【GAME11-1】黒影のゲーム戦士!!
新たなゲーム戦士・緊急乱入!!
人も知らず、世も知らず、影となりて使命の名のもとに敵を討つ。
その姿・魂の形はまさしく【忍者】!!!
しかしその手に握られし忍刀は、黒い刃に真っ赤な血を好む『殺意』が込められていた……!!
それではその激闘へと誘うために皆様、ご唱和下さい!!
――オープン・ザ・ゲートッッ!!!!
――ここは大阪・梅田。関西一を誇る巨大アミューズメントパーク『ギャラクシー』。
そんな平穏な理想郷を乱す不届きな奴ら、『サザンクロス』と名乗るプレイヤー集団とのアメイジング大乱戦に突如乱入してきたのは、とんでもないゲーム戦士であった!
「クァハハハハハハ……久々やな剣ぃ、中学の卒業以来とちゃうか?」
「龍牙、テメェ……!!」
どの悪党よりも下衆く不気味な笑いを浮かべる忍者のような黒装束、その影のような出で立ちの暗さでより際立つ殺気立った眼。その眼に怖じけ付く所か湧き出る苛立ちで威嚇を返す剣。
彼の名は忍野 龍牙(17)。別名『黒影の暗殺者』……!
「……俺はな、大好きなゲームを嫌な奴に妨害されんのが一番嫌いなんだよ。空気ぶち壊してまで何しに来たんだ、あぁ龍牙?」
過激な戦場と化した店内3階の空間には死屍累々と転がる敵の姿。
既にHPは0になって戦闘不能になったというのに、サザンクロスのしたっぱ達は皆苦悶の表情で頭を抱え、本当に今わの際に立たされたような声を上げる。
龍牙の持つ忍刀が彼らをここまで痛めつけたのだろうか?
「んだよぉ、せっかく二年ぶりに会えたってのに。ついでにサザンクロスのうるせぇ雑魚殺しただけじゃねぇかよ、何を怒ってんだ面白くねぇ奴!」
『ついで』程度でゲームとはいえ、殺人現場みたいにされては被害者もたまったもんじゃないと思いますがね……
「まぁ俺がゲーム戦士やってりゃ、お前もいつか会うだろうって覚悟はしてたけどな。今更お前がここに現れるってのはちょいと訳分からんが。――どーせ俺や前のダチの事なんか反省してなさそうだし」
剣も憎みついでに皮肉を垂らす。……しかし、『前のダチ』って発言はちょっと引っ掛かった方も居るでしょう。ここでちょっと緊迫した中で野暮ですが私から説明しましょう!
――実は剣と龍牙のお二方、まだみのりや仲間達に出会う前の幼少期からの親友だったんです! 所謂幼なじみって訳ですな。
その時は彼等の他に三人も同盟を組んで、五人組の仲良しグループとして悪戯やら喧嘩やらとにかく楽しい事をやり尽くす浪速区では有名なクソガキ……いや、やんちゃな子供達として町の活気となっていた。
……ところが、中学卒業直前にそのグループ同士で些細な事で大喧嘩になってしまった。しかもその発端となったのが龍牙の裏切りによるものだった。
詳しい事はまだ劇中では語れませんが、これによってチームに大きな亀裂が生じ、卒業と相まって事実上そのグループは崩壊。剣もその失望のショックから仲間を二度と作るまいと思った程である。
その直後に剣がゲームセンターで出会ったのが、今の親友のみのりなのだ。人間関係の解れで別れを呼び、また新たな出会いで剣を強くさせた。これだから人生ってのは分からないものですね〜。
……はい、もう話戻しても結構ですよ。閑話休題!
「……ま、俺様もお前と同じさ。あれから俺様も色々あってな。お前もこの小説の語り手がしゃしゃり出るほど充実な日々を送ってるようじゃんか?」
「そりゃどーも、全然嬉しかねぇが。お前ただ単に俺を褒めに来たんか?」
すると、剣にも負けないほどの鋭い吊り目の龍牙の瞳孔が見開き、威圧に満ちた眼光で剣を睨みつけた。
「…………逆だよ。お前みたいに正義面したボケがふんぞり返って良い気になってるのは我慢ならねぇ。
いや他のプレイヤーもそうだ、大人や偉いやつに任された厄介事が正しいみたいな面で吠えてやがる! ムカつくんだよ!! くだらねえ正義掲げたプレイヤーがどいつもこいつも!!!」
「だが度が過ぎるぜお前。幾らムカつくからってオーバーキルにも程があらァ。下手するとホントに死ぬぜアレ」
素顔を半ば隠す黒頭巾の裏でおそらく青筋を立ててるであろう龍牙の苛立ちの咆哮。剣はそれを気に食わぬ顔で対象的に冷静に話す。だが龍牙の答えは……
「あんな弱者、死んでくれたほうが良かっただろうに……」
「…………あ゛!!?」
龍牙の問いに剣の理性がプツンの切れたかのような激情が、魂の中に迸った。それに追い打ちを掛けるように龍牙が減らず口を開いた。
「いい加減学べよ剣ぃ、ゲームってのはな【合法な殺人】でもあるんだよ!
操作キャラが幾らくたばっても蘇生してくように、ゲームの中じゃ殺害行為も当然のように許される!! それでゲームで託けてくれればマジでくたばっても事故で済まされるだろうしなぁぁぁぁぁ!!!」
「…………」
自分の非を認めず、寧ろ誇った様を見せつけ嘲笑う。今まで剣とやりあった中でも最もサイコパスなプレイヤー、それが元幼馴染だという事も重なり剣ははらわたが煮えくくる思いで一杯だ。
だがそれでも剣は殴ろうなど思う気にもならない。ゲームでない場で手を出した時点で三流以下に成り下がる事を経験則で知ったから。
「……もう分かった。お前のイカレ話はたくさんや。話終わったならはよ出てけ、俺は下の豪樹さんの手伝いせなアカンから……」
剣は切り替えて強制的に話を遮り、この場を立ち去ろうとするが、
――――ジャキッ
「――!」
剣の首先に忍刀、そしてその横には龍牙。この場を出ようものならその首を貰うと言いたげな素振りで剣を止める。
「待てよ剣ぃ……まだ俺とゲームで遊んでねぇのに帰るとか冷やかしか? それともアメイジングで決闘挑む力もねぇ程弱くなったか腰抜けぇ」
しかしそれでも鬱陶しそうに剣はその刀を振り払って憎み口で返す。
「はぁ〜あ!? 正々堂々と闘った事のねぇお前に言われたないわドアホ。他を当たれ……」
などとしっぺ返そうとしたが、一旦話を止めて剣は考えを改めて言い直した。
「……いや、アリかもな。ここで一回戦っててめーの骨どっか一本折って泣かせてやる方が俺も清々するぁな」
……龍牙も物騒だが、剣もヤンキー紛いに物騒なのはお互い様であろう。
「何だ? 随分アッサリ飲むじゃんよ」
「お前とはとっくに縁切ったつもりだが、同じ大阪の浪速で住んでるプレイヤー同士じゃ間接的に迷惑掛ける事になるだろ。あんときみたいに人裏切って他の誰かが人間不信にされたら俺が迷惑すんだよ。ホントはやりたくねぇが、片付ける為にも相手になってやるよ!」
「ほぅ……言ってくれんじゃんよ、剣ぃよぉ〜〜!!」
龍牙の殺意の眼は完全に見開いた。まるで剣を罠にハマったネズミと見立てて仕留めたかのように……!
果たしてこの1対1の勝負は神聖な決闘となるのか、或いは狡猾な罠と化すのか?
「嬉しいなぁ〜俺はこの時をずーーーーっと待ち望んでたんだ! 幼馴染同士の楽しい楽しいゲームにしよ〜ぜぇぇぇ☆」
「あーそうかい! じゃゲーム終わったらはよ精神科行きな!!」
遂に激突、剣VS龍牙!! ……だがしかし丁度良い所で時間となってしまいました。本日のゲーム、ここまでッッ!!
……あ、そーいえば服部のあんちゃん達は?
「筐体調整中ってどーゆーこったよぉぉ……Zzz」
龍牙に催眠掛けられてました。情けない……(泣)
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




