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雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
最終章・未知の領域
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死の平原の向こう側

 川を越えると、騙されたように魔獣が減った。左手の森は川を挟んでまだ少し先まで広がってはいる。森のあたりの川幅は狭い。源流となる湧水は、森のなかにあるのだろう。


(次回の遠征は森の広範囲探索になりそうだな)


 まだまだコキ使われそうな、ジルベルト達ナーゲヤリ城塞騎士団“雑用隊”銀紐である。



 刃角鹿(はかくか)鉄爪猪(てっそうちょ)等の大型魔獣は、狭い川を軽々越える。だが、繁殖することが出来ない。

 川の側に生える植物には、浄化作用が備わっていた。浄化能力がある川の水で育つからだ。

 その植物で育つ平原の動物を食べると、魔獣は苦しんで死ぬ。


 ジルベルト達はその情景を目の当たりにして、植物園の協力を仰げばナーゲヤリ城壁付近を徘徊する魔獣を一網打尽にできるのではないか、と思い付いた。死の平原全域とまではいかなくても、城壁付近くらいなら実現出来そうである。


 定期的に水の採取や浄化作用を持つ植物を採集に出掛けるのは、ジルベルト達で殆んど決定だ。



 2日ほど楽な行程を経て、砦に到着した。もっとも、ジルベルト・タンツ隊長率いるナーゲヤリ城塞騎士団銀紐隊の面々には、死の平原を踏破する事すら「楽な行程(おつかい)」ではあるのだが。


 砦は丸木組の櫓に毛が生えたような造りであった。周囲に巡らされた塀も、先端を尖らせた杭を隙間なく並べただけのものでえる。入り口には、滑車を走るロープで上に開く丸木の柵が設置されている。柵には小さな長方形の除き穴がくり貫かれていた。



 砦から数メートルの所で、ジークフリートは砦の通信員に連絡を試みた。砦がわの通信機材は最新ではないがそこそこ新しいものらしい。連続通信可能時間も中々に長く、音質もよい。聞き取りやすく雑音が混じらない魔法通信装置だ。


 この装置は、映像を伝えることは出来ない。ナーゲヤリとモーカルが山で共同討伐したときに使用されたタイプである。一世代前の『魔法会話装置』だ。

 もっとも、世界水準で言えば、以前先端技術と言っても良い装置ではある。


 全世界規模での同時多発増殖が発生した為、ナーゲヤリ銀紐隊の通信器機は、神速進化を遂げていた。

 ジークフリートとヴィルヘルムが知恵を出しあって、毎日毎晩通信技術が改善されて行った。いま、死の平原を進むうちにもマイナーチェンジを重ねている。そんなの、追い付けと言う方が無理な話なのだ。



「そろそろ着きますよ~」

「へえ、見えてまさぁ」


 間違えて弓を射掛けられないように、一行の風体を細かく説明する。目視可能な範囲に入ったので、彼方も物見から様子を観察しているようだ。


 いいかげんお互いの顔を見飽きていたので、ジルベルト達は他の人間に会えると思うと、自ずから足取りも軽くなるのであった。

お読み下さりありがとうございます

次回、最終回



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