植物園敷地内である。作業もする。周辺の土が、魔獣の血液で汚染されては叶わない。
「確認不足でした」
水場の近くに居た職員には、確認したのである。しかし、ジルベルトは、無用な争いを起こさない男。ジンニーナは、今まで自由に生きてきたので不満そうだが。
ジンニーナは、改めて周囲を見回す。
「ねえ、焼却炉の近くはどう?」
「灰をどうする気ですか」
「中和すれば、肥料になるでしょ」
「大量ですよ」
イライラと切り返す園長に向かい、ジルベルト・タンツが口を挟む。
「大量?」
「蛇は、たくさん居るみたいなんですよ」
その情報は、初耳だ。どうりで、袋を大量に積んでいる筈だ。
「情報は、最初に正確に伝えてくださいませんと、危険です」
銀鬼タンツの眼光に、園長が怯む。
「せ、正確にお伝え致しましたが」
「大量とは、伺っていません」
「特定出来ないとお伝えしましたよね?」
拉致があかない。
ジンニーナが、無言で手をあげる。
「あっ、ジン、待て」
ジルベルトの制止は間に合わない。赤毛の魔女は、個人主義なのだ。理不尽など、無視である。
「ぎゃあっ」
「何をなさる」
近くにまだ居た職員と園長が、怒声をあげる。
ものすごいスピードで、万力蛇が、ジンニーナの出した魔法の壁に向かってやってくる。
近寄ると眠る仕掛けも、魔法に仕込んであるらしい。枯れ枝のような魔獣が、ジンニーナの壁の前に、うじゃうじゃと積み重なって行く。
ジルベルトは、それを見て、倉庫の入口に放置されていた猫車を押してくる。土嚢用の丈夫な麻袋が、山と用意されていた。
「うわぁ」
水場の上に枝を出す木から、ボタボタと眠った蛇が落ちてくる。園長達は逃げ出した。
「中和剤よろしくねー」
ジンニーナが、大声で叫ぶ。
その間にも、万力蛇は、積み重なって行く。
ジルベルトは、蛇を次々袋に入れて行く。守りの魔法で保護されているので、魔獣だろうが手掴みである。
いっぱいになると、口を閉じて、猫車に乗せる。園長は、反対していたが、構わず焼却炉に向かう。この量を植物園の敷地からだすならば、環境局に許可申請が必要だ。
処分はすぐにしたい。敷地内なら、今出来る。
ジルベルトは、愛剣メルトとカットを駆使して、眠らせた万力蛇を、袋ごと切り刻む。万力蛇の血は、紫である。したがって、辺り一面紫色の海である。
守りの壁は、有害なもの総てを阻む。しかし、物理的な壁ではない。守りの壁で、無害となった蛇の血は、ばしゃばしゃとジルベルトに降りかかる。
(これを街中に持ち出してやれと?出来るか)
銀紐隊長は、不機嫌を露にしながら、メルトをふるう。紫色の血生臭い塊は、瞬時に灰と化す。
すかさず、ジンニーナが、かべで囲って、風で撒き散らされないようにする。
「中和剤お願い!!」
ジンニーナは、声に、こっそり命令の魔法を混ぜる。彼女の得意技は、守りの壁だが、他の魔法も少しは使える。蛇に使った眠りの魔法や、今使った命令の魔法等、いろいろある。
何とか園長にサインをもらい、ジルベルトは終了報告する為に、騎士団本部まで出向く。
「ジンは帰って休んでろよ」
「ありがとう。買い物しとくね」
無造作に拭った銀鬼の顔は、まだ紫の血で、斑染めになっている。
「あとでね」
「ああ、家で」
2人は軽くチュッとして、各々の方向へと歩き去った。
次回、ハズレの宿屋
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