【GAME58-5】凡人と狂人の非共存理論!!
――デルタのデクルックスによる、狂気は止まらず!!
B2層のゲーム戦士達を一網打尽にし、味方と思われていた裏プレイヤーの同胞を惨殺しては、PASの力によって吸収される。更にはゲーム戦士達のカードデッキをも吸い取ってミックスし、新しいデッキを口から出すという珍芸まで出す始末。
まさに正体不明のブラックホールか、デスイーターか!? 次に奴の獲物になるのは果たして誰か!
「僕は誰でも良いよ。誰でも束になって掛かって来なよ!」
等と無邪気に構えるデクルックス。しかし当の相手となる者は皆、恐怖の余りに腰を抜かしながらも必死で逃げる。
裏プレイヤーも、WGCの警備員も、懸賞金目当てのゲーム戦士達も、命あっての物種と本能の赴くままに去っていく。そして彼も……?
「と、とうとう出番が来たじゃないですか、綾小路さん!」
「アイツを倒せば2、3万じゃなくて億単位の懸賞金も夢じゃないすよ!」
等と協力する気は更々無いのに、口だけ達者で綾小路優の肩を押すゲーム戦士達。ただし当の本人は戦慄を通り越して呆然と立ち尽くすだけの優。そんな彼を楯に、後ろから無理矢理前へと押し上げている。
「え、は、はぁ!? お前等何バカ抜かして……」
「いーじゃんいーじゃん! 勇敢な奴は見逃してあげよう。精々敗北をシロップ漬けにして、いっぱい恐怖を地上のマスメディアにでも伝播させてやりな!」
この御時世、これをSNSに上げれば大炎上間違いなし。そんなパニックを心から望んでいるデクルックスの高笑いは止まらない。
「……あー、でも。もう一人くらい見せしめに殺っとかないと舐められるよなー。……よぉし」
この調子でもまだ欲求が収まらないのか。周囲の人物殆どが居なくなった中で、責任擦り付けられた綾小路優がターゲットにされた!!
「………………!!!!」
「そうゆう事♪ 見たまんまの成金クソガキだけど、ゲームは一番強いんでしょ? じゃあ……虐殺び〜ましょ〜☆」
ゲームに強い……と言っても、大阪の地区大会やアメイジング・サバイバーモードβ版の優勝の名誉は勝ち取っていた優。彼にも譲れないプライドがある。
(そ、そうだ……! 何を怯えてるんだ僕は。これが僕がずっと望んでいた事じゃないか! 僕がサザンクロスを壊滅して、金を稼いで、英雄になってやるんだって……! 僕は姉ちゃんやシャッフルの連中や、先輩とは違う! あのギガント加賀にも勝った、僕は最強の大阪の代表チャンピオンなんだ!! …………なのに、
――――何で、何で手が、身体中が震えて…………戦う事が出来ないんだよぉぉぉぉ…………!!!)
完全にビビって泣きじゃくってます、綾小路優!!
所詮大阪の小さな都市の中で、名誉に粋がった所で経験も努力も足りない“凡人”と変わり無し! 常に高みを目指す剣さんや、銃司さんの眼中にも当てられないのはそーゆー所です!!
「…………もしもーし? 掛かってこないの? 大阪地区チャンピオンさーん??」
ほらデクルックスも手ぐすね引いて待ってますよ!
「ひぃっ!? や、やっぱ無理だ―――」
デクルックスに臆した優、腰が抜けないうちに一刻も早くここから立ち去ろうと、背を向けて逃げようとするが非情にも……
――――ドカッッ!!
「ぎゃっ……!?」
後方から優の頭部の横目掛けて、デクルックス渾身のハイキックが激突! あまりの衝撃に体勢を崩した優。脳震盪寸前で、意識が遠のく中でもデクルックスは追い打ちに優の腹を足で叩きつける。
「が、はッ……!!」
「ダメダメ、闘いの中で相手に背中見せるなんて。強いんでしょ、お前?」
無謀にも相手は、ゲームと殺人の区別も付かない正体不明の狂人。凡人と狂人では結末は大体見当が付く。
「ふざけるな! お、オイ!! 何ボーっと見てんだ、早く僕を助け…………?!」
小さいプライド掲げて、同行していたゲーム戦士達に助けを求める優。だが、その小さな希望も最早粒子すら残さず。既に彼はゲーム戦士からも見捨てられ、孤立無援のソロモード。
「嘘、だろ…………」
頼る仲間さえも失った優、まさに”蛇に睨まれた蛙“。力量を見余った青二才の年貢の納めどきか……?
「完全に信用不足だねぇ、クソガキ」
「!?」
「地区チャンピオンがこんな惨めな展開になっても、どうして身体が動かないのか分かる? それはね、
――ゲームと称する“試合”、”競技“。実際に命を傷付ける“実戦”、“殺し合い”とじゃ、全然違うからだよ」
それは即ち、戦う者が掲げる覚悟の大きさをも意味する……!
「戦いに負けても何も失わない。死んだ目に合ったことがない。コンプライアンスに怯えて残酷描写を見せたくない。
そんな平和ボケしたゲーム戦士が、現実で本当に戦争が起きて、闘うことになった所でプレッシャーに耐えれる訳が無いでしょう?」
この作品は近未来のフィクション。しかしデクルックスの発言の核は、我々読者に対する現実への警鐘にもさも似たり。
「お上品なeスポーツとしてやるなら構わないよ? でもそれで張り合った所で確実に取り残されるね。”戦わなければ生き残れない“、“力こそ正義”とぶつかり合う時代に、テメーの力に自惚れてる奴は真っ先に潰される。
――――その模範がお前なんだよ。三流以下の黄金虫がよ」
完膚なきまでに、精神的に叩きのめされた優。既に涙は頬から乾ききって、半ば殺されるのも悟り始めた。その傲慢な鼻を鈍く圧し折られた時に見せる絶望を、デクルックスは甘い汁を吸うように恍惚に震えた。
「よし! 言いたいこと言ったし、どーせお前に戦う気なんか無さそうだし。そろそろ殺るか☆」
「へぇあ!? ま、待て待て待て!! 嫌だアアアアアア!!!!」
喉元が嗚咽で絡み、思う様に叫べず、無情にもデクルックスの黒い手が優の首を狙いに出した……その時!!
「………………! ……………あれ…………??」
綾小路優に手は出されていない! いや、先に手を出されたのはデクルックスの首元、そして掴んだ手の先には……!
「弱い者いじめは何時の世も滑稽だ。陰湿で、卑劣で、何を考えているのか理解に苦しむ。
――――貴様にピッタリなイメージだろう? デルタのデクルックス!!」
デクルックスの首を掴む手には、紅蓮のPAS波動が纏い、血管を浮かばせながらメキメキと音を立てている!
その破壊的な力は悪魔の加護か!? 立海遊戯戦団城主・立海銃司、血塗られたこの空間に馳せ参じた!!
「ぐ……かはっ……! 何だ、この力は……?!」
「自惚れは貴様も同等だ。正体不明の分際が、列強と称するこの愚鈍思考めが!!
――――この紅蓮の魔王の前に、地を埋めるが如く平伏すがいい!!!」
さぁ、さぁ〜さぁ~お立会い! カリスマ全開、気合も満開! 立海銃司の久々の晴れ舞台、デクルックスを相手にどう魅せてくれますか破天荒勝負!!
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!
更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!
次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




