【GAME9-8】逆鱗の2乗返し開始!!
――槍一郎の魂は『槍』の形、色は蒼のクールブルー。
沈着冷静で疾風の如く軽やかに駆け抜け、敵を討つ槍の戦士『ランサー』の異名を持つ槍一郎の魂に、真っ赤な逆鱗の火を付けた!!
『いい加減にしろよどいつもコイツも……!! 自分の力で越えようともせず俺の記録に嫉妬して叩き潰そうなんざ、プレイヤーの風上にも置けねぇ。上等や、ならば俺が直々にその性根をズタズタに切り刻んでやらァァァァアアア!!!!!』
――『俺』!? ちょっとちょっと口調まで変わってんじゃないすか槍一郎さん! いつものクールで丁寧な感じは何処行ったんで
『うるせぇ!!! 作者の気まぐれで講談風にテコ入れされた地の文担当は黙ってろ!!!!』
そ、そんな赤裸々な裏事情を皆の前でバラさないでくれ〜!!(涙目)
「――マズイぞこりゃ、先輩ってば俺以上にキレてるぜ……」
ピットで様子を伺う倭刀の言うとおり、執拗な妨害・不正行為と立て続けにやられ、プレイヤーの立場も侮辱された煽りでとうとう我慢の限界。リミッター解除された槍一郎は理性ブチギレ。
最早クールな印象が逆転したもう一人の槍一郎が出来上がってしまった。
……でも待てよ? 確か前作(極限遊戯戦記)でもこんな事あったような?
「え? 先輩、前にもこんな事があったのかよ!?」
あ、そうか倭刀はまだ出てなかったから知らないんでしたね。
――実はゲームワールドでアバターシステムが出来てなかった一年前に、ひょんな事から喧嘩トラブルに巻き込まれた際に槍一郎は眼鏡が外れた拍子に、今のように逆上した血気盛んな性格になった事があったのです。※前作第35話参照
アバターで外見を変えても眼鏡だけは変わらず着けている槍一郎。彼にとって眼鏡は怒りや悲しみを抑制する為のフィルターの役割を果たしているのだ。それが今外されたって事は……もうお分かりですよね?
「……槍一郎先輩、本気の本気で怒ってるかも。余程な事がない限り自分から眼鏡を外すもんか――!」
恐らくVRゴーグルの役割を果たす『GWギア』を一旦外して、現実で自ら眼鏡を取って理性を開放したのだろう。
槍一郎にとってプレイヤーの誇りを汚されることは、どんな罵詈雑言にも劣る程の侮辱に値する。故に今の彼は本気度200%の怒りMAXだ!!
『待ってろ今から2乗返ししたるからな、覚悟しやがれェェェ!!!!』
――2倍ならぬ2乗!? 何て悠長に語ってる場合じゃない、怒りの槍一郎は重いマシンを一気に起こしてエンジンを蒸し、フェンスからコースへと復帰。物凄いスピードで追い上げようとしている。
しかしクラッシュからかなりの時間があったこの時点で、トップを奪回した暴走族グループから半周以上・約700メートルの距離を付けられている。これでは50周走破は不可能の粋だが、HPを削って撃退の可能性なら……
『不可能? アホな事を抜かすな、俺がレースで不可能を起こした事は無い!! 50周走破&暴走族全滅で片付けてやる』
そんな無茶な!! 大幅なタイムロスで何を……
『できるか出来ないかは、レース終盤で幾らでもほざいてりゃえぇ。だが俺にはそんな劣勢を軽く覆せるカード、スキルと、【PAS】がある……!!』
その時逆鱗全開の槍一郎が微かに魅せた理性から、不屈の闘志が垣間見えたような気がした。
――信じてみましょう。我々がゲームに情熱を燃やす戦士を見守る立場であるならば、槍一郎の底力を刮目して読むこともまた使命だ!!
『……ありがとう。じゃ……行くぜェェェェエエエエ!!!!!』
――――ガォォオオオオオ!!!!
走る走る、槍一郎のサファイアストリームは走る! 獅子の雄叫びのようなエンジンの音を響かせて、向かうは敵の懐まで力の限り走るのみ!!
……ところで読者な皆さんは忘れてはいないだろうか?
このゲームは【カードレースバトル】である事を。
――現在コースを走り続けて11ラップ分、その形跡はカードの手札の数やEGに影響して槍一郎の現在の手札は7枚、EGは⑩蓄積。
更にマシンの耐久力を表すHPも1300から全くの不動という珍しい展開。しかしそろそろ怒りの刃を向ける時は来る。
「……ボス大変です! 奴がもうこっちに迫ってきてます!!」
「何ぃ!!?」
暴走族『NARASI』一同、驚くと同時に恐れ慄いた! 何しろ鬼神の如く蒼炎のオーラを放つ槍一郎に下っ端は皆ビビリ、誰しもが【殺られる】と脳裏に浮かんだからだ。だがボスのジオを除いて。
『落ち着けテメェら!! 向かってこようものならまた引き離せばいい話だ、カードを使え!!』
「「へい!!」」
気丈なボスの一声に鼓舞された下っ端一同のカード発動が連鎖する!
『――ツールカード、【マキビシ】!!』
『――フィールドカード、【アイスバーンロード】!!』
カードの二重発動により、コースの地面が凍結されてスリップが怖いアイスバーン状態になり、その上に姑息なトゲトゲのマキビシトラップが槍一郎を襲う。
しかし、同じ手は二度も通用しないのが強者の定め。それを覆すカードは既に槍一郎の手札に宿っていた!
『カスタムツールカード、【ジェットブースター】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<カスタムツールカード>
【ジェットブースター】EG:②
属性:青
・アクセルバトル効果:
マシンに[フライヤー]効果を付加する。
◎――――――――――――――――――◎
カスタムツールカードが装備されるのはマシンの方だ。
サファイアストリームの後方部分に位置するリアフェンダーに大型のジェットウィングとノズルとなる《ジェットブースター》が装着。
これが火柱を上げてジェット噴射するとタイヤが浮き上がり、槍一郎のマシンが空中走行を実現するに至った。これなら暴走族のトラップも怖くない!!
『お前らはこんなワンパターンな事しか出来ないのか? おめでたい奴らだ!!』
皮肉に満ちた捨て台詞を吐きながら、槍一郎はいよいよ反撃の時を迎えようとしている。手札に秘めた武器がその瞬間を裏付ける鍵となるのか、会心のカード発動!!
『カスタムツールカード、【トライデント】!!』
槍一郎の手に宿りしは三又の刃をまとった伝説の槍。それを装備した槍一郎がランサーなら、サファイアストリームはそれにまたがる愛馬と言っても過言ではない。
――無法のレース場に、蒼馬の槍騎士が参られた!!!
◎――――――――――――――――――◎
<カスタムツール・カード>
【トライデント】EG:②
AP(攻撃力):100 PP(使用回数):10
属性:青 装備:プレイヤー
・効果:[貫通攻撃]
≪必殺技>
『突風丸』EG:③ AP:200
・フィールド隅まで一直線に
青属性の真空の竜巻を起こす。
◎――――――――――――――――――◎
「何が槍騎士だ、クソ生意気な!! 野郎共打ちのめしてしまえ!!!」
ボスの掛け声に下っ端共が吠えて後方にて追撃を加えようとするが、その時点では既に遅かった!!
『プレイヤースキル発動! 【クイックシュート】!!』
◎――――――――――――――――――◎
・ゲイル(槍一郎)のプレイヤースキル
【クイックシュート】発動!
5秒間自分の行動速度が加速!!
◎――――――――――――――――――◎
槍一郎のプレイヤースキルの一つ【クイックシュート】。更なるマシンのスピードアップにより、勢い任せで暴走族の群れに突っ込んでいく!!
そして一気にEGを⑨も消費させて発動する!!
『――必殺技【突風丸】・3連撃!!!!』
風の勢いに乗せられて、槍一郎とマシンが暴走族の下っ端の群れを潜り抜けたその刹那――!!
――――WHIZ! ZIP!! SWOOOOOSH!!!
風を呼んで、切り裂き、吹き荒れる三連の音のみが木霊するストリームライン。それ以外は何も起きなかった事に暴走族は呆気に取られ、後に嘲笑う。
「へ……ヒャハハハハハハ!!! あんだけ格好つけて風の音立てただけか!? 白けさせんなバーカ!!!!」
……だが槍一郎の反撃への追い風は、彼の一言を最期に畜生を地獄の底に叩き落とす。
『――【バカは死ななきゃ治らない】。そのバカはお前らの事だ俗物共……!!!!』
――――SLAAAAAASH!!!!!
槍一郎の通った追い風が、かまいたちのように下っ端全員の身体とマシンを引き裂いた――!!
「「「ギャァァァァァアアアアアアアアア………!!」」」
〔NARASIしたっぱ×10 HP0 KNOCKOUT!!〕
ズタズタに裂かれたアバターとマシンは、尾羽打ち枯らして横転したその拍子に爆発四散。暴走族下っ端計10名のゲームアウトを告げるウィンドウが墓標代わりだ。
残るはボスのジオ、槍一郎との一騎打ちを残すのみ……
「……次はお前の番だ――!!」
「クッ……ナメんなよ……小僧ォォォォォ!!!!」
プレイヤーの誇りを汚す輩は情け無用の怒れる槍一郎! 50周走破が先か、槍の魂の名において引き裂くのが先か!?
全ては次回で明らかになります決着の瞬間! 一先ずは今回のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




