【GAME11-11】闘いの終わりに満月が輝く!!
――熱き拳に火花を散らした決闘を終えて、静まり返ったギャラクシーの店内。サザンクロスの企んだ悪事も敗れれば後の祭り、警察に御縄を頂戴されて一龍を含むその一味はみな署まで連行された。
そして残すは勝ち残った我らのゲーム・ウォーリアー達の勝利表彰! ……と言ってもスタッフ一同称賛されるってだけの話ですけどね。
「いやー豪樹君に剣君! それに協力してくれた他の皆も巻き込んで申し訳なかった! しかし皆のお陰でギャラクシーは守られた、オーナーの私を代表して心から御礼を言おう。本当にありがとう!!」
オーナーの松坂の感謝感激・満員御礼……いや客は居ないんだけども、それを筆頭にスタッフから連々と拍手の嵐が吹き荒れる。
それに対し皆は『いやいや〜』とか『えっへん』だとか照れたりふんぞり返ったりと個性が出る出る。しかし誰しも良い事をして褒められると嬉しいものですよね。
「……しかし今回が『討伐コード・アステロイド』初起動とはいえ、色々課題点が見えてきた。また近いうちにサザンクロスのような輩が現れる前に改善しておかなければ」
こんな修羅場があったにも関わらず、直ぐに頭の中を切り替えるとは流石大手アミューズメントパークのオーナーさん。しかも今回実践も兼ねてテストしていたとは抜け目無いというか見切り発車と言うか……とにかく悩む前に実践する商人魂ってヤツでしょうかね?
「……その課題点ってのは主にどんな所なんすか?」
と話に耳を傾けていた豪樹が松坂オーナーに話し掛けた。
「一番重要なのは配置するプレイヤーの数だね。7階もある広い店内だから一応警備員は居るんだが、決闘の腕は宜しくないようで……しかし豪樹君のような実力でなくても良いんだ。平均以上の腕の立つプレイヤーを雇いたいんだが……」
と、同じく豪樹の横で話を聞いていた剣がお得意の閃きでピーン☆と閃いた。
「松坂さん! 丁度ニーズに会う奴がいますよ! あそこのズッコケ不良組を誘うってのはどうすか、松坂さんの命の恩人!!」
「ハァ!!?」
いきなり剣によって話を振られた被害者、もとい服部のあんちゃん率いる『伊火様』不良チーム。それを聞いて松坂オーナーが彼の元に近づくと何やら既視感を覚えていた。
「あれ……? 君はもしかしてこの地域で悪名高い服部君かい? 去年アメイジングリリース日にここで大暴れしてたっていう」
「な!? あ、いや、はい……」
毎度威張り散らしてる服部が、過去の若気の至りな出来事をぶり返されて縮こまってしまった。
何しろギャラクシーで暴挙を奮って警察沙汰になったのは、剣が初めて『アメイジング』を触れた時だからだ。※『極限遊戯戦記』第31〜32話参照。
初陣にて剣に敗れた服部にとっては、色んな意味で苦い思い出なのだ。因みに穂香と剣たちが初めて会ったのもこの時である。
(懐かしいですね☆)
「大丈夫ですよ松坂さん、コイツあれから悪さには懲りたらしくて俺ばかり追い回してんすよ」
「……なるほど? それで君達の親や高校は何処なのかね?」
すると縮こまった服部は更に顔を下に背けた。
「…………俺様に親は居ません。手下も同じです。ガキの頃は孤児院で過ごして、高校は入らずに時に留置所や少年院で厄介になったりしてるくらいで……住んでる所なんか何処にも、ありません……!」
「なんと…………」
これには松坂オーナー含めて私も驚きましたが、剣たちはこの事を知っていたようでした。つまり服部率いる『伊火様』が傍若無人に悪ぶっていたのは、孤児故に愛情を満たせてない不満から来てたものだったそうです。
しかしあれから剣を追い求める野望を抱いてからは、そんな不満もいつしか消えて警察に厄介になってはいない。本心では無いにしろ悪意は無いことを感じていた剣が思い切ってスカウトを試みたという訳なのだ。
「――――服部君、私はね、君の素直な気持ちを聞いて今物凄く反省しているんだよ。我々大人が未来のある子供達に第一に、夢や愛情を与えることが使命とされている立場が身近な所で助けを求めてる事に気付かず、悪さばかり目に付けて中傷する嫌な世の中にさせてしまった事に。今更何とお詫びしても聞かないだろうけど……」
「はぁ……」
松坂オーナーの悔やみに何がなんだか分からない服部のあんちゃん。それもそうでしょう。常に嫌な存在として見ていた大人が、目の前で今にも泣きそうな眼をしているのだから……
「ただね、私も見て見ぬふりはしたくない。だから服部君に他の三人も、私の元で暮らして見ないかい? ご飯も宿の事も気にしなくて良い、勿論もう大人だからこのギャラクシーで働く条件でね!」
「え……え゛え゛ええええ!!!?」
これは思いがけない幸運が服部たちの前に訪れた! いつも大阪の冷たい残飯で生き延びていた服部にその手下も、温かい家庭には手に届かないものと思っていた。このような事があるとは、最大級の動揺が収まらずにただ呆然と立ち尽くすだけの服部たちであった。
「い……良いんですか? 俺様達店に迷惑もかけた町のゴミが――」
「そんな卑下する事は言ったらアカン! 幸せが逃げるぞ!! 危険を顧みず我々を助けてくれた君たちにこの際不良とか関係あるものか!!! 私はそれらも受け止める為にこのギャラクシーを造ったのだ!!!!」
松坂オーナーの凛とし堂々とした声明に服部たちは魂を動かされた。野望とはまた別の使命のようなものを感じて、服部が導き出した答えは。
「……ずっと大人なんか信じないで生きてきたけど……俺様、いや俺ら伊火様は初めて松坂さんという大人を信じてみようと思います。――あんたのこの『ギャラクシー』を、俺様達で守って見たいんです……!!」
「――――宜しい! ならばスタッフ一同君達を温かく迎え入れよう!!」
大阪のしがない不良青年に、アミューズメントパークのスタッフ総員惜しみない拍手で讃えられた。それは豪樹や剣たちよりも大きな拍手喝采であった。これに服部は唇を噛み締め、今まで出た事の無かった嬉し涙を溜め溢れ出す。男泣きですな。
「……剣、もしかしてこれが狙いやったんだろ?」
豪樹は剣が仕込んだ目論見を事終えて見破る。
「さぁ〜ね。俺を倒すなら大事なもん持っとかないとって思ってな。……同じ悪役でもあのクズよりかは100倍マシだぜ」
するとそれに反応して穂香が寄り添った。
「それは、龍牙さんの事ですか?」
「……アイツもあんちゃんみたいに報われりゃ良かったんだけどな。あの様子じゃ手遅れだろうぜ……」
(――――剣くん……)
仲間たちの心配を他所に、明らかに真っ黒な因縁が定められた剣と龍牙。果たして彼との再戦はいつの日になるのだろうか?
……それよりも、龍牙はどこ行ったんでしょうかねぇ?
▶▶▶ NEXT▽
――変わって場所はギャラクシーの屋上。ネオンに照らされている看板の上に何やら人影が……あ、居た!!
ゲーム・ウォーリアーのダークなゲーム戦士・忍野龍牙!! 出で立ちも場所もまんま忍者をリスペクトしちゃって、このまま帰ったかと思いましたよ。
「ケッ、ホントはもっと剣と殺り合いたかったんだが……同胞の小娘に邪魔されてね」
「邪魔したのはどっちですか。貴方の自業自得でしょう?」
そんな愚痴る龍牙の横には仲間と思われる女性プレイヤーの姿、それは白い長髪に和を装った道着を纏った女剣士。その表情は無機質な程に変えない鉄のような感情を持った彼女の名は…………ごめんなさい、まだ公表は出来ないようです。
「そもそもあの桐山剣という人に貴方は勝ったじゃないですか。これ以上拘る理由も無いでしょうに」
「そーゆーのが分かんねぇようじゃ、一生未熟者だなお嬢さん」
「何を――」
「そしてムカついたお前は直ぐ様こう思った。『ゲームならお前なんかに負けない』って……強ぇのは認めてやるが、いい加減止めとけ無愛想で無理に意地張んのは」
「別に……意地張るも何も、私には守るものも譲れないものもありませんから」
「そうかい、そりゃ効率的な役所根性やな」
……んー、何やらこちらも只ならない事情があるようですな。まぁ今回は詮索はしませんけども。
「とにかく任務の阻害は止めてください。私達WGCに雇われたプレイヤーの仕事は組織の理念に害する存在の消去なんですから。私情持ちこむなら任務外でご勝手にどうぞ」
「あぁそうしとく。仕事はこなすつもりだし、俺様の目的は『至高の魂の証明』。それが俺様の生き甲斐だからな……!!」
そんな龍牙の黒い装束が天から明るく照らされる。
――今宵は満月。影に生きる龍牙のようなプレイヤーにとっては、月こそが闇夜を照らす光。闇のゲーム戦士を祝福する妖しき光だ。
「……あぁ良い闇だ! 良い満月だ!! もう俺様は後戻りは出来ねぇ、この深く地獄に誘われそうな闇に堕ちようとも、この忍野龍牙がゲーム戦士の頂点に立つ!!!
――――必ず殺してやる……桐山剣ッッ!!!! ヒャァアハハハハハハハハハハ!!!!!」
――光あるところに影あり。超次元ゲーム時代に二つの意志がぶつかり混沌と化すとき、ゲーム戦士の宿命はその運命に揺るがされるのか。
闘い、憎み、傷つきあう時代は再び繰り返されるのだろうか……? 今ここで我々は祈ろうではないか、全てのゲーム戦士達に災いの無き未来が訪れる事を!!
――本日は【GAME11/それぞれの激闘】を持って、読み終わりで御座いますッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽




