【GAME57-5】拳士と酒パワー・電撃のケーラス!!
――TIPS――
【ゲーム拳士と食の相乗効果①】
格闘ゲームを主流に活動するゲーム戦士『ゲーム拳士』は、ゲームワールドや現実で食する食材や料理の力で能力が反映される。
効果の反映は、能力強化・体力回復と一般的な効果に加え、特殊な料理や食べ合わせによって必殺技の習得を与える事もあるという。
――これぞ勝利への美酒なのか!?
大山組の秘密の貯蔵庫に入れていた【電撃爆酒】なる一升瓶の焼酎。
それを奈落道・オケラ拳使いのケーラスに奪われ、酒瓶の呑み口を無理やりかち割って、垂直に汚らしい口へと酒が運ばれてるではないか!
「ケラケラ……とうとう俺の力に宿ったぞ! 喉から電撃が迸るようなドカンとくるアルコール。五臓六腑に染み渡るわぁ〜〜!!」
電撃爆酒のアルコール度数は40度。酒の強さがケーラスの体内に刺激し血流が良くなった肉体は、ドーピングにも似た興奮作用で血沸き肉踊る!
――ビリビリッッ
おっと、これは気のせいだろうか? いや違う。ケーラスの体から電流が走り、オケラ特有の鋭利な両手の爪にも、電気による熱で帯びているではないか。
「それがゲーム拳士と食の相乗効果による能力の覚醒や。電撃爆酒は、飲めばアドレナリン作用を増幅させるだけやなく、その名の通り電撃の力を司る事も出来る。アホみたいな能力やが、それ飲みたさに血眼になるゲーム拳士も少なかないねん。ケーラスもその一人や」
美食家が至高の味を探すが如く、ゲーム拳士も己の強さに磨きを掛けるかのように、酒や食材を食って強さを得る。特に奈落道は、それを得るためなら手段を選ばぬ。例えそれが、デクルックスの指示された裏プレイヤーの総元締めの貯蔵庫にあった酒であっても!
「あんなガキの言う事をマトモに聞く奈落道と思ったか? 馬鹿な、元々電撃爆酒目当てでグーゼン利害一致しただけだ!」
「んで、B4層の繁華街も……」
「彼処の地底料理は我々奈落道の栄養補給場にさせる為だ。そいつはアスワムの役割で占領させる。何れは奈落道拳士の地底空間の道場を建設させる為にな」
サザンクロスの反逆粒子・デルタのデクルックスが仕掛けた奈落道。地に落ちたならず者が、そう安々と言う事聞くわけがない。
ケーラスとアスワムは、デクルックスの裏プレイヤー保管計画の協力を逆手に取り、自分の利益に、己の力を蓄える為に利用した。
それが今、ケーラスに電撃の力を得た事に繋がった。昆虫の力に電気という元素の力が加わったら、一体どうなるのか!?
「それを今ここで、教えてやるよ!!」
「――――ドォォオオッッ!!?」
オケラの力を宿したケーラスの鋭利な爪。それが電気で帯びて赤く熱せられた事により、その爪に一寸でも触れた豪樹は一瞬の感電、及び熱による苦痛のダメージが与えられた。
「痛っ……なんちゅー電圧や、酒飲んでこんな電気が蓄えられるとは……!」
これには百戦錬磨の高橋豪樹とて、迂闊に手出しは出来ません。電気も友情関係も絶縁出来ないグローブ装着の拳でヒットできるか!?
「シュッッッ」
おっと拳ではなかった。ケーラスの顔に、豪樹会心の烈脚廻し蹴り! 爪は通常の腕よりリーチが長いため、拳での攻撃は不利と睨んだ豪樹は脚攻撃に打って出た。筋肉で覆われたマッシブボディには似合わぬ瞬発力で、ケーラスの下顎にクリーンヒット。
「こんなん相手にするにゃ酔拳は不利やからな。ワイが“鉄拳”のPASを持ってるちゅーて、脚技が出来んと思うなよ」
とは、紫煙の格闘王の矜持である!
「ケラケラケラケラ……」
だがそれに嘲笑うケーラスは、これらを踏み躙る程の余裕有りと見た!!
「電撃爆酒で得た元素の力、ナメんなッッ!!」
バリバリバリバリッッッ!!
「ぬぅ?!!!」
なんとケーラスの両爪を、地面めがけて摩擦で擦ったかと思えば、突然飛び散る電撃の一射! それが豪樹の右脚に着電した!!
「テメェ、飛び道具なんざ使……グッ?!」
あっとどうした!? 追撃の脚技を繰り出そうと一歩手前に右脚を動かした瞬間、迸る強烈な痺れ! 先程の電撃で脚の神経を麻痺されたようだ!!
「これでゴリラの脚も使えまい……!!」
電熱で帯びたケーラスの爪で豪樹の首根っこを掴む。電圧の熱と絞め上げる苦痛に耐える彼だったが、その直後にケーラスが、豪樹が開けた上層への風穴目掛けて大いに振り投げる。
その勢いたるや、大山女将やシェイパー兄妹が見守るB3層へと穴から突き破る。そのままVRドームフィールドの天井に背中をもんどり打って、硬い地底の床に叩き落された。
VR空間によって表記されるHPゲージ、豪樹は既に50%を削がれた。
「あっ、豪樹さん!!」
「痛そぉ〜〜ですの」
「んなアホな! あの豪樹が三下オケラに打ちのめされたんか!?」
「多分、電撃爆酒を奴が飲んだんだろうな。さっきの豪樹の話を聞いてりゃ、合点がいくわな」
紫煙の格闘王・高橋豪樹が押されている展開に、一驚する者や冷静に戦況を分析する者。戦いを目の当たりにして感じるものは十人十色。
土の中がお似合いのオケラが、電撃の力を得たとはいえ、豪樹に一寸の勝ち筋が途絶えたとは誰も思ってはいない。
切り札は、意外なところからやってくる。それは場外でも例外ではない!
「待てよ、ケーラスが酒飲んで強くなったのなら……!」
「御兄様何をする気ですの?」
「このチョコを、豪樹さんに食べさせるんだ!」
シェイパー兄・サーブルズが手持ちのカバンから取り出したのは、お腹が空いたらチョコバー! それを満身創痍の豪樹に与えようという魂胆か、ゴリラの餌付けか!?
「動物園みたいな表現しないで下さい!」
「でも大丈夫ですの? チョコだけで逆転なんて……」
シェイパー兄妹、躊躇ってる暇はない! B4層の穴から這い上がったケーラスが豪樹に襲い来る!!
今度は虫けらを踏み躙るかの如く、足で膝つく豪樹の頭を踏みつけた!
「不味い!!」
「やられちゃうですの!!」
「紫煙の格闘王が墜ちたもんだな。これで散々俺ら地底もんを馬鹿にしてきた拳士に良い土産が出来る。――高橋豪樹の首は貰ったァァァァァ!!!!」
足で踏みつけながら、電気に帯びた爪で豪樹の首をちょん切ろうという、R−指定必須の展開が待ち構えていようとした―――――その時。
豪樹の瞑る眼、まぶたの裏に映る同胞の顔。桐山剣、河合みのりと連なるシャッフルオールスターズの面々。その中で大山・小原と縁がある畠田レミもシャッフルの仲間兼教え子の一人。彼女の為にもB3層の大山屋敷を守ると豪語した豪樹。
仲間との絆で結ばれたゲーム戦士。豪樹にも他よりも譲れない信念がある。
誰よりも強く、“豪”の字に相応しきゲーム拳士を目指す彼は、ある恩師からの言葉が、ノックアウト直前になって筋肉の鎧で覆われた脳裏にフラッシュバックした。
『己の力を何に使うか。そしてそれを如何に生かすか。躊躇うな、己が苦を超えて培った力を極限まで活かすのだ――――!』
高橋豪樹の恩師、その言葉がシナプスに信号を送るかの如く、全細胞へのアドレナリンと化す。ノックダウン寸前の豪樹を奮い立たせ、渾身に繰り出す昇龍の拳!!
「雄雄雄々々々々々々々ッッッ」
SMAAAAAASH!!!!!
和風から一変して外来語経由のスマッシュブレイク、下顎にクリーンヒットするスカイアッパー、豪樹・起死回生の一撃!! 紫煙の格闘王は終わらない!!!
「……お師匠様の言う通りや。出し惜しみしたって後悔しか残らへん。例え諸刃の拳であったとしても、ワイが強うなりとうて習得した技。ここで使わにゃ廃れて終わりやがな! ――――誰か、ワイに酒持って来いやあああああ!!」
なんと豪樹も酒オーダーだーーー!! 飲酒格ゲーなんて何処のトレンドにも乗ってない! 食と格闘が交互する“拳華成闘”インフレーション、豪樹も酒飲んだらどうなるのか? その答えは次の試合のお楽しみに。
――本日の試合はこれまで! マッチブレイクッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
小説を読んで『面白かったぁ!』と思った皆様、是非とも下の「ブックマーク追加」や感想・レビュー等を何卒お願い致します!
更には後書きと広告より下の評価ボタンでちょちょいと『★★★★★』の5つ星を付けて、作者やこの物語を盛り上げて下さいませ!
次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




