【GAME13-7】シェイパー兄妹・怒りの刺突!!
――サザンクロス配下に突如乱入してきた肉ダルマ……いやちゃう、青銅の鎧と盾を纏いしタンク・コールサックに悪戦苦闘のシェイパー兄妹。
今にも妹のフローレンが敵に始末されようとしたその時、真の英雄は遅れてやって来るもの。
そう、クリムゾンレッドカラーのマグナムリボルバーの火を吹く弾丸一発、盾を弾いて現れた『紅蓮の狙撃手』、立海銃司様のおな〜り〜〜!!
「……フン、少しはマシな語りも出来るもんだな。Mr.G」
ありゃりゃ珍しく銃司さんに褒められちゃいましたね! 雪でも降るんじゃないかしら?
さて撃つ方も撃たれる方もマグナムの衝撃は尋常では無い。それ故に盾で弾かれたとはいえども、大きな手に痺れが襲い怯んだコールサックがようやく話す余裕が出てきた。
「な……何しに来やがったボケが!!!」
「じ、銃司様……!!」
扉の前で立ち往生している銃司の横にはダメージ過多で倒れ動けないサーブルズ。銃司は彼を流し目で確認するや否や、直ぐ様玉座前のコールサックに鋭い眼光を浴びさせた!
「……ここ最近、俺のお気に入りの玉座がガタが来てヒビが入ったみたいでな。気になって見てみたら妙にそのヒビが深更しているように見える。――座ったのは貴様か?」
「あ……あぁ、どうもオデのケツには合わなかったようでな。だから何だ? オデに弁償でもしろってのかよ」
「弁償。あぁ、出来ればして貰いたいね。ただ支払いは金じゃなくて、コレステロールたっぷりの命でな?」
「何ぃ!?」
やはり、と言わなくても当たり前でしょう。何しろ銃司のお気に入りの玉座を百貫デブに座らせちゃ誰だって怒りますよ、えぇ。しかし今は銃司の怒りは静かな篝火のようだ。今のうちに謝った方が……と言ってももう遅いかもしれませんね。
「俺たちに目ぇ付けられた以上は、もう逃げられはしないぞ」
「……『俺たち』? お前以外に誰が居るんだ!?」
「立海の絆で繋がれた参謀と、秘書と、侍女と……俺だ――!!」
銃司は話し終えると右手を天に仰いでパチンと指を鳴らす。これは立海遊戯戦団における戦闘態勢の開始の合図だ……!!
――ボォォォォォォォォン!!!!
古時計の鐘のような重く伸びやかな音と共に紅蓮の背景から全面的にグレーな世界に早変わり。そして銃司もシェイパー兄妹もコールサックまでもが硬直していった。これは時も空間も静止した現象を意味する。
これは時間と空間を自由に静止・変動する事が出来るPAS【オールドクロック】によるもの。
――その能力を操った張本人、この静止空間を自由に動けるプレイヤーが。白銀のロングヘアにスカイブルーのメイド服はまさしく時実桜! またの名を『時空を駆ける侍女』!!
「蝶のような軽やかな剣技を持つフローレンさん。腕は確かですが、少しだけ周りが見えてませんわよ!」
と、桜は昏睡して倒れているフローレンを安全地帯まで運び、コールサックのあの重そうな巨大盾を窓の外まで放り捨てた。空間も止まっているから重力も感じなくなる……とまぁそんな理論なんでしょうかねぇ?
そして周囲を見てみると、既に銃司がカスタム・ツールカードの《ゼータマグナム》を構えて攻撃の準備をしていた。桜はこれを確認して……
「銃司様、後はお任せします! 『時間進行』――!!」
――ボォォォォォォォォン!!
桜のPASによる詠唱と、何処からか古時計の鐘と共に時間がまた動き出す……その刹那!!
――――BUMPッッ!!!
「ん゛ぬぉぉおおお……!!!」
〔コールサック HP2000→1500〕
銃司の《ゼータマグナム》の必殺技『チャージバレット』が、コールサックの【メタルボディ】を潜り抜けた500ダメージが見事に直通!!
マグナム弾の凄まじいインパクトに今度はコールサックが悶絶している!
「な、何が起こっただ……ってあれ??? オデの盾が、オデの《ビッグシールダー》が無いぃぃぃぃ!!!!」
おマヌケですね〜! 桜に捨てられたにも関わらずドテドテと辺りを見回すコールサック。ざまぁみろ〜!!
「オイ、フローレン! いつまで寝ているんだ、起きろ!!」
銃司は桜に救出されたフローレンの頬を叩いて意識を取り戻させた。
「ん……あ、あら? 銃司様!? 私はどうしていたのですの??」
「馬鹿者。なりふり構わず勢い任せて敵に突っ込む奴があるか。俺が来なければ兄妹共々、あの肉饅頭に叩きのめされていたんだ。その一因はお前の判断ミス、一歩間違えればゲームオーバー。そこは理解出来るよな?」
「あ……」
フローレンは改めて自分が衝動に駆られて敵の思う壺にハマり、兄共々危機に晒してしまった事を後悔した。これも自分の実力に対する自惚れ、高圧な性格が仇になった事をフローレン自身が一番痛感したのだった。
「ご、ごめんなさいですの……私が未熟者故にお兄様まで……」
「……だが、敵の討伐はまだ終わっていないぞ。落ち込む暇があるなら動け。半人前の烙印を押されたくなかったら、お前の『フルーレ剣術』とやらをこの俺に魅せてみろ!!!」
「…………ッ!!」
フローレンが高飛車な事は決して欠点ばかりではない。彼女の生まれつきの気の強さ、そして負けず嫌いな性格が銃司の一喝によって魂を再燃させた! だがリベンジしようにも先程消滅した自分の《フェンサー・レイピア》は無く、丸腰状態だ。
「……フローレン、僕のレイピアを使え!」
朽ち果てた兄のレイピアは妹に授けられた!
「立海家の誇りを……僕たちで守るんだ――!!」
「…………はいッッ!!!」
その時、フローレンの胸から神々しいエメラルドグリーンの魂のオーラが彼女の身体を包み込み、PASを発動させた――!
「PAS発動――!! 【フルーレ】!!!」
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【フルーレ】確認!
PASスキル
【フェンシングスピリッツ・フルーレ】発動!
自分のカスタム・ツールカードの通常攻撃が命中100%・『速度力』が段階MAX!!
◎――――――――――――――――――◎
ついに立ち上がった立海のジャンヌ・ダルク! 兄の意志と城主の期待を胸に凛としたその姿、もはやフローレン・シェイパーはベビーフェイスではない!!
『ユニットカード、【ブルーミング・パピヨン】!!』
フローレンの初手から繰り出すカードスキャン、その時窓も開いていないのに急に風圧によって扉が開かれたと思いきや、その扉の奥から桃色の翼を広げた巨大蝶のユニットが! これは色気づいたモ◯ラか!?
◎――――――――――――――――――◎
<ユニットカード>
【ブルーミング・パピヨン】EG:⑦
AP:400 DP:500 AS:10
属性 緑 ユニット/インセクト
効果:①このユニットが場に出た時、
相手プレイヤー・ユニット全てに付加している
効果を無効化する。
◎――――――――――――――――――◎
「その重たそうな鎧に花を咲かせて見せますの!! 《ブルーミング・パピヨン》の召喚時効果! 『ブルームスケール』!!!」
巨大蝶の羽ばたきが桃色の花びらを散らす可憐な鱗粉をコールサックに撒き散らす。しかし侮ることなかれ、その鱗粉に触れた途端に、銅鐸鎧はあっという間にお花畑に早変わり! デブチンに花を咲かせましょう!!
「うわぁぁ! オデの鎧がガーデニングみたいになっちまった!!」
「それだけじゃありませんことよ! これによって貴方のプレイヤースキル、【メタルボディ】含めて全部無効にしましたですの!!」
自慢の鎧は花畑、纏ったコールサックは花を生けてる鉢植え状態肥料は脂肪か。そんな彼にフローレンは改めて兄譲りのレイピアを構える。
「私達の未来を与えてくれた、立海の玉座を汚した罪は重いですの! ――シェイパー兄妹の渾身の刺突、受けてみなさい!!」
フローレンは右足を後ろに左足は下に落とし、前傾姿勢でレイピアを前方に差し出す……!!
「フルーレ流遊奥義……【ダンス・マルシェ・パピヨン】ッッ!!!」
その時フローレンの姿は消え、見渡す頃にはコールサックを軸に周囲を右往左往に俊敏と突き刺す彼女の残影があるのみ……!!
〔コールサック HP1000→900→800→700→600〕
手ぶらで捕まえることも防御も出来ずに1人袋叩き状態のコールサック、そんな時フローレンのブレスから何かコマンドを繰り出すような電子音が聞こえる。それは《ブルーミング・パピヨン》の攻撃コマンドだ!
――桃色の華舞い散る風を背に受けて、今必殺の刺突が炸裂する!!!
「剣先一突、――――toucheッッ!!!!!」
Le・THRUUUUUST…………!!!!!
花蓮花咲くフローレンの一撃刺突が決まり、コールサックの肉団子ボディ諸共突き刺して、そのままドォっと倒れていった……!
〔コールサック HP0 KNOCKOUT!〕
そしてフローレンはレイピアを腰元に収め、憎き敵といえどもフェンサーの掟に従い深く頭を下げて敬礼した。
「salut! Brioche !!」
蝶と蜂のアメイジングフェンシング、その立ち回り終えてサリューの掛け声で丁寧なご挨拶。敵のブリオッシュ扱いも心憎い演出、乙なもの……! 本日のゲーム、ここまでッッ!!
▶▶▶ Le Shaper Frère et soeur WIN!!▽




