【GAME13-4】双翼のフェンサー・シェイパー兄妹!!
――TIPS――
プレイヤーの魂が形となって凄まじい能力を放つ【PAS】。
その形からアイデンティティが読み取れるように、PASから放つオーラの色からも個性が現れる仕組みになっている。
例えば桐山剣の持つPASのオーラの色は『赤』。これは情熱的な感情から放つものであり、感情次第によってはこの赤の色に何かの色が混ざって別の色に変えることも出来るのだ。
――立海銃司率いる『立海遊戯戦団』。その血よりも濃い絆で結ばれた立海家のゲームチームに訪れた吉報、或いは変化は突然にやって来るものでありました。
参謀長・大門史也のスカウトにより抜擢されたフランス出身ゲーム戦士二名が今まさに加入されようとしていたのです。
――その名は『サーブルズ・シェイパー』と『フローレン・シェイパー』、フェンシングの剣を携えた二十歳の若きゲーム戦士は一卵性双生児即ち双子! またの名を【双翼のフェンサー・シェイパー兄妹】と呼ぶ……!!
「……どうした銃司? 新入りがお気に召さなかったか?」
史也が察するように、銃司はシェイパー兄妹が交わそうとする握手をも拒み、不機嫌な表情を浮かべていた。
「俺に黙って入団テストでもしたのか史也兄?」
「済まないな、私の独断で勝手に始めた。その時は丁度お前がオーブを獲得に行った頃でタイミングが悪かったんだ」
「だったら俺のいる前でロシアンルーレットさせるべきだったな! どっかの馬の骨かも分からんフレンチのドタマ打ち抜かれる様を見てみたかったわ!! 俺は入団を認めんからな!!!」
「落ち着いて下さい、銃司様!!」
――入団テストでロシアンルーレット……!? と不可解な上に背筋がゾッとした方も居ると思われますので、一旦解説致しましょう。
長い歴史に紡がれ、遊戯貴族の名を連ねた立海家では配属されるゲーム戦士は、立海家の知人であったり城主に認められた者のみが立海のプレイヤーとして戦うことが出来るしきたりがある。その際に先程の入団テストだ。
万事に適応する『実力』・広大なる『知力』を確かめるのはどこも変わらないが、立海のテストでずば抜けてイカれてるのが、『運』を試すロシアンルーレットなのだ。
それも玩具なんかで済ます話ではなく、【実弾】での運試し。実弾一発銃に込めて1/6の確率で3回引き金を引くデッドオアアライブ。
それで失敗して葬られた人数は……センシティブな話なので言いません。
しかしこのロシアンルーレットは入団者の勇気と、命を城主に命を捧げる覚悟を示す意味も込めていて、それを銃司が不在時に無断で行った事が逆鱗に触れてしまったと言う訳なのです。
「責めるなら彼等じゃなく私にしてくれ銃司。私もお前が来るまで待てと宣告したんだが、どうしても今やるって聞かなくてね……」
「だったら聞かせてやればいいだろう? 中途半端な意志で入団したプレイヤーがどうなったか!? 立海家の財産狙いの暗殺者に皆が俺を庇って、病院送りされるわ最悪はあの世に逝くわ、下らん好奇心で立海家の土に墓標を重ねて逝ったんだろうが!!!」
「――――――だから何?」
恐れ多くも銃司の激昂に口を挟んだのは、なんと入団希望のシェイパー兄妹の妹・フローレンだった。
怖いもの知らずの城主よりも、もっと怖いもの知らずな高圧的態度に一瞬驚きながらも、銃司は彼女に結論をぶつけた。
「……だから俺の同胞になりたけりゃ超優秀な奴にしとけって話だ。礼儀知らずが俺の城に土足で入り込みやがって、不愉快だ」
ここで我慢してれば話は済んだものの、フローレンはこの態度にカチンと来たのかしびれを切らして銃司に突っかかっちゃった!!
「アンタねぇ!! さっきから黙って聞いていれば馬の骨とかフレンチとか言いたい事言って! 入団テスト受かったのに気に入らないから認めんですってぇ!!? 傲慢貴族じゃなくてただのワガママ坊っちゃんじゃないの、いい加減にしないと刺すわよアンタ!!!」
「何ぃ……ッッ!!!?」
フローレンの金髪ロングヘアがなびく清楚な第一印象から一転、高飛車な性格がカミングアウトされたと同時に、雑言で眉間に青筋が浮き出る銃司。誰もが城内で戦争勃発かと思った、その時。
――Le・STING!!!!
「いった〜〜いッッ!!!!」
なんとフローレンの頭にレイピアをぶっ刺したのは兄のサーブルズだった。同じく金髪のショートヘアが凛々しい美少年が妹には容赦ないというか……立海メンバー含め我々的には痛々しい光景だ。
「何をするんですのお兄様!!」
「いい加減にするのはお前だフローレン、性格がどうであれ由緒正しい立海家の主だ。少しは頭を刺して反省しろ」
「だってぇ……グスッ」
『頭を冷やして』なら分かりますが『頭を刺して』なんて反省出来るんでしょうかねぇ? てか2人ともフランス人なのに日本語がとても饒舌な事で。
代わって今度は兄・サーブルズが強引にフローレンの頭を下げながら自分も頭を下げて銃司に謝罪した。
「妹の御無礼をお詫び申し上げます。しかし我々も銃司様の忠誠を誓う覚悟でテストに挑み合格をした身です。立海の戦線強化の為に、何卒我々に入団の意を……!」
「……フン、良かろう。貴様の誠意に免じて許してやる。さっさとその面を上げろ」
「ハッ、ありがとうございます!」
「(納得が行かないですの……!)」
生真面目な兄に高飛車な妹、双子のくせして性格は正反対の何とも興味深いシェイパー兄妹。そして先程の銃司の怒りが収まった所で史也が話を持ち掛けた。
「銃司、彼らのロシアンルーレットの件なんだが私がその保証は出来ている。これがその証拠動画だ」
史也は現実世界で行った2人のロシアンルーレットテストの様子をプレイギアの動画で銃司に見せた。
サーブルズは3回引き金引いて全てセーフ。しかし重要なのはフローレンの方、彼女は粋がってなんと5回、5/6の確率で引き金を引いてまさかのセーフになった強運を魅せつけていたのだ。
「何……!? あの高飛車女がか――!!?」
「私が彼等をスカウトしたのはお前の好敵手である桐山剣のチームに対抗するためだ。1年前のアメイジングウォーズで我々があのチームに敗北に喫してから、私は兼ねてからの知り合いのコネで呼び寄せた。それに銃司も気づいているだろう、彼ら2人のPASを……!!」
史也の指差すシェイパー兄妹の胸に輝くオーラにはそれぞれ緑、黄色と宝石のような色をしていて、その魂の形は2人ともレイピアの形をしていた――!
(剣には剣、か……興味深い――!!)
これを聞いて最初は否定的だった銃司の考えが改まる兆しが見えたようだ。彼も剣と同じく気まぐれな性格してますからね。
「……ねぇ銃司様々! 結局私たちは立海遊戯戦団に入団するんですの? しないんですの……ですか!?」
フローレンは懲りずに高圧に回答を求めるが、また兄の制裁に怖がり今更ながら敬語で返した。さっき頭刺されたんだから当然でしょう。
「その事なんだがな高飛車女、俺は――」
『RED ALERT!! RED ALERT!!』
紅蓮城内に鳴り響く緊急アラート、その詳細は玄関のトライゲートを守護する瑠璃が状況を報告した。
「銃司様、大変です! 何者かがこのバスター・キャッスルに不法侵入した模様です!! 恐らく【サザンクロス】の一員かと……!!」
(――やはりな、ネズミが潜り込んできたか……!)
銃司は非常通報にも怯まず、平然の様子で立ち尽くす。まるでこの侵入を以前から悟っていたかのように。
「銃司様! 早く戦闘の準備を……」
桜が銃司に催促をするが、彼はある提案を思い付いていた。
「待て。ネズミの処理はフェンサー兄妹とやらに全て任せてみようではないか!!」
「え……!?」
「サーブルズ、お前は俺に言ったな。俺の忠誠を誓う覚悟があると。そして高飛車……いやフローレンも、お前の強運が俺は何となく気に入ってしまった。そこでもう一つ俺から二人に試練を与える!
――この城に忍び込んだ不届き者を一人残らず排除しろ!! 命を掛けて、城主の俺を守ってみせるのだ!!!」
城の修羅場をも試練に例えて、シェイパー兄妹を試そうとする銃司!
サーブルズは銃司に偽りない誠意を見せるため、フローレンは自分が銃司に認められるようになるために、熱い目線で2人は敬礼した。
「「ハッ、必ずや! この【双翼のフェンサー】の名にかけて!!」」
フェンサー兄妹が礼を交わすや否や、既に玄関の周囲にてまたしても出現したサザンクロスの黒ずくめしたっぱ達。
「居たぞ!! 立海の城主の首をもぎ取」
――だが、彼等が号令を掛け終わる前に……!!
「――――touche!!」
THRUST…………ッッ!!!
〔サザンクロスしたっぱ×10 HP0 KNOCKOUT!〕
「「「ぐあああああああああ!!!!!」」」
息も付かせぬサーブルズの超音速フェンシング突き! 音も無くして突き刺すそのスティングアタックは、まさにスズメバチのように獰猛かつ隠密なる一突きであった……!!
「僕は騒がしいのは嫌いだよ、覚えておくんだね」
「さっすがお兄様〜☆」
その時サーブルズに垣間見えたエメラルドの如き緑の波動とフェンシングの剣・【サーブル】の形が銃司の眼にしかと焼き付けた……!
(なるほど……中々面白い双子じゃないか、フレンチソーセージめ……!!)
何か美味しそうな例えされてはいますが、確かに銃司の情熱的な魂が揺れ動いているようですね!
さて、次回もそんなシェイパー兄妹の真骨頂をアメイジングバトルも添えて大公開! 妹・フローレンの実力と、コンビネーションは如何なものになるのでしょうか!?
丁度時間となりました所本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




