【GAME57-6】拳士覚醒・盃ベストマッチ!!
――TIPS――
【ゲーム拳士と食の相乗効果②】
ゲーム拳士はただ食せば強くなるだけではない。時には食材・飲料・調味料などの食べ合わせによっては『ベストマッチ現象』を起こすことがある。
これによって本来の食材の能力を倍以上に発揮し、レベルアップでは習得出来ない必殺技の獲得やステータスの大強化に繋げられる。
早い話が『強くなりたきゃ、栄養とか考えて飯食え』って事!!
「……な、何を言ってんだお前!? 喧嘩の最中に酒頼むなんざ、酔っても痛みは取れねーぞ!!」
試合再開早々、豪樹の言動に困惑する小原。
電気の力を身につけたケーラスにスカイアッパーを繰り出し、反撃開始といった所で豪樹が言い放った言葉が『酒持って来いや!!』じゃ、誰もが困惑しちゃいますでしょう。だが一人を除いて。
「ホンマに、酒ありゃオケラに勝てるんやな?」
「オイ、マジで乗る気か杏美ィ!?」
大山組女将・大山杏美。兄のMr.Gから聞いた話によりますと、彼女もアメイジングで立海銃司との決闘の最中で一升瓶飲み干してたって話を聞いてました。※【GAME36-4】参照
「あぁ、保証したる。お前らが旧友であると同時にレミちゃんの大事な人やって分かった以上、ワイはどうしても守らないけんと思った。ワイの命に掛けても勝ちたい。やっちゃってもえーか!?」
「勝ったらその見返りはどーするんだぃ!?」
「酒にゃ酒で返したる。電撃爆酒なんざより値打ちある焼酎なんざどーよ?」
「焼酎は飲み飽きたよ! 男なら日本酒くらい貢ぐのが丁度えぇんちゃうか」
「わーった、日本酒にしたるから。やってえぇんか駄目なんか!?」
「旧友の拳が久々に見れるんなら、存分にやったりや!!」
女将にゲーム拳士、お互い呑兵衛な会話ってどうして喧嘩腰になるんだしょうね?
女将さんからの許可が降りた所で形勢逆転の場面作りと行こう……と思うのですが。シェイパー兄妹から異議あり。
「ちょっと待ってください! 酒蔵庫が滅茶苦茶にされて、一体何処に酒があるんですか?」
「そうですの! ワインケースとか冷蔵庫のお酒じゃ豪樹さんの……」
「いや、もういっちょ酒の倉庫があんねん。毎日の晩酌用に保管したヤツが」
大山女将がちょいちょいと指差す、屋敷の入口から入って東の居間。その居間の奥に地底の岩壁を利用して作られた酒の倉庫たるもの。日銀総裁でも関与してんのかと見まごう程の2メートル弱の巨大倉庫でありました!
「……なんでこんな偉大な金庫に金一封とか隠さないんですか」
「酒の構え方が酒販店並ですの」
シェイパー兄妹による冷静なツッコミはさておき、ダイヤル式・電子パスワード・指紋認証の三重ロックを解除させて開けるは巨大酒倉庫。缶から一升瓶、ピンキリ選り取り見取りな酒コレクションに、女将の手が差し出される。
「えーと、ブランデーなんてアイツ呑むタマちゃうやろし……」
「そこらの発泡酒でいんじゃね?」
「アイツ呑める癖して缶ビール呑まへんのや、贅沢な男やからな」
「あ、カップ酒あるじゃん。アタイ飲んでいい?」
「それアタイがこの前酔い潰れて残した奴やんか。間接キスしてまうぞ」
「いーじゃんか、もしかしたら味まろやかに―――」
「はよ酒持って来れへんか!!? ケーラス起きてまうで!!」
はい、ここで豪樹からの警告サインだ。茶番をさておいて適当に選んだ一升瓶、これが一般者を遮るVRフィールドのドームをすり抜け、中の豪樹に投げ渡す。
「豪樹ィ、酒やでぇ! 宜しお上がりやすゥゥゥ!!」
「さんきゅっ!」
こんな豪快な京言葉があったでしょうか? ぶん投げた一升瓶を右手でガッシリ掴んだ豪樹は、指の力だけで酒瓶のキャップを開け、一気に飲み干す。その味覚たるや……非常に甘かった!!
「ちょっ、杏美ぃ! 何やこの酒、ごっつ甘いやんか!!」
「米と米麹だけで造った『純米大吟醸』や。別に甘いの苦手やないからえぇやろ?」
米のデンプンが作用して、日本酒の中でも甘く飲みやすいとされている純米大吟醸。アルコール度数が強めの焼酎を好む豪樹に甘い酒は抵抗は無いが、それよりも群を抜く甘さには驚いた。
「だが日本酒ってのもあってか、のど越しが透き通ってんなぁ! こうなると濃い甘さも欲しくなってくるわ!」
酒だけでは流石に足りないか、酒を引き立てる“つまみ”も欲しくなってきたようだ豪樹!
「つまみったって……そこまで用意できひんよ。私あんまし料理せぇへんし」
「冷蔵庫覗いたらスルメイカしか無かったですよー。もぐもぐ」
「「テメ人のつまみを何パクっとんのじゃ!!!」」
あーあ、G兄さんってば二人に四の地固めされてやんの。悲鳴まで干からびてる。
「つまみ、甘いもの……あ、そうだ!!」
おっと、ここで何かを閃いたのはギャラリー内のシェイパー兄・サーブルズ。バックパックから取り出したのは、なんと地底空間探索用の非常食として豪樹に手渡されたチョコバーではないか!
「豪樹さん! これを受け取って下さい!!」
チョコバーをキャッチした豪樹、己の親切がこんな形で再び返ってきた事にニヤケ笑みが止まらない。
「コイツぁベストマッチなつまみや! 有り難く頂くでぇ!!」
袋をこじ開け、勢い良くボリボリとチョコバーを頬張る豪樹。硬く覆われたチョコとカリカリとしたピーナッツのハーモニー、更に深く噛みしめればヌガーキャラメルの濃厚な粘りと甘さ。
特にこのヌガーキャラメルが、純米大吟醸の透明な甘味を引き立てて、奇跡的なマッチを生み出した!!
「〜〜〜ッッしゃ、力湧いて来たァァァァ!!!」
甘味✕甘味という独特の食べ合わせが、窮地の豪樹に限界突破の回復力と、不思議な能力を与え給うた!
その力は如何なるものか、クリーンヒットされて暫くノックダウンしていたケーラスが丁度起き上がった所で、早速魅せて貰おう。
「クグっ……よくもやりやがったな、地上の分際があああッッ、これでも喰らえ!!」
ケーラス、復帰直後の爪から飛び散るサンダービーム! それを豪樹は強靭な両腕でガードの構えで受け止めた!!
「な、何ぃ!?」
ケーラス驚愕、サンダービームを諸に受けている豪樹にダメージが一切入っていない!! まるであのゴリラアームが絶縁体に変化したかのように、全く電撃を受け付けていません!
「テメェ俺がノビてる間に何をしやがった!」
「何って、チョコバーと純米大吟醸の日本酒を頂戴したまでや。どーやらチョコバーにゃ、耐電圧能力のバフが付いとったみたいやな」
「耐電圧!!?」
これはケーラス迂闊だった! サーブルズから手渡されたチョコバーには、地層にも似たチョコとキャラメルがぎっしりと詰まった性質から土の力を纏い、電気を寄せ付けない絶縁効果が付与されていた。これでケーラスの電気攻撃が一切効かなくなった!
「丁度酔いも効いてきたしな、ここらで決着付けたろか!!」
出ました決勝宣言、そして繰り出すはゲーム拳【酔仙遊拳】の構え! 酒気を帯びての酔拳はどのような威力を発揮するのか!? ケーラス戦、次回で締めと参りましょうか!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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