表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑用騎士ジルと魔法のお使い  作者: 黒森 冬炎
序章・魔法使いの結婚
10/110

城塞都市国家へ向かう

今回は2話になりました。


R2/9/6 14:00,15:00 です。

 撤収が始まると、ジンニーナ・ロッソは、当然のようにナーゲヤリ魔獣討伐隊に着いて来た。と、言うより、下山でも殿(しんがり)を勤めるジルベルト・タンツと、勝手に組んでいた。


 彼女は、流しの大魔法使いである。気分次第で、仕事を選ぶ。誰も咎めることは出来ない。犯罪者でもないし、同行拒否のしようがない。ハインツ団長は困り果てていた。


 2人は、離れようとしない。目に余るようなベタつきでは無かったが、団長と3人の銀紐隊員達は、別の心配をしていた。



 ジルベルトとジンニーナは、今回の討伐隊に於ける、頭ひとつ抜けた実力者2人だ。万が一、魔獣の生き残りが出ても、瞬時に対応するだろう。


 しかし、2人のご対面を目撃した者達には、不安しか無かった。


 既に新婚気分で有頂天になった、この鬼才カップルは、やる気を出しすぎるのである。オーバーキルなのである。辺り一面血の海が出来てしまう。



「魔獣も居ないし、普通の獣もかなり減ってるな」


 剛剣を鞘に納めたまま、ゲオルクが、副隊長2人に話しかけた。辺りは、引き裂かれた大木や、転げ出た大岩による惨状である。討伐隊は、苦労して、足場の悪い山道を降って行く。



「いや、まだ魔獣いたら、びっくりだろ」


 ヴィルヘルムが言えば、フリードリヒは、淡々と見解を述べる。


「獣は魔獣にやられたんだろうな」

「う~ん、しばらく肉は鶏だけかぁ?」


 ヴィルヘルムは、情けない顔をした。



 ジルベルト達銀紐隊が住む、城塞都市国家ナーゲヤリは、血気盛んな魔獣防衛都市である。山を背に魔獣蔓延る平原を睨む要塞。住民は総て武装している。魔法使いもいる。そして、牧畜の気配は無い。


 かつては、牛や羊の飼育を試みた事もあるらしい。しかし、今では、肉や乳製品を始めとした食糧品の殆どを、山向こうにある交易都市国家モーカルに頼っている。


 だから、全体的に高い。腕に自信のある者は、休日は山に入って、肉や山野草を採取して生活していた。


 銀紐隊に至っては、訓練と称して食糧調達に出掛ける隊員が、後を経たなかった。勤務中に。堅物隊長ジルベルトは、山帰りの隊員を見付け次第、厳重注意を行ってきたが、効果は無い。



 養鶏場は、魔術隊である『青紐隊』と、医療隊の『黄紐隊』が共同で経営している。研究のついでらしい。少し怪しげだが、今のところ、食べて異変が起きたと言う話は聞かない。



 山の獣が激減したので、肉は養鶏場に頼るしか無くなった。獣がある程度増えるまで、入山制限が敷かれるだろう。植物も、山の魔獣とドラゴンによって、かなりのダメージを受けた。山野草採取も、当分は禁止だ。


 こうした立ち入り監視業務は、ジルベルト達『雑用部隊』の仕事である。残念ながら、規制を行っても、密猟者や不正入山者が、必ず出る。本当は、銀紐隊は、『雑用』を担当している訳ではないのだが。


 彼等は、真の精鋭部隊である。銀紐隊は、15人の特殊技能者で構成される特務部隊だ。彼等に出来ない事はない。他の隊は、一般的な技能によって組織されている。出来ることは、各々限られているのだ。


 その結果、他の隊への振り分けから漏れた、あらゆる仕事が『銀紐隊』に押し付けられる。


 故に、一般人や共に仕事をしたことが無い騎士団員からは、『何でも屋』『雑用係』と馬鹿にされるようになったのである。

次回、城塞都市国家ナーゲヤリの日常


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈i500805|29410〉 script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ