【GAME57-7】酔えば何でもあり!? ゲーム拳・遊酔仙拳!!
“金を失うことは、小さい事である。
信用を失うことは、大きい事である。
勇気を失うことは、自分を失う事である。”
――国際空手道連盟総裁・極真会館創始者 大山倍達――
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――さぁさぁ、長丁場となりました高橋豪樹VSオケラ拳使いのケーラスとのガチンコバトル。長引いたら続きは衛星放送で、なんてならない内に決着付けちゃいましょう!
「ナイター中継じゃないんだから、余計な心配すんな!」
こりゃまた失礼しました、豪樹さん。
てなわけで超久々の更新となりましたゲームウォーリアー・本日のベストバウト、いってみましょう!!
「ば……バカな、たかが大吟醸酒とチョコバーを食べ合わせただけで、俺の電撃を無効にさせるだと!? そんなフザけたバフがあるか!!」
「実際あるんやからしゃーないやろ。それだけ食材の存在が偉大っちゅーこっちゃ! 掛かってきぃや!!」
ケーラスが飲み干した電撃爆酒によって編み出した電気技を、チョコバーのヌガー宜しく土のパワー絶縁効果で無効にさせな豪樹。しかもチョコによく合う純米大吟醸を呑んだなら、忽ち溢れる酒気の剛腕。
筋骨隆々の豪樹の肉体が躍動し、酒の効果で血流をパンプアップ。120%の可動領域を繰り出し放つは、ゲーム拳の自由かつ柔の技【遊酔仙拳】!!
「火油硫硫硫硫ぅぅぅぅ〜〜」
「ッ!?」
圧巻かつ不気味な呼吸を放つ豪樹。一直線に怖気づいたケーラスへ突撃したかと思えば、両手を大きく振り上げて、相手の出方を流れるように交わしては打つカウンターアタック。これにはケーラスお得意の大型鈎爪も役には立たず、豪樹の酔拳特許の鉤爪で、憎きあんちくしょうの肉体をダメージする!!
「この……酒乱野郎ッッ!!」
「ぶっっっ」
あぁっとケーラスの渾身のブローが豪樹の顔面にクリーンヒット! 電撃無効にされても意地があるぞ!!
「な、何やなんや! まだ本気出せへんのかい豪樹!」
ここで外野の大山女将の野次が飛ぶ!
「無茶言うなや、そう早く酒の酔いが回るかいな! もっと酒の力借りな、最大限の力が発揮出来んねん!」
「駆けつけ一杯気分かよ!?」
酒には飲み慣れてる豪樹も、大吟醸酒一升で瞬速チャージは無理があるようだ。これには小原も大山も呆気に取られる。
スロースターターを良いことに、ケーラスは追撃に大きな爪で再び豪樹に襲い掛かる。電撃は効かなくとも、ドラム缶をも握り潰す握力にはさしもの豪樹もタジタジ。
「大変、また豪樹さんがやられちゃうですの!」
「まだお酒が足りないのか……おや?」
屋敷内の酒蔵庫にて傍観するシェイパー兄妹。兄のサーブルズが、蔵の中で横倒れしていた一升瓶を見つけ、それを手にして再び豪樹の元に投げつける。
「豪樹さん、お酒もう一丁!」
交戦中の豪樹とケーラスの腕に交えて一升瓶がVRフィールドに突っ込む。丁度ケーラスの鉤爪に瓶が割れて、その割れ瓶を掴んだ豪樹はそのままグビグビと酒を頬張る。
だが酒が喉を越した瞬間、とてつもなく熱い感覚に襲われ、咄嗟に瓶をフィールド外に投げて胸元を抑える。
「何やねんコレェ!? ごっつアルコールキツイわ!!」
それを聞いてシェイパー兄妹。VRフィールドから投げ返された一升瓶のラベルを確認すると、
「―――――バツ、マル……?」
「バッテンのマルって酒あったかな」
X、O。という事は……?
「お、おフランスのあんちゃん。……それ、XOやないか?」
「効いたああああああああ!!!!」
大山女将さんの言う通り! XOとは、ブランデーの概ね50年以上の熟成期間の長いものに表示する等級の一つで、その中で特に高級なものを指します。因みに調味料で使われる『XO醤』とは別物だそうで。
ブランデーの中でも、最も長熟なXOの濃厚な味口は大吟醸酒をも遥かに凌ぐ。
動き回って内臓に加熱するアルコールがXOによって加速された豪樹の肉体は、苦痛を超えて大声疾呼。とんでもない反応を起こしていた。
「初ィィィイイイイイ!!!」
「どぉぉおお!!?」
お前はスタン・◯ンセンか!? 右手を天に挙げてガッツポーズしたかと思えば、ブレーキの無いダンプカーのように猪突猛進突っ込んでいく豪樹。
ケーラスが爪を出すかと思えば、それを見切り瞬時に交わす姿は流石の如く。酒によって理性のリミッターをぶち抜いたファイターは予測不可能!
「XO猪突拳、酔えば酔うほど怪力突進力みなぎりゅ〜〜!!」
呂律が回らなくなったら十分だ、酔いに酔った豪樹のエンジンは絶好調。大吟醸がオイルならば、XOはガソリンなのか。ケーラスの爪をも弾いて突き飛ばす猪突拳は、オケラの陰キャな性根を叩きのめす!
「猪突転じて千鳥足拳、ふらつき歩行で排水口に脚突っ込むなよ〜!」
地底空間に排水口あんの!?なんて突っ込みたくなる千鳥足の魅惑ステップ。これがケーラスの攻撃タイミングを狂わせ、その隙に魅せつける片脚ハイキック。続けて脚のバネを使って飛び掛かるドロップキックと蹴り技フルコース!
これぞゲーム拳【遊酔仙拳】の真髄、酒に身を任せて酔いの力で自由自在な技を繰り出す柔の奥義。
しかも酔いの力が強ければ強い程スピードアップを図るほか、編み出す技はシェイパー兄妹や大山・小原コンビをも魅了する。
「あれ何の真似や?」
「ハーメルンの笛吹拳ってか?」
「名付けて、”ドイツにゃ禁句のパイドパイパー拳“やでぇ〜!」
横笛構えで来るかと思えば、女型の酔拳構えで敵を悩殺する“ニューハーフ拳”と変われど変わる遊酔仙拳。コンプライアンスなんざ梅酒に漬けてまえと言わんばかりのアブナイ技にヒヤヒヤする一方、酒の肴にもっとやれとはやす御陽気者もいる。
――――金ッッッ
「み゜ッッッッ」
あーっと、これはエゲツナイぞ!? 女型の拳法で困惑されてるケーラスの開いた股間の隙を突いての一蹴! これを観てタマヒュンしたのはサーブルズだけ。何気に異様だ!
「あれが俗に言う”ゴールデンボールクラッシュ“ですのね」
「英訳しないでくれる?」
シェイパー兄妹のボケツッコミはさておき、豪樹の酔仙ラッシュはエスカレート。両腕でケーラスの首元を囲んでは遠心力で回しての脳天ミキサー、裏拳・回し蹴り・目潰しの連携コンボに最早ケーラスに勝ち筋は絶望の闇に堕ちていく。
こんな調子で、著しくケーラスの頭上に表記されたHPゲージもあと僅か。ミリ単位で赤く点滅したゲージにも関わらず、そのままやられるのを待つ奴では無かった。
「おのれぇ、こんな酔っぱらいにノックアウトされてたまるか! 逃げてやる!」
やはり逃げの体勢に入ったか。ケーラスの両手の爪を活かして、B3層の地面から穴を掘って戦線離脱を企む。
「てんめぇ〜っ、逃げられると思ってんのか!!」
対して豪樹、穴掘って逃げるケーラスの足元をむんずと掴み取り、ゴリラアームの勢いのままに彼を宙へ放り投げる!
「のぉぉおおおおお!!?」
そして投げ飛ばされたケーラスを豪樹は身体ごと肩に乗せて、肩車状態のまま飛んで止めの一撃を繰り出す! てか最早、最後のは酔拳じゃねぇぞ!!
「ゲーム拳奥義・獄落城怒ッッ!!!!」
―――――CRAAAAASSH!!!!!
読み方は天国、名前は地獄。天地に突き落とすが如く肩車から地面へと叩きつけられたケーラス。
オケラの土に還ることも叶わず、脳天直撃したことによりノックダウン。拳華城闘・B3層の陣は高橋豪樹に軍配が上がった!!
…………あれ、豪樹さん? 勝利したのに顔が青ざめてるのは何故??
「動きまくったせいで酒戻しそうや……誰かポリバケツ持ってへんか!? マジ気持ち悪ぅて――――――あ」
※ここから先は読者様のご想像にお任せします。
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[ゲーム拳・108の武]
【遊酔仙拳】
酒気に帯びて、その酔いの力で自在な武術と
軽やかな戦術を編み出す奥義。
※ただし酔いの力が強すぎると、
試合後吐く可能性が高い故、禁断の奥義と
認定されている。(例外もあり)
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▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




