【GAME10-2】ギャラクシーを完全封鎖せよ!!
――TIPS――
現実世界のゲームとプレイギアを連携することによって、アバターのレベルアップや称号『エンブレム』の獲得にも貢献出来る。
例えばプレイヤーが持っているテレビゲームやアーケードゲームでクリアすると、【魔◯村(FC)・完全制覇】のように自動的にプレイギアにエンブレムが刻まれる。
このシステムを使って、ゲームワールドのプレイヤー達に自慢してやろう!!
――物語の主役やら人望のある人は、何かと行く先々にトラブルが引っ付き回る悲しい性。
桐山剣が有り余った時間を有意義に使うべく、豪樹の経営するゲームジム『ビッグウェーブ』でトレーニングをしようとしたらば、突如木霊するは聞くにも乱暴な叫び声。
「見つけたぞ剣! 今日こそお前を倒してやるゥゥァァ!!」
礼儀を弁えない程に大声と巻き舌が耳に障る。その声の主は時代錯誤も甚だしい程に薄汚れた黒の学ランに角刈り頭、しかし何処か面影あるような気のせいか?
「……服部のあんちゃんもしつこいねェ〜、ちったぁ空気読んだらどうや?」
何と!? ゲームワールドリニューアル初日から剣にチェッカー勝負を挑んだあの服部詫摩じゃないですか!
それにチンピラ野郎、変態メガネ、アバズレギャルの3大最低学生A・B・Cの三人組部下を揃えてるって事は、あの泣く子も黙る……と言うよりも泣く子も呆れかえる不良グループ【伊火様】がまたしても剣にちょっかいを出してきたぞ!!
「うるさい! お前を俺様の手で勝つまでは例え火の中水の中、ましてや梅田駅の中だって追いかけて相手してやったるわぁ!! 分かったらまた俺と勝負しろ剣ィィィ!!」
「あー何処でも追っかけるのは構わねぇけどさ、今俺トレーニング中なの。だから戦ってる暇なんか無いからさっさと帰んな!!」
剣はエアロバイクで漕ぎながらシッシッと手で振り払うように服部達をあしらう。しかしヤンキーな奴ほど短気で取り扱いに困る人はいない。粗雑な扱いをされては当然……
「貴様ァァァァ!! チャリンコ漕いでる暇あんならさっさと俺様と勝負しろってんだ!!!」
「うわあ!!」
デカイ図体にデカイ手で剣を引っ張り出そうとした所で剣は咄嗟にバイクから降りて、そそくさと逃げ出しジムの中のボルダリングルームへと駆け込んだ。
「あっ、野郎逃げんな!! お前ら引っ捕えろ!!」
全く野望に燃える不良ちゃんってのは周りが見えないんだからハタ迷惑。三人の部下も引き連れてジム狭しと追いかけっこ。
「やれやれまた始まったよ……」
あら豪樹さんや、またって事はアイツらいつもあーして鬼ごっこを? 止めたりとかしないんですか。
「止めるも何も、毎回結末は決まっとるから仲介する必要があらへんのよ!」
なるほど、じゃその様子をちと見物してみましょうかね。
▶▶▶ NEXT ▽
このゲームジム『ビッグウェーブ』最大の特徴は体育館半分の面積に覆われたフリークライミングの壁。
右も左も正面も天井も、下は流石に無いとして岩のように盛り上がった壁と、足や手を引っ掛けるカラーな石。
何しろこのクライミングが全身の強化に最適だと考えた、オーナーの豪樹が作り出した至高の壁なのだから並大抵では登れない。
「やーい、悔しかったら登ってこーーい!!」
ところが剣はトレーニングを通じて何度もこの壁を登ってきた強者。ひょいひょいっと手取り足取り軽く高い天井付近まで登り詰めた。
剣こと浪速のサルが止せばいいのに我が物顔で服部を挑発させる!
「おにょれェェェェ〜、ちとお前ら俺様が登るの手ぇ貸せや!」
「「へい!!」」
服部とその仲間達が無い知恵絞って肩車やら組体操やらで石の取っ手に掴むは良いが、離した途端に寸胴の重さが災いして部下共々撃沈。
まさに柿の木ならぬボルダリングのさるかに合戦。剣がサルならば、服部はさしずめカニと言ったところか。
「あーあ、見ちゃいらんねぇや!」
すると剣、天井のクライム部分をなんと腕だけで登りながら下方に伸びている服部と部下の山目掛けて天井から飛び降りた!!
「剣必殺の天井からケツドローーーップ!!!」
ドーーーーン!!!!
「ぐふぇぁッッ」
マリオもビックリの剣渾身のボルダリングヒップドロップ。※良い子は真似しないでね!
床のマットで和らいではいるが服部らに直撃で不良全員バタンキュー☆ これがその毎度の追いかけっこの結末だと言うんだから、御苦労な事でした!
「剣あんましドタバタすんなよー、最近お客様からうるさいって苦情来とるから程々にしときーやー!」
「あーすんませーん! 今度から静かにシバいたりますわー!」
いや静かでも騒いでもシバくのはノーよ!?
「ち、くしょぉぉ……剣の奴めぇ……」
とまぁそんな感じで服部達によって茶番を片付けた訳なのだが……今回の天災というのは安心しきった時にやってくるものなのだ。
その一声は、ギャラクシーの店内放送による警告アナウンスから始まった。
――ビーーッ! ――ビーーッ!!
『――ギャラクシーから御来店の皆様に緊急のお知らせを致します! 只今当店より不審プレイヤー約100名による襲撃を確認しました!! お客様はスタッフの指示に従い、直ちに避難するよう、御協力をお願いいたします!! 繰り返します――』
なんと、超次元ゲーム時代は世紀末だったのか!?
突如としたギャラクシー店内によるテロ活動によって、緊急アナウンスと警告音が鳴り響く店内。決して避難訓練のような大袈裟な事ではない。血気盛んなプレイヤーが世を動かすこの時代は、理不尽な事件が起こることもザラでは無いのだ!!
「……何や何や? 100人も連れてきてパーティーにしちゃ過激過ぎやないか?」
何を悠長な事をおっしゃいますか豪樹さん! こんな一大事に……
――♪♪
と行った側からスパル◯ンXのBGM。格ゲー好きらしい豪樹のプレイギアの着信が鳴り響き、すぐ様応答する。
「はい、ビッグウェーブオーナー高橋です」
『あぁ高橋くん私だ、松坂だ。アナウンスは聞いたかい? そっちのお客様はもう避難したかね?』
松坂というのはこのギャラクシーの総合オーナーを務める松坂茂之さん(46)の事。声からしてかなり動揺していた様子だったがそれでも豪樹は冷静に応答した。
「……えぇ、幸いにも一般は皆退室しております。後はスタッフと剣と仲良しの不良組と、私だけです」
『何、剣くんも来ているのかね!? ……ならばシャッフルオールスターズとして君達に特別な仕事をお願いしたい!』
「……【討伐コード・アステロイド】ですね?」
『そうだ、今からこのギャラクシーの店内を完全に封鎖して全体をアメイジングフィールドに展開させる!! 我々スタッフ一同一丸となって、悪意あるプレイヤーを討伐するんだ!!!』
「了解――!!」
豪樹は心なしかしたり顔でプレイギアの着信を切ると同時に、現実世界でとんでもないゲームが始まろうとしていた!
アミューズメントパーク『ギャラクシー』全体で繰り広げるプレイヤー討伐ゲーム!!
ゲームワールドとはまた違った大規模フィールドでどんなバトルが繰り広げられるのか!?
「――退屈凌ぎにゃ丁度ええゲームやな……、腕が鳴ってきたでぇ!!!」
――――本日のゲーム、ここまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




