【GAME12-1】激動に揺れる魂!!
――おぉ、今回もこの物語へ誘うゲートの前に来てくれたんですね。お待ちしておりました!
……さて、事の重なり・因果というのは時に自分の身の回りを大きく変えて思いもよらない大事件ですとか、或いは積み重ねたものの崩壊にも繋がりかねません。
しかしそれは悪い結末に限った話。試練にぶつかった時に自分がどう変えていくのかで悪い運命を大きく変えることだってあります。これこそが【人間の成長】と言うのでは無いでしょうか……?
さぁ次のゲームはご存知桐山剣率いるシャッフルオールスターズの変化が、剣の新たな決意へと繋がる話になります。
今回は3話程度で短めに行きますのでご安心を……しっかりやってよ慶さん!!
――それではご唱和下さい、『オープン・ザ・ゲート』!!!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
――大阪の喧騒とネオンが包む夜更けも居酒屋の店終いやらで少しは静かになり、時刻は丁度10時を回った所。更に物静かな下町の住宅街に並んだ古びた木造建築の家。
既に8時頃にギャラクシーからこの桐山家に帰宅していた剣は、常時不機嫌だった。
それは何故か? ほら、例の忍野龍牙の事ですよ!
剣が二年前に起きたかつての仲間を人間不信或いは縁断絶まで追い込んだ事件を起こした張本人が、見たくない顔と捻くれた性格背負ってやってきたんですから、剣とはいえどもこの時ばかりは腹の煮えくり返る思いだったのでしょう。
更には彼が仕掛けた挑発に乗ったばかりに、アメイジングでも敗北し完全に龍牙の掌に弄ばれた。それを思い出す度に怒りが湧き上がる、それ程剣は悔しかったのだ。
「解説は済んだか? 分かったら少し黙ってくれないかな。物凄くイライラしてんねん」
これまた失礼しました。しかしこうして我々に警告する辺り剣も成長したものです。龍牙の件は自分自身の問題だと決めていたものですから、他の仲間に迷惑を掛けたくない。
ならば己の手で彼を倒すしか他ならないと決めた剣は、自分の懐に留めてリベンジをしようと決めていた。そんな怒りを抑えていた最中……
〜〜♪
プレイギアから流れる着信、今にもドラク◯Ⅳの双子の姉妹が死闘を繰り広げそうな情熱的なバックグラウンド。だが苛立つ剣には耳障りに感じながら渋々プレイギアを開くと、その発信元の名前には【天野槍一郎】、剣の仲間からだった。
――ピッ。
「もしもし? 槍ちゃんどないした?」
と剣は応答したが、当の槍一郎は言い出す勇気が無いのか中々言い出せないようだった。もう一度剣が問い掛けた事でようやく口を開いた。
『……剣、ごめんこんな時間に。今話せるかい?』
「話せるからこーして電話に出てんだろ。勿体ぶらなんで話せよ」
イライラ効果で急かす剣とは反対に、槍一郎はまだ言うべきか迷っているのが携帯越しでも把握出来た。
『……分かった。思い切って言うよ剣。僕はWGCの公式プレイヤーになる為の試練に志願することになった! もう一度オフィシャルプレイヤーになる事を決めたんだ!!』
「…………オイマジか」
恐らく親友だからこそ思い切ってカミングアウトしたのだろう。この槍一郎の一大決心に友なら喜んで応援するつもりだが、喜びを通り越して不安が剣の頭の中を過った。
「それで、その試練ってのは何時やるんだ?」
『開始されるのはまだ先の話だから詳しくは言えないけど、何しろWGCがゲームワールド全体を舞台にして全国地域ごとに代表されたプレイヤーを絞って選ぶから並大抵の試練じゃないと思う。恐らく始まったら当分は皆と行動できないかなと……それで思い切って剣に伝えとこうと思ったんだ』
「そうか…………」
剣に過った不安は的中した。過去のコンプレックスを龍牙に刺激された上に親愛なる仲間の一時離脱の予告は、剣にとってショックを重ねた事に変わりは無かった。極運がそっぽ向かれたようにタイミングが悪すぎた。
『……やっぱり、この報告は心の整理が出来なかったかな?』
「いや、ちゃうて、そんなんちゃうよ! 槍ちゃんも自分を変えなきゃって思ったんだろうし……俺もちょっとな、もっと強ならなアカンって思ったから動揺が……」
しかし槍一郎は決して仲間の動揺に鈍感な訳ではない。何かを察したようで剣に話を返した。
『……ひょっとして君も会ったのかい? あのサザンクロスの奴らに』
「え、何でその宗教みたいな組織の名前知ってんだ――?」
剣は思わぬ情報を耳に入れた事に一驚した。剣の心の暗雲とはまた違った話だが、確かにギャラクシーにて襲撃した『サザンクロス』という組織を槍一郎も知っていた。というのも……
『僕も今日ゲームワールドの【サイバーターボシティ】でそれらしき団体を確認した。いやそれだけじゃない、現実とゲームワールド問わずに不審なプレイヤー達が前年以上に増えてる傾向がある。
――だから僕はもう一度オフィシャルプレイヤーに志願しようと決めたんだ。君や皆と出会った、僕らの居場所を守るために……!!』
「槍ちゃん……」
槍一郎のオフィシャルプレイヤー志願は、自分よりも仲間を守ることに専念した故の正義に従った決断であった。
一度決めたことは決して曲げない槍のような精神を持つ槍一郎の頑なな心に、剣は何も言い返せず耳を傾けることしか出来なかった。
『……あ、ごめんまた長話になる所だった。僕の悪い癖だ。詳しい話はまた学校でするよ。だから気は落とさないでくれよ剣。じゃまた明日!』
「あ、あぁ、おやすみ槍ちゃん……」
と空返事で挨拶を交わし、剣はプレイギアの着信を切った。
――憎き宿敵、好敵手、今後のオールスターズの展開にオーブの事……
剣の脳裏に浮かぶ数多くの葛藤とジレンマ。それが走馬灯或いは太陽系惑星の環のように駆け回り、剣は自分の部屋のベッドに仰向けに寝転がり、天井の照明を一点に見つめながらとうとうぼやいた。
「――――俺、どうすりゃ良いんだよぉ…………!!!」
若さ故か、それとも運悪く度重なった試練故か、剣の魂に迷いの揺らぎを見たり――!
▶▶▶ NEXT▽
一方の槍一郎は他のメンバーにもこの事を電話で報告していた。
ある者は大いに驚き、またある者はやっと決心したかと待ち構えたように快く承諾する者もいたが、ただ一人変わった反応をしたメンバーがいた。
「――それで、剣さんにもこの事を言ったんですか?」
『そうなんだよ穂香ちゃん。彼声にならないほど動揺していたけれどね』
何故穂香が変わった反応をしたのかというと、例の剣と龍牙の激戦を目の当たりにした為、ただならない剣の心の乱れに察した彼女はみのり達以上に終始気に掛けていたのだった。
「……槍一郎さん、多分剣さんが動揺しているのは他の理由だと思います。その相手にここまで剣さんが追い詰まった顔を見たことありませんでしたから」
『……どういう事だい?』
そこで穂香は龍牙の件について槍一郎に詳しく説明した。
『そうか……僕としたことがタイミングが悪すぎた事をしてしまったな……』
「私もみのりちゃん達も剣さんの悩んだ姿はほっとけません。明日にでも元気付けたいと思ってますが……」
何とも泣ける仲間愛溢れるお姉ちゃん肌の穂香。それを聞いた槍一郎は思い悩んだ結果、ある事を閃いた。
『……じゃこうしよう。穂香ちゃんは明日学校終わったら剣をギャラクシーに誘って欲しい。僕も後で鉢合わせるから。
――剣にPASの真髄を知って貰いたいんだ!』
「……はい、分かりました――!」
さて、槍一郎が仕組んだ考えとは果たして何でありましょうか? 彼の発した【PASの真髄】とは何を意味するのか?
切りのいい所で時間とさせて頂きます、本日のゲームこれまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




