表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
第一章・魔獣防衛都市ナーゲヤリの人々
12/110

溝鼠の増殖

今回は、2話です


R2/9/7 0:00,1:00

 鋼棘鼠(コウシソ)は、山の魔獣である。全身から刺が四方八方に飛び出す。尻尾からも飛び出す。


 拳二つぶんの丸々太った体には、固い灰色の毛がびっしりと生えている。眼は血の色、裸の尻尾は黒と黄緑の斑。この尻尾は毒があり鋭くうねる。



(鋼棘鼠(コウシソ)か。厄介だな)


 銀紐隊長ジルベルト・タンツは、本部から回された仕事の内容を確認していた。彼は今、新婚生活1週間目を迎え、そろそろ新しい生活に慣れはじめて来た頃だ。



(討伐前に紛れ込んだ奴に増えられたか)


 最初の2・3日は、それはもう超集中で仕事を終了していたが、最近はやっと、少し早いくらいになっている。


 他国との共同作戦などという、200年ぶりの大仕事を終えた後でも、淡々と実直に与えられた仕事をこなす。


(誰が行くかな)


 銀紐隊は、1人一芸の特務部隊だ。吹き溜まりとか雑用隊とか、あからさまな悪口を言われる。しかし、実際は、引き抜かれて特別に編成された、ナーゲヤリ城塞都市国家の精鋭部隊である。


「フリッツ!いるか」


 副隊長室は、壁を挟んで隣だ。2人いる副隊長のうち、ヴィルヘルムは本日練兵当番なので、居るとすればフリッツ1人。ジルベルトは、壁越しに大声で呼び掛ける。


「今行きまーす!」


 叫びながら、部屋を出る音がする。程なく、開けっ放してある隊長室の戸口に、小男が真面目な顔を出す。薬品マスター、毒矢遣いのフリードリヒ・ブレンターノだ。


「お前、鋼棘鼠(コウシソ)どうだ?」

「どうだ、とは?」


 ジルベルトは、本部からの要請書を渡す。


 フリードリヒ副隊長は、しばし紙面を睨んでいたが、


「こりゃまた、なんとも」


 目撃回数が激増し、目撃区域は一定しない。1度に1匹しか目撃されていないが、その多くは、昼である。本来の活動時間は、深夜から早朝。


「やべっすね」


 増殖の気配がする。


「行けるか?」

「1人じゃちょっと」


 鋼棘鼠(コウシソ)は、偵察に1匹走らせ、数匹から数100匹の群れを守る習性がある。偵察の1匹に、下手に手を出したら囲まれる危険があった。


「囲まれるとなると」

「守りがありがてぇっすね」


 2人の目が合う。


「あ、いや、そんなつもりじゃ」


 フリードリヒが口ごもる。


 守りと言えば、銀鬼ジルベルトの新妻、『鉄壁の魔女』ジンニーナである。しかも、彼女の壁は、罠としても使える事が、先日の魔獣討伐で証明された。


 そして、まさにそれは、フリードリヒ達ジルベルトの腹心3名にとって、ちょっとした悪夢であった。


 赤毛の大女が放つ絶大な魔力に惹かれて、魔獣の大群がやって来る。入り乱れて疾走する魔獣が、次々に壁にぶつかって行く。その光景は、暫く、赤色見ると避けたくなる位に、強烈だった。



「民間協力もありだな」


 隊長が乗り気になってしまった。


「あ、いや、青紐に協力要請を」


 青紐隊は、魔法部隊である。守りの魔法使いも、当然いる。


「いや、ジンも、何かナーゲヤリで始めたいと言ってたんだ」

「はあ」

「添付資料が正確なら、下水道が本命だな」


 小男フリードリヒの抵抗虚しく、鉄壁の魔女の参加は決定したようだ。



「まずは調査してみないと」

「俺も行く」

「真面目に仕事してくださいよ」


 ジルベルトとジンニーナの出会いを思いだし、フリードリヒは、苦い顔をした。

次回、下水道を掃除する


よろしくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈i500805|29410〉 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ