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【GAMEWORLD ONLINE】真・極限遊戯戦記 ゲームウォーリアー ~ULTIMATE SOUL OF ACE〜  作者:
2ndSTAGE―リアル&VR・2つの世界に揺らぐ魂!!―
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【GAME9-7】ランサーが怒り吼えるとき!!

 

 ――槍一郎は嵌められていた。


 暴走族の憂さ晴らし付き合いで決闘を申し込んだ彼が挑んだレースバトルは、サイバーターボシティのプレイヤー達の妬心(としん)のこもった罠であった!


 相手のカード発動による攻撃はコース内の画鋲や目眩ましやら、執拗かつ陰湿な妨害にも負けず、依然としてトップをキープし独走しながら残り11台の暴走族マシンの追跡にもめげず。

 槍一郎はただ己のマシンのスピードに乗せて健気に走り続ける。あぁ、なんと逞しや神速のランサーよ。


 しかしゲームとしてはまだ序の序の口だと言うからこの話の濃さを私ですら疑うほど。

 誠に残念ではあるが多少省略ダイジェストで時を進めて、レースは互いのHPを1ミリも減らさずに10分弱が経過した。



 ▶▶▶ NEXT▽


(もう10周周ったってのに、槍一郎先輩妨害を受けても全く応えた様子すら見えねぇ。本人は嫌われ文句は言われ慣れてるなんて言ってるけど、どうにもしっくりけぇへんな。ありゃ()()()()()ような走りや)


 ――皮肉にも勘で思い当たった節を浮かべる倭刀の予感は的中していた。


 暴走族はおろか、他のプレイヤー達もが自分が培ったランキング網羅にジェラシーして、グルになって自分を陥れようとするその魂胆に並ならぬ失望を浮かべていた槍一郎。

 故に思い切り走れるわけもなく、諸刃のスピードにブレーキを掛けながら滑らかにコースを走破するだけ。


 風に乗ってその身を任せ、槍を掲げる剣士『ランサー』の異名を持つ槍一郎が、そのスピードを躊躇するなど魂に掲げた槍の名が泣く。

 真剣勝負に峰打ちで片付けようともさも似たりな中途半端な感情が、レースの中で葛藤し続ける槍一郎。紛れもないスランプ状態だ。


 ――だが、それでも槍一郎は走る事を止めようなどとは微塵にも思ってはいなかった。


(僕はある程度の罵詈雑言なら耳を塞いで受け流せるが、ゲームの正当な真剣勝負に多くのプレイヤーが一丸になって水を差して僕を陥れようなんて……、そんなの許して良い筈が無い! たとえどうなろうとも僕のプライドにかけても必ず走破してみせる!!)


 魂の槍が鈍ろうとも己が成し遂げようと決めたことには決して逃げないのが槍一郎。

 エッジなスピードとは劣るものの、芯は折れてはいない。安定した速度のまま孤軍奮闘。


「……確かにさっきよりスピードは鈍ってるけど、あの走りを見てて安心するって言うか、何も心配ない気がするぜ。流石先輩や、そのまま突っ切ったれーー!!」


 槍一郎の不屈の闘志が、同じ仲間の倭刀にその情熱を感化するように見る者を興奮の渦へと誘う。しかし悪意に覆われたプレイヤー達にとっては、そんな彼の行動全てが苛立ちの的にしかならない。


 ――そんな不服の感情が電気のように脳内に走った暴走族のジオが、またしても良からぬ事を企んだ。


「まだ折れねぇってのか、憎たらしい……!! ――オイもっと援軍を集めろ!! どんな手段使おうともアイツを走らせるな!!!」


 不服な感情を怒鳴り散らして、他の同胞の援護を要請するジオ。このような短気で周りが見えなくなった時は何をやらかすのか、隣の家で家事が起きる時並に怖いものは無い。


 さて、その援軍というのは……


「……ん? 何や急に観客席の野次馬が多くなった気が――?」


 倭刀はピットの窓から観客席を見下ろすと、明らかにコース両端に設置されている観客席に座っている野次馬集団……いや失礼、観客でお越しのプレイヤーの皆様が今か今かと槍一郎を先頭にしたマシン群が待ち構えているようだった。何やら不吉な予感がします……



『ほぼ満員に近いギャラリーの数だ、そんなに僕の陥落を見たいのか――――!!??』


 プレイヤー達の観客席付近に槍一郎が距離迫ったその時。身構えるように観客プレイヤー達が一升瓶、トマト、ペイントボールに剃刀と、ブーイングの七つ道具が目白押しとばかりに槍一郎にターゲットを絞った。


「やれーーーーーーー!!!!」


『うぁあッ!!!』


 まるでゴミでも殴り捨てるかの如く、プレイヤー達による怒涛のブーイング攻撃! 瓶の破片がコースに散らばるは、トマトが顔に当たり視界が無くなっていくわで見るにも無惨の悲惨。


「どうだお前に嫉妬を浮かべたプレイヤー達の妨害攻撃は!? 思い知ったか!!!」


 その様を我が物顔の御満悦でしたり笑うは、暴走族のジオ。という事は……


『な……まさかあのプレイヤー達も!?』

「そうだアイツらも俺達の同胞、お前の事を潰したいと思ってる同士達がこんなにもいるんだぜぇ!!!」


 ちょっ……読者の皆さん聞きましたか!? あの観客プレイヤー集団さえも暴走族のグルになってたなんて!! こんなの八百長・やらせよりも質の悪い一斉集中攻撃、暴挙の極み!! プレイヤーのスポーツマンシップに反する行為、許すまじ!!!


「ふざけんな!!! あのカスプレイヤー達ぶっ飛ばしてやらァ!!!!」

 倭刀も怒り心頭、憤怒に身を任せて観客席に殴りこもうとするが、


『ダメだ倭刀この場は抑えろ! 卑劣な行為を暴力で抑えるな。同じ穴のムジナだぞ!!』

「せ、先輩……でもよ……!」


『やられるのは僕一人で充分だ、倭刀までそれに乗っかったらお前にまで嫌な思いさせてしまう。頼むからその怒りを抑えてくれ…!』


「…………すいません」


 槍一郎の激にも似た叱咤で思い留まる倭刀。それでも先輩を心配させまいとグッと怒りを堪えて耐え忍ぶ。


 ▶▶▶ NEXT▽


 ――変わってレース内、いつの間にかジオが槍一郎のマシンの後ろにピタリとくっつき、今にも追いつかれそうな程に距離を縮める。既に1メートル未満の差で槍一郎の後ろを見つめながらジオは捨て台詞を吐く。


「随分派手にヤラれたなぁ、えぇ? ゲイルさんよ!!」


 先程の観客ブーイングにより、槍一郎のレーシングスーツの後ろ側はトマトや生卵の潰れた汁を残して惨めな姿。故意に煽るジオの口調に、今まで閉口していた槍一郎の口が開く。


『……君達はいつになったらその()に気付くんだ。コースを細工して、関係の無いプレイヤー達も巻き込んで僕を潰そうとしている。プレイヤーとしてのプライドは無いのか!!?』


「――――無いね」

『ッッ……!!!!』


 プレイヤーとしての誇りを無様に捨て去ったジオの台詞に、槍一郎のヘルメットの下で声を押し殺す怒りの意を感じた。


「ゲームは勝てば官軍負ければ賊軍、要は勝つためならなんだってやるのがプレイヤーなんだよ!! それをプライドだとか誇りだとか、チンケなもんを大事にするなんざナンセンス!!!

 ――そんなん大事にする暇あんなら、一生コースで寝そべってろヘボレーサー!!!!」


 ――――ドカッ!!


『ッッ!!!?』


 卑劣愚劣の鬼畜生による決定的瞬間。ジオは加速して槍一郎と横に並んだかと思えば、()()()()()横の槍一郎のマシンごと思い切り蹴りつけた!!


 この時時速70キロも加速していた槍一郎のバイクはバランスを崩して横転、最悪にも急カーブであったコースを衝撃で一気に奥のフェンスまで放り出され、マシン共々クラッシュ寸前まで陥ってしまった。


「先輩ィィィィッッ!!!!!」

『……ッ、ん………』


 幸いにもこのレースは現実のものではなくVR、若干脳への負担と衝撃だけ庇って槍一郎は無事であった。――だが……!


 プチンッ――!


 槍一郎のアバターから何やら通信が遮断したような、或いは()()()()()()かのような音が微かに聞こえたかと思いきや、ゆらりと槍一郎はマシンを起こしながら立ち上がった。



『……浅ましい……! 運営の目の届かない所でルールもマナーも知らぬプレイヤーが束になって強者を痛ぶる事も厭わない低俗な輩になろうとは!! ――――久々に頭に来た……許さん、ゆ゛る゛さ゛ん゛…………ッッッ!!!!!!』



 この時既に槍一郎の魂には、闘志とはまた違った激しい炎が燃えたぎろうとしていた。それ即ち、【業火の如し怒り】!!




 ――――貴様ら、二度とマシンに乗れない身体にしてやるッッッッ!!!!!!!



「――せ、先輩ッ!!???」



 何と夢か誠か!? 沈着冷静であった槍一郎がヘルメットを投げ捨て、地獄の閻魔様をも恐れおののく鬼神に満ちた怒りの咆哮を解き放った!!!


 今ここに、『神速のランサー』天野槍一郎のリミッター解除、フルスロットル倍返しを披露するか……と思いきや、丁度時間となってしまいました……。

 次回怒涛の成敗活劇、スカッとしたい皆様は是非是非寄ってくださいませと言ったところで、本日のゲーム、これまでッッ!!



 ▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽


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