【GAME7-5】カリキュラボックス・計算地獄!!
――いつもより日が落ちるのが早い気がするのは気のせいか、秋の夜長の市立高校・天童学苑の校舎が西日の逆光に染まる頃……、
「やったれー剣ーー!!!」
「刈田! あんなプレイヤーボケ共を黙らせちまえーー!!」
プレイヤー族・インテリ族、野次馬根性引っさげた同胞達をオーディエンスに谷間の争いか泥仕合か、只今だだっ広いグラウンドど真ん中で『アメイジング』勃発中!!
ゲームは既にスタートし、激闘火花散る修羅の展開見れ……
「こんの頭でっかちがあああああ!!!」
「黙れ100%ゲーム馬鹿!!!」
な、殴り合い!? カードは? 武器はどうしたの!?
……とお思いですがこれもこのゲームの常套手段。アメイジングの時が刻まれて間もない頃は手札5枚の展開は出来ない。何しろ発動に必要なエネルギー『EG』が無いとカードは出せないからだ。
そしていつの間にか二人のステータスはこの通り変化していた。
〔エース (桐山剣) HP1000〕
〔ニノ (刈田祐輔) HP1000〕
丁度彼らのHP差はイーブン、更に肉弾戦から一旦間を置いて、剣が何やらオーディエンス側をキョロキョロと見回し始めた。
「……あれ〜? みのりが居ねぇじゃねぇか! 何処にいるんだ?」
みのり? ありゃりゃ剣さん気づいてなかったんですか!? 彼女はね、レミや穂香を誘ってシャッフルガールズ3人でゲームワールドに行っちゃったんですよ!!
「はぁ!? 何だよ冷たいやっちゃな〜、じゃ槍ちゃんと倭刀は?」
剣と同じ天童学苑の生徒であり5組の槍一郎とその後輩にして1年4組の倭刀は、二人で別々にゲームワールドを探索してます!!
「……じゃ豪樹さんは?」
貴方ダメ元で言ってないですか? 豪樹は社会人、梅田の近くのアミューズメント『GALAXY』のタイアップゲームジムのオーナーをやってるからして、今は絶賛勤務中! 仕事放ったらかして応援なんてする訳無い。
些細な喧嘩の一つや二つで仲間がエールを送るはずなし。それもこれも剣さんが喧嘩を売るのが悪いのよ!!
「語りのアンタまで言う事無いだろ!? ……何かやる気冷めちゃったなこりゃ」
んな事言ったところで戦争真っ只中で後悔先に立たず。それと語りの私とやり合ってる暇があるなら前を見なさい!!
「え? ――うわぁ!!」
突如インテリ代表の刈田祐輔が投げ込むは1〜5と数字の書かれた青いバレーボールのような玉。剣に避けられて地面に叩きつけた玉はポーンと弾んで祐輔の元へ、トリッキーな動きにご用心。
「余裕だな剣! 小説の語り手と話す暇があるほど僕の挑戦が気だるいか、腹ただしい!! これでもくらえ!!!」
流石インテリ、読書にも長けているか物語のセオリーに一言申して再び数字ボールを投げる。これが祐輔のカスタム・ツールカードだ!!
◎――――――――――――――――――◎
<カスタムツール・カード>
【ジャグリング・ナンバーボール】EG:④
AP(攻撃力):? PP(使用回数):20
属性:無 装備:プレイヤー
効果:このカードの攻撃は数に合わせた5種類の攻撃が行える。
①:赤属性の100ダメージ。
②:青属性の70ダメージ、30%の確率で10秒間行動不能にする。
③:黄属性の50ダメージ、20%の確率で『麻痺』状態にする。
④:緑属性の50ダメージ、当たった後そのダメージ分自分のHPを回復。
⑤:紫属性の30ダメージ、50%の確率で『毒』状態にする。
◎――――――――――――――――――◎
武器であるカスタム・ツールカード特有の必殺技は無いが、代わりに5つの攻撃を繰り出せる万能ボール。
動きが不規則な上、剣も5つのボールに避けるのが精一杯。しかし健闘虚しく③と書かれた黄色ボールに接触!
〔エース(剣) HP1000→950〕
「ぐっ……?! 何や、急に痺れが……」
ボールに当たってファーストヒットを許した剣は突如手足の感覚が麻痺した感覚を覚える。まさか……
◎――――――――――――――――――◎
・エースは『麻痺』状態になりました!
◎――――――――――――――――――◎
「ハハハハハ!! 状態異常に陥ったか剣!! 20%の確率とはいえ一発で当てるとは流石は極運……いや、不運だなぁ!!」
「麻痺!? 嘘やろツイてなさすぎるぜ……」
不運なウィンドウ表記と祐輔の煽り、そして運の良さに自信があった剣はその反動故にショックを受ける。
『状態異常』とは、カード等の付加効果によって効果ダメージとは別にユニットやプレイヤー本人に五体満足なステータスを異常へと浸すエフェクトのこと。
剣がなってしまったのは『麻痺』状態。これは痺れによって己が持てる瞬発力を半減するだけでなく、時折発作のような感覚で攻撃やカード発動さえもキャンセルされてしまう厄介なエフェクトだ!
「君が麻痺したならば話は早い!! 戦略は抜きで五体不満足なうちに、一気に片付けてやる!!!」
頭脳派の割には何と割り切った判断だろうか!? 剣が思うようなプレイを出来ない間に決着を付けようというのだ! これは無謀か或いは計算の内なのか?
「計算の内だよ! 既に僕の手札には切り札がある!!」
何、切り札とな!? それは『切り札騎士』の異名を持つ剣にとっては聞き捨てならない言葉だ。だが満身創痍の彼に怒号を放つ余裕はなし。非情にもその切り札らしきカードはブレスにスキャンされる――!!
『ツール・カード……【サイコロ・ダイナマイト】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<ツール・カード>
【サイコロ・ダイナマイト】EG:③
属性:無 AP50×1〜6
・効果:巨大サイコロを相手に投げ込む。
1〜6の出た目×50のダメージを
相手プレイヤーとユニットに与える。
◎――――――――――――――――――◎
つまりサイコロの出た目によってはダメージの強弱が変わる。50〜300のダメージでは一撃必殺には程遠い。
「……へっ、アホか!! そんなショボい攻撃で俺に一撃必殺が出来るかよ!!!」
「アホはお前だ剣。何の為に事前にフィールドカードを仕組んだと思っている!?」
「フィールド……!?」
目先の盤面で気にしていなかった剣。ゲーム前に祐輔によって仕組まれた《カリキュラボックス》たるフィールドカードを展開していた。
未だどんな効果か明らかにされていない中で、遂にそのベールを払った!
「《サイコロ・ダイナマイト》の効果発動前に、フィールドの《カリキュラ・ボックス》の効果を発動する!! 『カリキュラム・ルーレット』!!!」
◎――――――――――――――――――◎
<フィールドカード>
【カリキュラ・ボックス】EG:⑥
属性:無
効果:30秒に1度だけ自分や相手の攻撃・
効果発動に対して《カリキュラム・ルーレット》
を発動できる。
・《カリキュラム・ルーレット》
攻撃やカードでのダメージ数値を
左から〔0〜100までの数字〕〔計算記号〕
〔0〜100までの数字〕の順で
スロット形式でリールを止めて、
それに出た計算合計をダメージ数値に変換する。
◎――――――――――――――――――◎
「そんな無茶苦茶な……」
計算と言うよりもギャンブル要素が物を言う数字タクティクス。何はともあれまずは緊迫のルーレット処理から……
「要らないよ。そんなマグレで勝つくらいならこんなカードは使わないし、何より僕にはこのスキルがある!」
何!? と言う事は本日2回目のプレイヤースキル発動!!
◎――――――――――――――――――◎
・ニノ(祐輔)のプレイヤースキル
【MAXナンバー】発動!
《カリキュラボックス》の数字処理を
最大値に上げます!!
◎――――――――――――――――――◎
これはどんな効果なのか、我々には想像し難いがそれは直ぐに明らかになった!
「簡単な事だよ、このスキルは数字に関係するカードの与えることが出来る計算を最大値に上げることが出来る!! つまりカリキュラム・ルーレットの与える最大数値として、
――〔100〕〔✕〕〔100〕は……」
「【10000】――――!!!!」
この数値を知った途端に剣の顔が急速に青ざめた。
「その通りだ!!! そのまま《サイコロ・ダイナマイト》のダイス・ロールだ!!!!」
天高くフィールドに舞う巨大サイコロ、それが勢いよく地面に転がり落ち出た目の数は『1』。しかし通常なら50ダメージの所を《カリキュラ・ボックス》の効果で10000ダメージに変換されている!!
「どうだ! これがインテリの数字タクティクスの真骨頂だ!! そのまま微塵に塗れてぶっ飛べ!!!!!」
間もなく巨大サイコロに仕組んだ爆弾が爆破される……!!
「そうは、させるかッッ!!!!」
しかしそう簡単にやられる剣ではない。剣もまさかの時の生命保険を手札に仕組んていたそうだ……が!!!
「ぐっ……!??」
最悪は二度も続くか、麻痺エフェクトの痺れがここに来て剣の身体を蝕み電撃が襲う!!
(んな所で終わって、たまるかぁぁぁぁぁ……!!!!!)
麻痺エフェクトにも負けず、ブレスのカウンター・レスポンスのボタンへと指先を伸ばす剣!
爆破が先か、カウンター・レスポンスでの時間停止が先か!?
このまま頑なな男の意地を折らせてたまるものか!! 本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




